尾張名古屋 秋の風物詩【やっとかめ文化祭】が、2017年も開催されています。
「時をめぐり、文化を旅する、まちの祭典。」と銘打たれた名古屋の街を挙げての文化事業は、辻狂言などのストリート・パフォーマンス【芸どころまちなか披露】、古今を越えた芸能の特別興行が打たれる【芸どころ名古屋舞台】、歩み慣れた街道や見知った建物の歴史に触れる【まち歩きなごや】など、10月28日(土)~11月19日(日)の期間中、様々な企画が街の至る所で開催されています。
11月3日(金)、文化の日なので……という訳でもないのですが、【まちなか寺子屋】の中の『名君 上杉鷹山を育てた名教師 ~細井平洲の人づくり~』を聴講しました。
会場は、愛知県立明和高等学校(名古屋市東区白壁)の視聴覚室で、定員30名の講座は満員の盛況ぶりでした。
東海市教育委員会、社会教育課の宮澤浩司氏の講義の中心となったのは、細井平洲(ほそい へいしゅう)という儒学者、教育者です。
教育者・細井平洲と、藩校・明倫堂
細井平洲先生は、享保13(1728)年、尾張藩知多郡平島村(現:東海市荒尾町)に生まれ、24歳で江戸へ出て「嚶鳴館(おうめいかん)」開塾。辻講釈が大変な評判を呼び、徐々に門下生を増やしていきます。
嚶鳴館時代、上杉治憲(はるのり)が平洲先生に師事、後の出羽米沢藩第9代藩主・上杉鷹山で、かのジョン・F・ケネディに「もっとも尊敬する日本人」と言わしめた江戸時代屈指の名君です。平洲先生と鷹山公の師弟関係は、生涯に亘って続いたとか。
また、嚶鳴館時代には平洲先生の人生の転機となった、もう一つの邂逅がありました。参勤交代で江戸を住まいとしていた、尾張藩第9代藩主で「中興の名君」と名高い徳川宗睦(むねちか)との出会いです。この師弟関係が契機となり、平洲先生は53歳の時、尾張藩主お抱えの学者として碌を賜ることになったのです。
尾張藩に赴任した平洲先生は、
・明倫堂(藩校)竣工
・廻村講話の実施
・群書治要の作成
と多岐に渡り、明倫堂では集まった聴衆が門から道路を塞ぐ事態となり、廻村講話では一日に1,500人以上の農民、町人、医師・祈祷師、婦女子が聴講、講話を聞いた者は合計で16万人にも及んだとの記録が残っているそう。
上杉鷹山に贈った言葉
「勇なるかな、勇なるかな、勇にあらずして何をもっておこなわんや(勇気だよ、勇気だよ、勇気が無いと何が出来るんだい)」
は、鷹山公の名言
「為せば成る為さねば成らぬ何事も成さぬは人の為さぬなるけり」
を引き出したといっても過言ではありません。
後年、平洲先生の弟子たちが編纂した『嚶鳴館遺草』は、吉田松陰、西郷隆盛、二宮尊徳、福沢諭吉、内村鑑三などに多大なる影響を与えたといいます。
これほどの人物が、何故現在では無名に近いのか。それは、ひとえに平洲先生の生き様だといえましょう。
細井平洲は、折衷派という実践的な学派を極めた、優秀な儒学者でした。ですが、平洲先生はそれ以上に極めて優秀な教育者だったのです。自らはほとんど学問書を著さず、体系も遺していないため、名を残していないのです。
そんな教育者としての生涯は、享和元(1801)年に没するまで続いたそうです。
「虎は死して皮を留め、人は死して名を残す」といいます。
しかし、平洲先生のように名すら留めず、実を残す生き方もあるのです。
細井平洲先生の功績、生き様は、私たちがしっかりと語り継がねばいきますまい。
そんな平洲先生の功績に直接的に触れることができるものが、実は名古屋にあります。
今回の講義の会場となった明和高校、実は平洲先生が督学(校長)を務めた藩校・明倫堂が形を変え、現在に受け継いだ教育施設なのです。
明和高校と、七尾天神社
明和高校の所在地は閑静な住宅地ですが、生活道路を一本挟んだ近所に、学問の神様が鎮座しています。
それが、名古屋市東区白壁2丁目にある七尾天神社(しちおてんじんしゃ)です。
天神様(菅原道真公)をお祀りする御社で、亀尾天満宮、亀乗天神、七尾天神、七尾天満などの通称があります。


名は体を表す、とは良く言ったもので、七つの尾を持った亀が菅公の木像を運んできたという伝説が社名の由来となっているそうです。
文亀年中というから1501~04年の出来事だそうで、続く永正年中(1504~21年)には社殿が完成したというので、歴史は明和高校を上回ります。
また、元和年間(1615~24年)には、尾張藩初代藩主・徳川義直が拝殿を建設しています。
こちらの霊亀像の背に七度水を掛けると、学業、諸願成就すると言い伝えられています。
水をお掛けする際は、霊亀の背中に住所、氏名、願い事を書いた「願い紙」を乗せるのが作法とか。
学問の神様に相応しく、拝殿前には、狛犬だけでなく左右一対の臥牛(ねうし)が鎮座しています。


天神社にはお馴染の、筆塚。

菅原道真公の御使い「うそ鳥」は、社務所で授与してもらえます。
中に、“レア色”があるとか…?

御朱印もいただけます。
こちらも社務所で、禰宜さまのいらっしゃる時間にお願いしてください。





七尾天神社
〒461-0011
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