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23歳という若さで『ウルトラマンX』を、そして『ウルトラマンオーブ』やアニメ『ゲーマーズ!』の脚本を担当した内田裕基は、4/2『ぼくの初恋は透明になって消えた。』を上梓し小説家デビューした。

内田裕基

だが、そもそも彼は自主映画で数々の監督作品を撮っている映像作家なのだ。

5/12(土)、シアターカフェ(名古屋市中区大須)にて、映画監督・内田裕基の特集上映が組まれ、内田監督が来名、登壇し、舞台挨拶を行った。

題して、
【小説家デビュー記念 内田裕基監督作品特集上映】

『好き。』
(2013年/10分)
出演:小池ありさ、笠原時生
解説:高校の屋上でギターを弾くのが日課の少年は、ある日教室の窓際の席に一人座っている少女に気付く。数年後、教師になった少年が見たものは……。
・東京工芸大学制作のオムニバス映画『シフガフ』の一篇として新宿バルト9ほか全国上映

内田裕基監督 僕の通っていた東京工芸大学の先生たちが一つのテーマを使ってオムニバス映画を撮るという企画があって、1本だけ生徒に撮らせようと選ばれたのが、たまたま僕だったんです。予算を頂き撮ったんですが、予算は1万円だったという(笑)。テーマは凄く難しいものだったので、敢えて『好き。』というタイトルの一言だけで成立するような作品にしてみたんです。屋上のシーンは、「ドリー」という機材をテスト的に使ってみて、どんな感じに映画が作れるのかを試してみたシーンです。凄く長いシーンなんですが、一日掛けて、38テイクくらい撮ったんです……実際使ったのは、10何テイク目くらいのだったんですが(笑)。

『一滴のスパイス』
(2013年/6分)
出演:毛利悟巳、朝妻徹
解説:本の匂いを愛している図書委員の少年は、書籍の整理中にスパイスのような香りを放つ栞を見付ける。誰が本に挿んだのかが気になり、少年はいつか返そうと栞を手元に置いているのだが……。
・第3回インディーズ映画祭inちっご上映
・第6回よなご映像フェスティバル上映
・第2回MKE映画祭上映

内田監督 『好き。』と同じように「パンサードリー」というクレーンみたいな上下する機材を試したくて、女の子が歩いてきて本を差し込むシーンで使ってみました。匂い付きの栞が出てくるんですが、あれは僕が古本屋で買った本で実際に経験したことだったんです。その頃は大学生くらいでしたが、凄く「大人な匂い」だと感じました。

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『オセロ』
(2018年/4分)
出演:若杉凩、三品優里子、山上暁之進
解説:文化祭のコスプレ喫茶の為に、さくら(男子)に女装を施す、着ぐるみ姿のたまき(女子)、交代を頼むために呼びに来る、ゾンビメイクのやまと(男子)。文化祭、恋心が静かにスパークする……。

内田監督 一番新しくて、今年撮ったばかりの作品です。僕は『オールドフレンド』を撮った後、脚本家として活動し始めることになりまして、今もアニメーションだったり色々とやっています。そんな作品は、完全に自分がゼロから発信するオリジナルの企画ではないので、オリジナルの仕事をやりたいのならインディーズでやるしかないかと……自分の「作家性」が分からないまま進んでいってしまう感じがしまして。社会人になってからだと学生時代のスタッフがもう一度結集するのは難しいんですが、たまたま東京工芸大学に僕の作品を観て大学に入ってきた子がいて、「また撮るんだったら、僕を是非カメラマンで使ってください」と言ってくれて……「じゃあ、今から撮る」、と(笑)。久々に撮った短編だったので、やっぱり学生の時と違ってあんまりスタッフに無茶をさせられない、逆に年下だから気を遣う……そんな感じで、もうちょっと突き詰められたんじゃないかという反省もあるんですけど(苦笑)。でも、普段自分がやってることと違って、完全に自分がゼロベースから完成まで関われたので、割りと気に入ってる作品です。

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『オールドフレンド』
(2014年/68分)
出演:椎名琴音、秋月三佳、小池ありさ、毛利悟巳、島崎義久 ほか
解説:虐められっ子ひなこ(椎名琴音)、その親友みかこ(秋月三佳)、虐めっ子ゆずき(毛利悟巳)、転校生ひなこ(小池ありさ)。四人の少女が織りなす「友達」をテーマにした物語。
・第26回東京学生映画祭・入選上映
・カナザワ映画祭2014 期待の新人プログラム上映

内田監督 様々な短編を経て撮ったのが、卒業制作の『オールドフレンド』でした。「今までの大学生活の集大成を作ろう!」と気合いを入れて撮った映画です。短編だと1日くらいで撮影が終わっちゃうんですけど、長編ですから凄く時間が掛かって……それを切っ掛けに「俺、監督に向いてないな」と思うようになったという(笑)。僕は「映画甲子園」のコンペの出身なんですが、まだ中学生くらいだった小池ありさちゃんとはその頃からずっと一緒にやってるんで、凄くやりやすいんです。『オールドフレンド』の時も、完全にスパルタみたいな感じでやってましたね(笑)。

Q. ひなこ(椎名琴音)の自宅の壁、穴が開いてましたけど?

内田監督 あれ、後輩の家なんです。ロケハンした時、壁に小っちゃい頃クレヨンで描いたお父さんの絵みたいなのが4枚くらい貼ってあって……怖かったんですよ(笑)。何か怪しいなと思ってペラッとめくったら、穴が開いてまして……それを隠すために貼ってあったんですね。「なんで開けたの?」って聞いたら、「お父さんが酔っ払って開けたんだ」って(笑)。「あれ、よく美術でやったね」って言われることが多いんですが、そういうことなんです。

MC. 『オールドフレンド』は、このジャンルを好きな子がいっぱい来てくれると思ったんですけど……ネタバレになるから、チラシに何も書けなかったんですよ(笑)。(シアターカフェ代表 江尻真奈美)

内田監督 ジャンルを交ぜる作り方って、凄く好きなんですよ。それがネタになっちゃうと言えないんですけどね。小説も、そんな感じだったりします(笑)。

Q. それは、監督の特撮好きから来てるんでしょうか?

内田監督 ……人間が、そんな好きじゃないのかも知れないですね(場内笑)。

Q. カメラワークに、凄く拘りを感じました。

内田監督 僕はウルトラマンが好きですが、巨匠といわれる方たちの構図の取り方が凄く好きなんです。映像作品も、画に拘ってる作品の方が好きです。脚本家なんですけど、脚本が良い映画ってそんなに好きじゃないんです(笑)。現場の、映像でしか出来ないカット割りだとか、そういうものをやりたくて。『好き。』だったら、長回しのカット。『オールドフレンド』のトイレのシーンなんかは、1カットで2人の世界を表現したくて撮ったものです。『一滴のスパイス』だと、「数日後」の表現であったり。カメラを置いてそこで芝居をしているだけの映画も勿論いいですけど、脚本じゃ表せないことをやりたいのかも知れないですね。

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内田裕基監督作品の特集上映は、東京でも開催されるという。
出演者のゲスト登壇も企画されているようなので、今後の情報に要注目だ!

公式サイト『脚本家・内田裕基のまとめ』

シアターカフェ公式サイト