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ミッドランドスクエアシネマ2(名古屋市中村区名駅)で2018年5月26日(土)行われた、『海を駆ける』初日舞台挨拶レポートの、第2弾をお伝えする。
ただし、こちらはネタバレに関わる発言のため、取り扱いを厳重注意したいコメントだけを集めたレポートだ。

結末に触れているし、作品を鑑賞しただけでは辿り着けない解釈にも言及しているので、くれぐれも鑑賞前にはお読みにならぬよう。
くれぐれも、くれぐれも警告させていただく。

映画『海を駆ける』本編をご覧になっていない方は、こちらの記事への退避をお薦めする。
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それでは、念の為に多めの改行を挟ませていただいた後、深田晃司監督とディーン・フジオカの発言レポートとなる。
いきなりネタバレが飛び出すので、スクロールは自己責任でお願いする。






























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ディーン・フジオカ 脚本を見た時、最後『海を駆ける』というタイトル通りの終わり方で……あそこは、最初に頂いた脚本から全く変わらなかったですね。凄く清々しい画が見えて、自分の中で考えさせられる風景が見えたと言いますか……この映画って、良い意味でですけど、あんまりフレンドリーじゃないじゃないですか。ストーリーも、ヒーローが悪役を懲らしめる!みたいな映画じゃないですよね。でも、不思議な世界に入っていく一つの触媒になるような、この作品を通して人生観や死生観が変わるような……自分も含めて、深田監督の「深田ワールド」に刺激されて、新しい気付きや新しい会話が生まれる作品になるんじゃないかと思いました。

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MC. あのシーンは、どうやって撮ったんですか?(映画コメンテーター 松岡ひとみ)

深田晃司監督 よくぞ聞いてくれました(笑)。ネタバレにあたることなんで、言いたいけど中々言えないことなんですよね。脚本から書いてる時から「このシーンを撮れるかどうかが作品の肝だ」って皆なっていて、スタッフは頭を悩ませていたんです。最初の案は、ブルーバックで合成で撮ろうかと。でも、あんな距離を走れるスタジオは無いから、ルームランナーで走ってそれを合成しようって話になったんですよ。私と助監督とカメラマンの芦澤明子さんでスポーツセンターに行って、助監督に走ってもらったんです。普通にインストラクターに「健康になりに来ました」みたいなことを言いながら。こっそり撮影をしたら、全然無理だってことになりまして(笑)。全然リアルな走りの形にならなくて、それは諦めたんです。結局、海面に力技で40mの桟橋を作ったんです。ちょうど潮が満ちてきて少し隠れるくらいになってきたら、撮って……30分くらいしかないんですよ。あまりにも満ちすぎると、走れないので。

MC. ディーンさんも走ったんですね?

フジオカ 走りました、インド洋を。気持ちよかったですよ。毎回走りきった後に、回転して後ろから落ちなきゃいけなかったんで、水が鼻とか耳に入ってきて……耳鼻科でチェックするようなところがすっかり綺麗になって、日本に帰ってきました(笑)。

深田監督 そう、塩水でね(笑)。インド洋、綺麗でしたよ……本当に、底が見えますからね。

MC. ラウというキャラクターを作り上げるのに、話し合いを重ねられたんじゃないですか?

フジオカ 大分「不思議ちゃん」だなと思ってたんですよ、最初に脚本読んだ時に。「これは人間なのか、何なのか?」っていうことを、監督に聞きましたよね?

深田監督 「風の又三郎」って答えたんでしたっけ?河童と言ったかもしれないですね。でも、これは皆さん、自由ですよ。監督が言うことを正解だと思わないでくださいね。監督も作品の比較的近くにいる他人だと、自分では思ってますので。ラウは自然が服を着てたまたま人間の形をして散歩しに来ただけ存在のようなイメージだと、ディーンさんには説明したんじゃないかと思います。

フジオカ そうでした。ちょっと植物的なイメージもある感じですよね。

深田監督 いつも何となく傍にいるんだけど、人間関系にコミットすることもしないというか……

フジオカ 「マリオ(ブラザーズ)」か何かに、そういうキャラいましたよね?観葉植物みたいな形をしてるんだけど……

(客席から) パックンフラワー?

フジオカ パックンフラワー!でも、あれ肉食か……

深田監督 触ったら死んじゃいますからね。あ……でも、死んじゃうから良いのか?

フジオカ (大笑)……新たな解釈が(笑)!ラウって面白いのが、海から出てきて海へ帰っていくまでが作品だと描かれてるじゃないですか。その一部分だけを切り取ると……例えば鶴田(真由)さん演じる貴子とのシーンの前後5分間だけ見ると、めっちゃ邪悪な奴の印象になると思うんですよ。でも、サチコ(阿部純子)とのシーンでは、「めっちゃええ奴やん」みたいな感じですし。全体通して見ると、別に正義とか悪とか、良いとか悪いとか、そういう概念、感情がそもそも無い、モラルとかを超越した「宇宙の真理」みたいな……

深田監督 そういう目的とか善悪っていうのは、基本的には人間社会が、人間社会を滞りなく進めていくために作り出した概念なので。そういったものとは無縁で、そこにいて、気まぐれに色んなことをしていく存在……そんな風になれば良いと思ってました。

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以上、如何だったであろう。

レポート①と話は重複するが、『海を駆ける』の感想を呟く時は、是非とも「#海を駆けてきた」を付けるのをお忘れなく。
あなたの感想はラウの「神性」の一部になり、あなたの呟きによって『海を駆ける』は完成されるはずなのだから――。

映画『海を駆ける』

出演:ディーン・フジオカ、太賀、阿部純子、アディパティ・ドルケン、セカール・サリ、鶴田真由
脚本・監督:深田晃司
配給:日活 東京テアトル

2018/日本・フランス・インドネシア/107分


2018年5月26日(土)より ミッドランドスクエアシネマほか公開中