約2年半ぶりとなった日本でのライブが大盛況、追加公演も大好評で、日産スタジアムでのツアーファイナル(6/8(金)~)が待ち遠しい【東方神起 LIVE TOUR 2017 ~Begin Again~】。
海外アーティストとしては異例である3回目の全国5大ドームツアー、1月12日~14日はナゴヤドーム公演が開催されたため、名古屋のビギストたちは熱気が冷める間もない。

2017年、NHK紅白歌合戦に初出場した「TWICE」。
“TTポーズ”は大晦日のお茶の間を席捲し、勢いは今も止まらない。

2月9日から開催される平昌冬季オリンピックの影響という訳でもないだろうが、近頃K-POPが元気だ。

映画界に目を移してみても、ロングランヒットとなった“泣けるゾンビ映画”『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2016年/118分)。
『新感染 ファイナル・エクスプレス』と同じくヨン・サンホ監督作品で、独特な世界観が強い中毒性を生むアニメーション作品『我は神なり』(2013年/101分)。
また、ペ・ヨンジュン主演の『スキャンダル』(監督:イ・ジェヨン/2003年/124分)デジタルリマスター版がリバイバル上映され、新たなファンを獲得している。

日本映画を見ても、『あゝ、荒野』(監督:岸善幸/2017年/前篇:157分・後篇:147分)でヤン・イクチュンが演じた「バリカン健二」というキャラクターは、今も強烈な印象を放っている。
また、入江悠監督のヒット作『22年目の告白 私が殺人犯です』(2017年/117分)は、『殺人の告白』(監督:チョン・ビョンギル/2012年/119分)が原作だ。

韓流は、ずっと元気なのだ。

※よろしければ、こちらもどうぞ※

今回は、この時期にピッタリの韓国映画『ラブ・コントロール 恋すると死んでしまう彼女ボンスン』(監督:クォン・スンウク/2016年/135分)を紹介する。

『ラブ・コントロール 恋すると死んでしまう彼女ボンスン』ストーリー

IT企業で働くジュソン(キュヒョン)は、親友のジェボム常務(チ・イルジュ)の信頼も厚い優秀なシステムエンジニアで、AIの開発を担当するチームのリーダーを務めている。ジュソンのチームは人間と同じ感情を持つ次世代型人工知能のプログラムの完成を急いでいるのだが、新人ボンスン(ユン・ソヒ)のせいで研究は行き詰っている。恋愛感情を機械に覚え込ませるという無理難題に、恋愛経験のないボンスンは不向きなのだ。だが、ボンスンのことが何かと気になるジュソンは、彼女をメンバーから外そうとはしなかった。
ジュソンには、若年性アルツハイマーを患っているという大きな秘密があった。プロジェクトの進捗に影響が出るため、医者に処方された薬の服用をついつい躊躇っているうち、症状はジュソン自身が自覚できるほど進行している。病のことがあって想いを告げられないジュソンだったが、溢れる感情に抗うことは出来ず、ひょんなタイミングを切っ掛けにボンスンと付き合い始めることになる。だが、ある日ジュソンは思い出してしまう……恋愛ベタなボンスンとは、実はジュソンが過去にジェボムと共に作ったサイボーグだということに――。

コメディから、シリアスへ

開始早々、違和感を感じる視聴者は多いかもしれない。
コメディタッチで始まる物語であるが、開発チームのメンバー同士の掛け合いなど、役者の演技にせよSE(効果音)にせよ、とにかく大袈裟なのだ。
ただし、演出過多かといえばそれほどでもない。
恐らくは、じきに慣れるだろう。

この演出、実は理由がある。
『ラブ・コントロール』は、もともとは韓国で配信された全12話のWEBドラマを劇場公開した作品なのだ。
総尺が135分だから、12話で割れば11分半となるので、約10分に一回は何らかの盛り上がりを用意してあることになる。
だが、だからと言ってクオリティが低いかと言えば、さにあらず。
例えば、週刊誌で連載された漫画を単行本で一気読みすると、面白くないだろうか?
「面白くない」と答えるのは、むしろ少数派であろう。

監督は、クォン・スンウク。
数多くのミュージックビデオやCMを演出した映像作家だ。ちなみに、歌手のBoAは実妹だそう。
大ヒットドラマ『スタイル』(2009年)を手掛けた脚本家ムン・ジヨンの緻密なシナリオ(キム・ヒャンジ(新人)との共同脚本)を見事に映像化したのは、特筆すべき手腕である。
彼の演出がなければ、劇場鑑賞したいという声は挙がらなかったかもしれない。

緻密なのは、物語の設定にも表れている。
自動人形(オートマータ)に恋をする物語は、荒唐無稽にも見えるが、神話の時代からピグマリオン王の逸話があり、バレエには『コッペリア』、オペラには『ホフマン物語』と有名な作品が並ぶ。
映画やノベルは言わずもがな、漫画、ゲームなどサブカルチャーも含めれば、数えるのさえ不可能なほど超メジャーなモチーフと言える。
要は、使い古された素材なのだ。

