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名古屋市中区大須にある【Theater Cafe】(シアターカフェ)は、映画を上映する設備と、作品を展示するギャラリーを持った、多目的カフェです。
地元の映画ファンには、“名古屋 短編映画の聖地”と呼ばれています。

シアターカフェ代表の江尻真奈美さんは、あいち国際女性映画祭(AIWFF)のスタッフを務めたこともある、生粋の映画人。
短編映画の魅力に気付く切っ掛けは、当時働いていたシネマスコーレ(名古屋市中村区)で組まれていた前田弘二監督の特集上映だったそうです。

10年間ひとりで機材を抱え上映会【アニメーション・テープス】を開催していた林緑子さん(現シアターカフェ・ディレクタースタッフ)に声を掛けたのが、2011年。
そして2012年4月、遂に【Theater Cafe】がオープンすることとなるのです。
以来、シアターカフェは“映画館でやらない作品”をコンセプトに、質の高い特集上映を数多く開催。
観客だけでなく制作陣からも厚い支持を受け、ちょっと驚くようなビッグネームも舞台挨拶に駆けつける、“聖地”の名に相応しい劇場として定着しているのです。

そんなシアターカフェで、2017年9月22日、【シネマ健康上映会 IN 名古屋】が開催されました。

What's シネマ健康会,Who's 松本卓也

シネマ健康上映会とは、映画監督・松本卓也氏が率いる映像ゲリラ集団【シネマ健康会】(通称:シネ健)が不定期で行う上映会のことです。


映画ファンなら松本卓也さんのことは知っていて当然でしょうが、せっかくなのでプロフィールをおさらいしておきましょうか。              
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1976年生まれ、東京都出身。お笑い芸人として10年のキャリアを持ち、その後、完全独学で映画制作の道へと進んだという一風変わった経歴の持ち主です。
監督だけでなく脚本、企画もこなす、華麗なる映像作家で、『ノーマネー、ノー真似』 の精神で生み出された映画は、国内外70を超える映画祭でノミネート、賞を獲得しています。
実弟は、ラップ講師やパフォーマンス監修も手がけるラッパー・マチーデフ(Machee Def)さんで、『帰ろうYO!』(2014年/38分)、『ライブハウス レクイエム』(2016年(完全版)/79分)では主演を務めています。
しかも、『帰ろうYO!』は【SKIPシティ国際Dシネマ映画祭】【したまちコメディ映画祭】 【沖縄国際映画祭】 【いばらきショートフィルム大賞】 等など数々の映画祭を席捲、『ライブハウス レクイエム』は【MOOSIC LAB】で名古屋グランプリに選出されました。
この縁もあって、松本卓也監督は現在、中川運河再生文化芸術活動助成事業(中川運河助成ARToC10)の一環としてシネマスコーレが着手している【Filmusic in 中川運河・秋】に参加中で、間もなくクランクインだそう。

松本卓也監督と名古屋との縁は、今後ますます厚くなりそうなのです。

その第一歩……という訳ではないですが、シアターカフェで開催された【シネマ健康上映会 IN 名古屋】では、松本卓也監督自らが来場。
しかも、『ゆるい恋』(脚本・編集:松本卓也)の中條夏実監督、出演者の森恵美さん、増本竜馬さんを引き連れての、豪華トークショーとなりました。

歌に例えると、シングルカット

『LR Lost Road』(2013年/28分)
監督・脚本・編集:松本卓也
出演:百山月花 tasotokyo 高瀬友規奈 teruho(Demolight)
ストーリー:ガールズパンクバンド「パンク・ストライク」略して「パンスト」は、初の全国ツアーの移動中、山道で迷ってしまう。進む方向について喧嘩が始まり、それがバンドの方向性の違いの話にすり替わり…バンド解散の危機!

松本卓也監督 『L R』は、約6日間の合宿をして、秩父で撮影した作品です。今では色々と作品のお手伝いをしてもらってる増本さんとは、この作品で初めて出会いました。自分の中では、大きく巣立っていった作品なんですよね。
増本竜馬 初めてのグランプリ(を獲った)作品ですよね?
DSC_0460松本監督 2013年【第1回ちちぶ映画祭】でグランプリをいただきました。僕は色んな映画祭に出していて、自分の親に「準グラ男」とか「審査員特別賞男」なんて揶揄されてたんですけど、初めてグランプリをちちぶ映画祭で獲って……「もう、どうせ」なんて思ってたんで、大喜びで。
増本 『L R』はかなり息長く、ずっと上映してますよね?
松本監督 そうなんですよ!劇中のバンドは、それぞれ音楽をやってたり役者をやってたりするんですけど、実際に演奏できる人たちで演ってもらったんです。短編映画と言うものを歌に例えると、シングルカットになった映画です。僕のシングルカットって、この作品と、『帰ろうYO!』、『テンプル・ナンバー・ゼロ』(2014年/32分)の3本くらいですかね。あとは全部、カップリングかマニアックなアルバム曲みたいな(場内笑)。

歌で言ったら…アカペラ?

