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『百円の恋』(2014年/113分)で日本映画界に大いなる衝撃をもたらした、武正晴監督の待望の最新作が間もなく公開となります。
瑛太(『64 ロクヨン』『まほろ駅前多田便利軒』)、佐藤江梨子(『ナイトピープル』『口裂け女』)のW主演で送る、人情喜劇『リングサイド・ストーリー』です。

『リングサイド・ストーリー』は、武監督が『百円の恋』でコンビを組んだ盟友、脚本家(『お盆の弟』『モンゴル野球青春記』)で映画監督(『14の夜』)の足立紳監督の実話をヒントに作られたオリジナル・ストーリーなのだとか。

足立監督の著作『乳房に蚊』はフィクションですが、パートナーをプロレス団体で働かせる主人公の心情が赤裸々に綴られています。
「たまたま見つけたプロレス団体営業職募集の記事を見せて、是非ここで働いてみたらどうかと、プロレスがいかに面白いか、素晴らしいかを熱弁しながら持ち掛けたのだ。」
(足立紳『乳房に蚊』2016年(幻冬舎)より)
これは……まぎれもなく、ヒデオ(瑛太)の心境では――。

足立監督は『リングサイド・ストーリー』にもカメオ出演されているので、どうぞお見逃しなく。出演シーンは、作品タイトルがヒントになると思います。

今作は、スポーツ全般に造詣の深い武監督が手掛けた映画です。
しかも、プロレス団体【WRESTLE-1】、格闘技団体【K-1】の全面協力の元で撮られた作品なので、試合中、練習中に限らず格闘技愛の詰まった映画に仕上がっています。
武監督がプロレス好きなのは、有薗芳記演じるレフェリーが気絶する場面一つ取っても良ーーく分かります。

そんなプロレス愛、K-1愛に溢れた『リングサイド・ストーリー』ですので、作中でも言及されるプロレスのタイトルマッチになぞってストーリーを追ってみたいと思います。
試合は、「10.9(じゅってんきゅう)」のメインイベント……そう、東京ドームで1995年10月9日に行われたIWGPヘビー級選手権(60分1本勝負)、武藤敬司(新日本プロレス)vs高田延彦(UWFインターナショナル)戦です!

※以下、一部の言及に、物語の核心に触れる表現があります。
 直接的なネタバレではありませんが、気にされる方はご注意ください※

開始のゴング

試合開始……地味なグラウンドながら、武藤がフィギュア・フォー・レッグロックを、高田がヒール・ホールドを狙うという、後の展開を大いに予感させる幕開け

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物語は、まずは丁寧に登場人物たちの人となりが描かれます。
売れない役者・村上ヒデオ(瑛太)は、オーディションにも引っかからず3ヶ月も仕事のない生活を送っています。かつて大河ドラマで一流俳優と共演したことを心の支えにしてるものの、実態はヒモ同然です。
そんなヒデオの同棲相手・江ノ島カナコ(佐藤江梨子)は、お人好しのアラサー女子。仕出し弁当の工場を突然解雇され、母・恭子(余貴美子)の美容院を訪れます。カナコは嫌なことがあると、お母さんの餃子が食べたくなるのです。

序盤の展開

5分経過……徐々にスタンディングの展開に。武藤が左回し蹴りからのローリング・ソバットで、高田がキックのコンビネーションで、それぞれダウンを奪う

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10分を過ぎた辺りから、物語は徐々に動きはじめます。
次の仕事を血眼で探すカナコが読むタウン誌からヒデオが見付けたのは、武藤敬司が率いるプロレス団体「WRESTLE-1(レッスルワン)」の求人広告。プロレスに全く興味のないカナコでしたが、ヒデオの迷惑なアシストにより、見事採用となります。
しかし、これが働いてみると意外に肌に合う仕事で、敦賀部長(有薗芳記)、杉田専務(田中要次)、そして武藤社長(武藤敬司)など、職場の同僚?たちともすぐに打ち解けます。パッヘルベルの「カノン」をBGMに組み上がるリングは、劇中屈指の名シーンです。
ヒデオはというと、これがもう見事なクズっぷり。マネージャー百木(近藤芳正)にギャラの前借りを頼み、ようやく取ってきた映画の準主役の仕事も監督の好みですっぽかしてしまうのです。(俳優・ヒデオが喜んでオファーを受けるであろう大物監督が、友情出演されています!)

急展開!

