まずは、是非ともこちらの動画を、ご覧……お聴きください!
麟太郎は、音色を耳にした途端に衝撃を受けました。

このUFOというか虚舟(うつろぶね)というか、丸底の皿を重ねたような形状の楽器は、『ハンドパン』という音階を持つ打楽器。
内部の空洞によるサスティーンに、幾重にも倍音が加わり、浮遊感を持ちながらも硬質な独特の音色が生み出されるのです。
まるで電子楽器から発せられるような音ですが、純然たる生(アコースティック)楽器です。

そもそも『ハンドパン』って?

ハンドパンは、鉄を主成分とする金属製の体鳴楽器です。

1999年、スイスにある【PanArt】社で、トリニダードトバゴの『スチールパン』とインドの『ガタム』から新しい打楽器の開発が始まり、2001年に『Hang®』(ハング)として発表されました。
たちまち注目されたものの製法は謎に包まれていたHang®ですが、2006年にPANArt社のドキュメンタリーが放送されると、世界中でハングを追従した楽器が作られるようになりました。

こうしたHang®を祖として生まれた新しい楽器は、英語圏で『ハンドパン』(handpan)と呼ばれるようになったのです。

PANArt社は、2013年よりHang®の生産を打ち切り、新たな打楽器を手掛けています。
ひょっとしたら2006年の取材時には、PANArt社の興味は既に発展型の次世代器に移っていたのかもしれないですね。

ハンドパンは楽器の性質、そして製法上、オーダーメイドが基本だそう。
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写っているハンドパンは、国内に唯一つ存在するというハンドパン製作所で作られた日本製とか。
素材は窒化処理が施された鋼材で、焼きを入れる作業の酸化作用により、銅色や鈍色の独特な色目となるそうです。

【HaMAlin】結成!

そんな、誕生してまだ20年にも満たない“最も新しい楽器”の一つハンドパンと、
対して、バロックの時代より愛されている500年の歴史を持つヴァイオリン、
歴史差500年という新旧二楽器が出会ったのは、今から一年前のこと。

共に愛知県名古屋市の出身で、大学で音楽を学んだ二人、

ハンドパン奏者の、西田尚史さん、

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ヴァイオリニストの、加藤寿美佳さん、

二人は、ミクスチャー・デュオ【HaMAlin】(ハマリン)を結成したのでした。

先程の動画は、2017年9月9日に【cafe&restaurant Classic】(名古屋市中区大須)で行われた一周年記念ライブ『HaMAlin【1st Anniversary LIVE】』で、2日目のオープニングを飾った即興演奏です。

「音楽は、ロックから入った」という西田さんと、「ずっとクラシック漬けだった」という加藤さん、二人のプレイスタイルは対照的です。

汗を飛ばしながらストイックに演奏する、西田さん。
作曲もこなし、一周年記念ライブでは初めて打ち込みに挑戦。
わずか数週間という短期間で、『灰色の夢』『シェイプ・オブ・ユー』『ダフトパンク・メドレー』『青い夢』と4曲ものプログラミングを成し遂げた、学究肌です。

かたや、笑顔で踊るように、軽やかにメロディを奏でる、加藤さん。
ヴァイオリニストというより、フィドラーとお呼びした方が良いかと迷うほど、楽しげに弓を振るいます。
アンコールで演奏されたモンティの『チャルダッシュ』では、ステージを降り、踊るように客席を縫いながらアレグロ・ヴィヴァーチェを披露する加藤さんにより、会場はまさにロマの居酒屋と化しました。
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そんなプレイスタイルのギャップが融合し、HaMAlinの大きな武器になっていることは、言うまでもないことでしょう。

HaMAlin(ハマリン)とは、鑑賞者が自分たちの音楽にハマるよう……との願いを込めて付けられたネーミングかと、勝手に想像していました。
しかし、ひょっとすると……お互いの演奏にハマッた西田さん、加藤さんの気持ちが、ハマリンというデュオ名の由来なのかもしれません。

進化し続けるHaMAlin

一周年ということで、それまで私服だったのを改め、ステージ衣装を新調したそう。
「見た目から入りたい」二人は、大須の「怪しいお店」に何かを感じとり、今回お披露目されたエスニック風の衣装をゲットしたそうで。
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西田さんの衣装はパンツと合わせるとどうもしっくり来ず、数日前に「スカートが良い!」と閃いたんだとか。
ただ、アンコールの『チャルダッシュ』でカホンを演奏する際、スカートが邪魔になることに初めて気付いたそうで……今後、ステージ衣装は更なる進化を強いられることになるやもしれません。

童謡や唱歌など“癒やし系”の音楽を演奏することが多いHaMAlinですが、1st Anniversary LIVE、しかも2日目ということもあって、この日は毛色の違うハマリンが披露されました。
前述した打ち込みの初導入が好例ですが、アップテンポで情熱的なセットリストで、古参のファンも唸らせていたのです。

そもそも、ハンドパンでカバー曲を演奏すること自体、滅多にないことなのだとか。
ハンドパンの代名詞は、上動画のような即興演奏なんだそう。
「彼女(加藤さん)なんか絶対音感を持ってますし、ヴァイオリンは数百という音階がありますし、一度聴けばすぐ演奏できちゃうんです。でも、ハンドパンは9つしか音階がないんで、カバーを演奏するのは本当に大変なんですよ!」
と、愚痴めいたMCでオーディエンスを沸かせる西田さんですが、言葉とは裏腹にHaMAlinが生み出すカバーは、熱量ほとばしる素晴らしい演奏でした。
原曲は、言わずと知れたウーゴ・ブランコ『コーヒールンバ』(Moliendo café)、日本では西田佐知子や荻野目洋子のカバーが有名ですね。
ですが、HaMAlinの演奏は、もうオリジナルと呼んで良い素晴らしい仕上がりです。
(ちなみに、ハンドパンの配置が変わってるのに気付かれましたか?)

自由さ(ヴァイオリン)と不自由さ(ハンドパン)が融合すると、こんなにも豊かな世界に進化するのです!

ますます飛躍するHaMAlin

3月には、1st,アルバム『Seasons』を販売開始したHaMAlin。

そして、彼らの所属する【VI octave】 (ロクオクターヴ)では、2018年7月30日に『VI Festival -Six Festival-』なるスペシャルライブを企画しているそう。
なんと、会場はZepp 名古屋(名古屋市中村区平池町)で、1000人規模のライブを目指しているのだとか。

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『VI Festival 』には、HaMAlin 1st Anniversary LIVEにゲスト出演した、ねぎぼうず、アンコールでサポートに入った、Ryu Kuriyaも出演が決定。
もちろん、HaMAlinの参加も決まっているので、是非ともご注目、ご傾耳を!