『アバウトユウ』(2016年/13分) 
監督・脚本・編集・出演:松本卓也
ストーリー:ユウは会社を辞め、ユーチューバーになった。色々な事にチャレンジした動画をあげ、再生回数アップに奮闘する。しかし、なかなか伸びない再生回数にやきもきし、次第に可笑しな行動をとるようになってしまい…

DSC_0451MC.(シネマ健康会 中島巧) これは、どういう経緯で作った作品でしたっけ?
松本卓也監督 2015年、【渋谷国際映画祭】という短編の新作を作る映画祭に初めて参加して、撮った作品ですね。その年は『ライブハウス レクイエム』を6月に撮影して編集していたんです。渋谷国際映画祭の納品は11月だったんですが、「1ヶ月で仕上げろ」っていう映画祭なんですよ。1ヶ月とはいえ「拘ったものを撮りたいな」と……新作を出すからには、「今の最新のMAXを出そう!」と思ったんです。インディペンデント映画をやってる以上、カメラ1台、一人でも撮れるという自分の胆力を試さなきゃと思ったんですよね。最近、大人数で撮ることが多くなってきたんですが、まぁ、歌で言ったらフォークソングですよね。なんなら、アカペラでも良いです。けっこう評価が真っ二つで。知ってる人からは「何やってんだ!?」と言われれば、全く知らない役者さんに「マジ良かったです、何すか、あれ!」って言われたり(場内笑)。でもこれ、長編のプロットを書いたんですよ。鶴川の映画祭(【鶴川グローイングアップ映画祭】)で審査員の方々から色々講評をもらった時に、懇親会である映画監督さんに「お前、これ長編やれ!」って言われて。「ああ、無くはないな」って思って、プロットまでは一気に書いたんですけどね(笑)。

監督が、こんなに大変だとは!

『ゆるい恋』(2017年/14分)
監督:中條夏実
脚本・編集:松本卓也
出演:後藤龍馬 新井花菜 イグロヒデアキ 松本卓也 小松豊生 森恵美 佐藤友美 増本竜馬 吉田岳男 福っくらちゃん
ストーリー:埼玉県川越市のゆるキャラ「福っくらちゃん」のナカノヒトに一目惚れした太一。福っくらちゃんのナカノヒトに再び会う為、川越を訪れるが―。

中條夏実監督 ずっと松本さんのシネマ健康会に10年以上いて制作、衣装をやってるんですけど、初めて監督をやりました。
松本卓也 僕は、脚本、編集、あと撮影もやっています。
中條監督 初監督をやらせてもらうにあたって、気の置けない人でやりたいということで、大体松本さんに頼んでしまったという(笑)。
松本 出演者も、中條監督がキャスティングして……
中條監督 そうですね。信頼の置ける人で、アドリブ力があって、存在感のある方を中心に。“中の人”は、若手の映画監督を応援してくれている【わかな会】の小松豊生代表です。
松本 来週(10月1日)、こちら(シアターカフェ)で【若手映画監督応援上映会】(in 名古屋vol2)をやるんですよね?
DSC_0461中條監督 なんでも、【わかな会】の“な”は名古屋の“な”だそうですよ。
松本 小松さんの地元・和歌山の“わ”、在住の川越の“か”、シアターカフェが大好きということで名古屋の“な”、で【わかな会】ということだそうで(場内拍手)。市役所の職員役の森さんは、今日が誕生日なんですよね!
森恵美 ありがとございます(場内拍手)!自分が出演した映画を誕生日に観ていただけるなんて、本当に幸せです。

『ゆるい恋』特典映像(10分)

松本卓也
 『ゆるい恋』は川越で撮影されたんですけど、原宿の【ショートショートフィルムフェスティバル&アジア】という映画祭にノミネートされて上映された時の様子です。映画というより、くだらない面白映像……『アバウトユウ』みたいなもんですが(場内笑)、中條監督が編集までやっています。
中條夏実監督 この作品で覚えて、けっこう面白かったので、もし次の監督作があるなら、また編集もやってみたいと思います。
松本 自主映画の監督って、本当に色々とやらないといけないんですよ。(『ゆるい恋』での)中條さんの監督っぷりを見て、「向いてるな」と思いました。
中條監督 いえいえ、そんな……監督って、本当に自分で決めなきゃいけないことが多くて。制作をやってると「早く決めてください!」なんて思ってましたけど……済みません(場内笑)。

プロデューサーが、こんなに大変だとは!