8分経過……高田のミドルキックを武藤がキャッチ、再びグラウンドの攻防へ。高田の裏アキレス腱固めが決まり、武藤は辛くもロープブレイク

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45分過ぎ、物語は急展開!
仕事にのめり込むカナコの様子を邪推したヒデオは、レスラーとの浮気を疑います。看板レスラーの梅宮健太(黒潮“イケメン”二郎)が怪しいと決めつけたヒデオは、あろうことか試合最中の梅宮選手に妨害行為を働いてしまうのです。
責任を感じたカナコは、レッスルワンを退職。職場の皆は、別れを惜しみます。特に梅宮は、兄弟の伝(つて)でカナコに再就職先を紹介してくれます。
その再就職先とは、なんと……世界屈指の立ち技系格闘団体【K-1 WGP(ケイワン・ワールド・グランプリ)】の広報だったのです!
ヒデオにも大きな転機が……ずっと事務所で支えてくれた百木マネージャーが、仕事を辞めると言うのです。

またも大事件!

10分経過……武藤が電光石火のジャーマンスープレックスを放ち、バックドロップの追撃でダウンを奪う。ムーンサルトプレスをギリギリで躱した高田は、ミドルキックで応戦。高田の腕ひしぎ逆十字は不発に終わるも、バックドロップが串刺し気味に決まり、再度腕ひしぎへ移行(ロープブレイク)

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60分過ぎ、またも大事件!
試合前にナーバスになっているK-1選手カズキ(武尊)とカナコの様子を覗き見したヒデオは、またも浮気と勘違い。あろうことか、格闘家にとって大切なリングへの入場をぶち壊しにしてしまうのです。
またも責任を取って仕事を辞めようとするカナコに、社長(峯村リエ)は驚きの提案をするのです。それは……カズキvsヒデオのエキシビジョン・マッチをK-1が用意する、というもの。

そして、決着

13分経過……武藤のタックルを、高田は膝蹴りで迎撃。腕ひしぎ狙いの高田はミドルキックでダウンを奪おうとするものの、武藤はここでまさかのドラゴンスクリュー!追撃のフィギュア・フォー・レッグロックが遂にリング中央で極まり、ロープブレイクまでの30秒間に亘り高田を苦悶させる。そして、戦いは最終盤……16分16秒の死闘を観た者は、リングに立つ二人の偉大なるレスラーを、決して忘れることはない

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1ラウンド保たなければ、カナコとはキッパリ別れる――
カズキとの試合にあたり、社長と無謀な約束をしたヒデオは、レッスルワンのレスラー達の協力の元、猛練習を始めます。
「俳優ってのは、人に非(あら)ずって書くんだよ!」
超えられない壁に直面する時、どうするのか?
縋るものが消えそうな時、どう生きるのか?
消えぞこないは、死にぞこないは、今――

武監督、また泣かされました

武正晴監督の映画では、必ず泣けるシーンがあります。
『EDEN』(2012年/101分)では、聖子ちゃんの歌と、悲しすぎる母との対面に泣きました。
『モンゴル野球青春記』(2013年/118分)では、聞き馴染みのない海外の人名の連呼で涙しました。
『イン・ザ・ヒーロー』(2014年/124分)では、大御所のまさかの再登場にやられました。

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人情コメディ『リングサイド・ストーリー』でも、やっぱり胸が熱くなる場面が用意されているのです。
若手レスラーの、思い出話を……
夢を捨て、故郷へ帰る者との会話を……
愛する人と別れる覚悟を決めた、背中を……
どうぞ、お観逃しなく。

人知れず戦い、死ぬこともできない……人生は、そんなもの。
地味でも、無様でも、惨めでも……踏ん張って、意地を張る。
夢を見る全ての人に、泥水を啜る全ての人に、いまを生きる全ての人に――『リングサイド・ストーリー』を、お薦めします!

『リングサイド・ストーリー』
2017 年/日本映画/カラー/ビスタ/5.1ch/104分

10月14日(土)新宿武蔵野館、渋谷シネパレス、センチュリーシネマ、ほか全国公開

佐藤江梨子 瑛太
有薗芳記 田中要次 伊藤俊輔 奈緒 村上和成 / 高橋和也 峯村リエ
武藤敬司 武尊 黒潮“イケメン”二郎
菅原大吉 小宮孝泰 前野朋哉 / 角替和枝 近藤芳正 余 貴美子

主題歌 「消えぞこない」フラワーカンパニーズ(ソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズ)

監督 | 武 正晴
脚本 | 横幕智裕  李 鳳宇  エグゼクティブ・プロデューサー | 矢吹 満   李 鳳宇  プロデューサー | 成 宏基  音楽 | 李 東峻  撮影 | 西村博光  照明 | 常谷良男  録音 | 岩間 翼  美術 | 天野竜哉  編集 |  細野優理子  助監督 | 山田一洋
企画制作 | マンシーズエンターテインメント  制作プロダクション | アニモプロデュース  製作 | マンシーズエンターテインメント アービング START グローバル・リンク・マネジメント KT 彩プロ

配給 | 彩プロ 

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