だが、『ラブ・コントロール』がありきたりでなかったのは、主人公が“博士=創造主”ではなく“SE=プログラマー”である点だ。
作ったのはジュソンではあるものの、ボンスンは自分の所有物ではない=自由にならない……この設定が、実に巧みである。
コメディタッチで始まった物語は、次第にシリアスなラブストーリーとなり、観る者を痺れさせるのだ。

また、ボンスンを「アンドロイド」じゃなく「サイボーグ」としたことにも注目したい。
アンドロイドは人型ロボット、100%機械である。ところが、サイボーグの定義は生体と機械の混合体である。
すなわち、実はボンスン、元々は生身の人間だったとも考えられるのだ。

若くして命を落とした、ジュソン(もしくは、ジェボム)の初恋の人のDNAが素体の核として使われてる
……そんな妄想も許される設定で、ティーンだけでなく大人の鑑賞にも耐えうる骨太の世界観を有していると言える。
そういえば、ボンスンの管理OSのインターフェイスは、何故かDNAの螺旋がデザインされていた……おっと、妄想は、そこそこにしておこう。

多彩なキャスト陣と、キュヒョンの魅力

コメディタッチでありながら、シリアスなロマンスでもある、『ラブ・コントロール』。
難しい役、癖のある役が多く、キャスト陣は役作りの苦労も多かったことは想像に難くない。

ヒロイン・ボンスンは、所謂“恋知り初めし乙女”。
恋愛経験ゼロで天真爛漫、しかも、正体はサイボーグ。
とは言え、機械とは思えない温かさ、可憐さを併せもつ。
そんな難役中の難役に挑んだのは、ユン・ソヒ。
『チャンス商会 初恋を探して』(監督:カン・ジェギュ/2015年/111分)にも出演した、若手の実力派だ。
フレッシュなボンスンの弾ける魅力を、お観逃しなく。

主人公の親友にして、時には悪役(?)。
ジュソンの元生徒だが、今では会社の上役というトリッキーな役どころに挑戦したのは、『ゴールデンタイム』(2012年)のユ・ガンジン役などドラマで活躍する、個性派俳優ユ・イルジュ。
冷たい笑顔の奥に、時折のぞく温かな眼差し……トリックスターっぷりに、こ注目を。

ボンスンのライバル(?)・ソヒ役には、元ミス・コリアのキム・ユミ。
ジュソンの元カノでバリバリのキャリア系リケジョという役どころだが、キム・ユミが演じると不思議に嫌味のないキャラになる。

そんな一癖も二癖もあるキャスト陣を向こうに回すのは、『ラブ・コントロール』がドラマ初主演のキュヒョン。
「SUPER JUNIOR」ファンには説明不要の“バラードの貴公子”は、その歌唱力を買われミュージカルの経験もある。
ただ、表現力にも定評のあるギュ様とは言え、如何せん演技の実力は未知数だ。
実際、物語の冒頭で、特に台詞回しに硬さが目立った。

しかし、時間が経つに連れ、印象は180度変わることになる。
抱えてる病気が明らかとなり、病状に、職務に、そして恋に悩むジュソンの胸のうちが徐々に語られていくと、冒頭の硬い演技が若年性アルツハイマーに翻弄される彼自身の心象を投影したものだということが分かる。
中盤のボンスンとのデートの場面では、等身大の青年を伸びやかに再現し、終盤ともなると悲劇役者さながらの堂に入った表現力を見せる……いや、魅せる。
クォン・スンウク監督の確かなディレクションと、キュヒョンの演技プランが、見事にスパークする瞬間を、観る物は目撃する。

ラブストーリーで一番の難点は、登場人物と観衆との感情の乖離である。
恋愛とは万人が共感でき得るテーマではあるが、その主観的な本質によって万人から背を向けられる可能性もある、危険な両刃の剣だ。
だが、『ラブ・コントロール』は違う。
“ギュ様”を見ていたはずの観客は、いつの間にかキュヒョンの表現する“ジュソン”に恋することになる。
そして、ジュソンが夢中になるボンスンを応援することになるのだ。

『ラブ・コントロール』は、擬似恋愛から一歩進んだ、“俯瞰で観られるラブストーリー”である。
観る人によって如何様にも解釈できるラストシーンと相俟って、アイドル映画の一つの到達点と言える。

キュヒョンの笑顔を見ていると、ため息をつくエルプの様子も同時に浮かんでくる。
キュヒョンは兵役の真っ最中なので、ファンはきっと入隊最後のソロシングルを聴きながら、ギュ様の帰りを待ちわびていることだろう。

この記事を書いたのは、何年かに一度のブルームーンが見られる日だった。
“青い光”を一目見ようと窓を開けてみると……
奇遇にも、こちらも数年に一度の皆既月食の時間に当たった。

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青い月はどんどん光を失い、中空に浮かぶのは泣き腫らしたような赤い月となった。

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今の時期、見るには相応しい月なのかもしれない。
私たちは、主役のいない記念日を迎えようとしているのだから。
2月3日は、キュヒョンの誕生日だ。

Happy Birthday , Kyuhyun.
한 번 더 그려본 다시 만나는 날

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