『赤い炎の女』(2016年/20分)
監督・脚本・編集:松本卓也
出演:高木悠衣 森恵美 保紫萌香 希代彩 後藤龍馬 津田寛治
ストーリー:宮崎と高畑は「良いモノ」を販売するピュアネットワークという会社で営業活動を行っている。社員は、商品と代表の魅力に惹きつけられ集まった人々。最近、宮崎と高畑は新商品の担当になり、張り切って営業活動を開始する。大都会に無限に広がるおかしな商売、おかしなコミュニティ。家族ではない、おかしな絆で結ばれた女と女の居場所探しの物語。

松本卓也監督 僕の最新の短編映画です。森恵美さんにプロデュースと主演をやってもらい、【渋谷国際映画祭】(2016年)で撮った作品です。この時は「1ヶ月で撮る」というルールは、ちょっとだけ無くなったような……でも、2ヶ月前でしたか。
森恵美 あまり時間は無かったですよね。普通、役者は監督さんからオファーを頂くんですけど、今回は逆に、役者が監督をオファーするという形だったんです。「是非とも映画を撮ってください」ということで、松本監督にお願いしたんです。
松本監督 オファーがあったんで、どういう作品が良いのか聞いたんですけど……
 「『アバウトユウ』みたいな感じで良い?」って言われて、「監督、あれは私には出来ません」っていうことで(笑)。今思えば、プロデュースをやりながら出演というのは、かなりきつかったですね……プロデューサーの仕事が、あんなに大変だとは!
松本監督 津田寛治さんをキャスティングしてくれたのも、森さんでしたよね。
 監督が、「津田さんがせっかく出てくれるんだったら」って、急に台詞を増やしたり(笑)。
松本監督 脚本は、もうちょっと詰めれば面白くなるのが見えてるのに、詰められないことも多いんです。今回は、「ここだけ連絡取れなくさせてくれ!」って言って、近くの銭湯に入って……「これだー!」って閃いたことも幾つかありました。
DSC_0463 ……前日でしたよね(笑)。
松本監督 オファーを頂いた時、森さんと高木(悠衣)さんの笑顔が凄く素敵だったんですよ。お二人が、ファミレスで凄い笑顔で「松本、映画撮れ!」と……この映画と一緒ですよね(場内笑)。「これ、傍(はた)から見たら、どう見えるのかな?」って思ったんですよね。
中島 プロデューサーとして、『赤い炎の女』は如何ですか?
 大満足です!……プロデューサーは、もう二度とやらないですけど(場内笑)。

そんな森プロデューサーは、前述したようにこの日がお誕生日。
サプライズでケーキが用意され、シアターカフェには「HAPPY BIRTHDAY えみり」の大合唱が響きました。

交差する3つのフリーダム

さてさて、今回の【シネマ健康上映会 IN 名古屋】、実は「~ こずえってぃWithますもってぃの前にまつもってぃ ~」というサブタイトルが付いていたのです。
このサブタイトルは、同じくシアターカフェで9月23日(土・祝)24日(日)に開催される【野本梢監督特集上映2~こずえってぃWithますもってぃ】に、ちなんでいたのでした。
観客を楽しませることを常に追い求める松本卓也監督のエンタメ精神が発揮されるのは、作品の中だけとは限らないのです。

【野本梢監督特集上映2~こずえってぃWithますもってぃ】では、野本監督と、映画学校の同期で盟友の増本竜馬監督の、新作を含む短編映画7本が2プログラムに亘り上映されます。

交差するフリーダム……これぞシアターカフェ!これぞシネマ健康会!とニンマリしてしまいますが……
【シネマ健康上映会 IN 名古屋】、遊び心は、これだけに非ず!
『ゆるい恋』に増本竜馬監督が出演していたのは前述しましたが……実は、『LR Lost Road』に野本梢監督も出演されていたのでした。

そして、Theater Cafeに交差するフリーダムを、もう一つ。
トークでも触れられていた、わかな会・小松豊生さん主催の【若手映画監督応援上映会 in 名古屋vol2】が、10月1日(日)に行われます。
4人の若手映画監督の5作品(?)が、2プログラムに亘り上映されるという、【vol1】から更にパワーアップした内容です。

【野本梢監督特集上映2~こずえってぃWithますもってぃ】【若手映画監督応援上映会 in 名古屋vol2】共に、お問い合わせはシアターカフェへどうぞ。


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さて、稀代のエンターティナー・松本卓也監督の新作にして超話題作が、全国順次ロードショーの真っ最中です。

その名も、
『ミス ムーンライト』

松本卓也監督 今、全国のイオンシネマさんで頑張って上映してます。「名古屋で観たい!」という声が多ければ、名古屋での上映を劇場にアピールできますので、どうぞ宜しくお願いいたします!
【Kisssh- Kissssssh映画祭】でグランプリを獲得し、ますます勢いに乗る『ミス ムーンライト』、東海地方上陸が待ちきれない!