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彼女の名前は、イチゴ(小川紗良)。優しい親友たち(辻凪子、洪潤梨)に囲まれている、音楽科の大学生。
彼氏の名前は、ジン(萩原利久)。厄介な先輩たち(micci the mistake、藤田富)に手を焼く、服飾科の大学生。
二人は、ごく普通に恋に落ち、ごく普通に付き合い始めました。
でも、二人が違っていたのは……イチゴは魔女、ジンは狼男だったのです――。

2018年5月、シネマスコーレ(名古屋市中村区椿町)で初日舞台挨拶が行われた『ウィッチ・フウィッチ』(2018年/78分)は、そんなファンタジー・コメディ。
登壇したのは、「小さな魔女」こと酒井麻衣監督(『いいにおいのする映画』2015年/73分、『はらはらなのか。』2017年/100分)だ。

「今日は来ていただき、ありがとうございます。名古屋は結構来てるイメージがあるので、そんなに久しぶりって感じはしないですね」

スクリーン前に姿を現した酒井監督がそんな風に挨拶すると、客席から大きな拍手が起こった。
酒井監督は【ショートストーリーなごや】で『笑門来福』(2014年/30分)を撮ったこともあり、名古屋とは縁が深いのだ。

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MC. 『ウィッチ・フウィッチ』が作られた経緯を教えていただけますか?

酒井監督 去年の10月、西村(喜廣プロデューサー)さんから電話が掛かってきて……さぬき映画祭でご挨拶して一回飲んだことがある程度の面識でしたが「iPhoneで映画撮るんだ。興味ないか?」って。いきなりで吃驚したんですけど、「ケータイで撮る映画」シリーズ第1弾『ヘドローバ』(2017年/79分)の小林勇貴監督が推薦してくれたみたいで。小林監督とは、全然ジャンルが違うんですけど尊敬し合ってるんです。企画書を書いてみたら、「なかなか良いじゃん」っていうことになりまして。

MC. その後、準備も大変だったんじゃないですか?

酒井監督 そうですね……2月に完成させなきゃいけないし、予算も凄く厳しくて、「これは無理じゃないか」と思ったんですが、「どうやったら映画って撮れるんですか?」って相談してくる後輩に、「こういう風にやれば撮れるんだよ」っていうのを見せたかったのもあって。

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MC. キャスティングは、オーディションですか?

酒井監督 オーディションですが、『はらはらなのか』のすぐ後ですから、そのくらいの規模の映画だと思われると困るので(笑)……私のTwitter上で応募したんです。事務所さんへの声掛けも一応して。そうしたら、614人も集まってくれて。

MC. 決まったのはなんと、『イノセント15』(監督:甲斐博和/2016年/88分)のお二人ですよね。

酒井監督 『イノセント15』は知ってたんですけど、オーディションで「この2人で」って並んだ瞬間に「あれ、『イノセント15』だ」ってようやく気付くという感じでした。萩原利久さんは、イメージがピッタリだったんですが、(小川)紗良ちゃんは監督同士ということで元々知ってて……

MC. 小川さん、短編映画を結構撮ってますもんね。

酒井監督 イチゴちゃんとは真逆な凜としてる確りした女の子なので、オーディションの前は「紗良ちゃんじゃないだろうな」と思ってたんが、オーディションで凄く良かったんでお願いしたんです。そうやって、最後の最後2人の字面が並ぶまで、全然『イノセント15』のことは思ってなくて……二人も吃驚してました。ヤバいと思い、急いで監督の連絡先を教えてもらって、一報を入れました(笑)。

MC. でも、喜んでくれたんじゃないですか?

酒井監督 はい、喜んでくださいました。

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MC. それで、いよいよ撮影が始まるんですけど……これ、iPhoneで撮ってるんですよね?

酒井監督 はい、iPhoneで撮ってます。

MC. 撮影期間は?

酒井監督 一週間くらいだったと思います。

MC. 正直、どうでした?

酒井監督 撮影監督の伊集(守忠)さんがカメラを握ってらっしゃったので、詳しいことは私も分かってないんです。でも、言いたいのは、iPhoneでこれだけ撮れるってことです。「カメラ買わなきゃな」とか、「カメラの使い方わかんないな」とか思ってる学生さん、自主制作映画を撮ってみようと思ってる方、もう(iPhoneで)充分いけると思います。

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MC. 次回作は、どうですか?

酒井監督 映画も企画中なんですけど……今、とあるドキュメンタリーとテレビドラマをやってるんです。ファンタジー映画とは全然違うことをやっているので、楽しみに観ていただければ。

MC. 最後に一言お願いします。

酒井監督 「好き」という言葉を伝えることは凄く強い行為だと思います。もし好きな人がいるんだったら、恥ずかしがらずにちゃんと「好き」って伝えてあげてください。それが、この映画に込めた思いです。イチゴちゃんの「好き」は……ちょっと狂気じみてますが(笑)。

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酒井麻衣監督お得意の、ちょっとダークでファンタジックな、日常と非日常が溶けあう「マジック・アワーなラブ・ストーリー」。
だが、『ウィッチ・フウィッチ』は、ごく普通のファンタジー、ごく普通のラブ・ストーリーとは、ちょっと違う。
小川紗良演じるイチゴと、萩原利久演じるジンの、心象を、行動を通して、「人を好きになることとは?」という問いに対して、小細工なしの真っ直ぐな回答が明解に示される。
これは、恋愛劇の到達点と言って良い。

今後も益々上映の場を広げる『ウィッチ・フウィッチ』を、お観逃しなきよう。
そして、益々活躍の場を広げる酒井麻衣監督から、目を離さないでほしい――。

映画『ウィッチ・フウィッチ』公式サイト