9月18日は敬老の日。3連休という方も多いでしょう♪
そんな秋の連休に相応しい映画が公開中なので、レビューさせていただきます。
ヨン・サンホ監督が生み出した新感覚ハートウォーミング・パンデミック・ムービーで、観る者をアッと言わせる“泣けるゾンビ映画”……その名も、『新感染 ファイナル・エキスプレス』です!
『新感染 ファイナル・エキスプレス』ストーリー:
ファンドマネージャーの仕事が多忙を極めるソグ(コン・ユ)は、幼い娘スアン(キム・スアン)と向き合う時間を持てず、誕生日に別居中の妻に会いたがるスアンを送りに渋々プサンへ向かう。ソウル(首爾)―プサン(釜山)間400km余を最短2時間15分で結ぶKTX(韓国高速鉄道)、夜明け前の始発列車には様々な人が乗り合わせていた。身重の妻ソンギョン(チョン・ユミ)を気遣う、サンファ(マ・ドンソク)。野球の遠征に出発するヨングク(チェ・ウシク)と、彼を慕うチアガール・ジニ(アン・ソヒ)。仕事で道中を急ぐ、バス会社の重役ヨンソク(キム・ウィソン)。悪態を吐きながらも仲良く旅行する、老姉妹(イェ・スジョン、パク・ミョンシン)。トイレで震えている、ホームレス(チェ・グィファ)。
出発時刻5:30ギリギリに駆け込み乗車した女性(シム・ウンギョン)は足取りも覚束なげで、とうとう車中で蹲ってしまう。女性乗務員・ミンジが手を貸そうとするも、それは悪夢の始まりであった。女性は正体不明のウィルスに感染しており、突如凶暴化する。逃げる間もなく首筋を噛み千切られたミンジも、同じように“感染者”と化した。パニックとなるKTX101号に、運転席からアナウンスが流れる。停車するはずだったチョナン(天安)駅は、通過するというのだ。車内のTVモニターには、得体の知れない“暴動”が起こり全国的に大混乱に陥っているというニュースが流れる。
かくてKTXは、300kmで移動する逃げ場の無い“鉄の棺桶”と化した――。
さて、ゾンビ映画といえば、まずは彼らの能力を把握しておかねばなりません。ちなみに、劇中“ゾンビ”という呼称は使われません。襲い掛かってくる彼らは、飽くまでも謎のウィルスの“感染者”です。
感染者は、走ることができます。跳ぶこともできます。察するに、健常時と変わらない身体能力が発揮できるようです。そして、ウィルスは血液感染するようで、噛まれたらアウトです。発作、発症までは個体によって時間差があるようで、頭部(脳幹)に近い部位を噛まれるほど正気を失う時間が短い傾向が見てとれます。弱点として、知能の著しい低下が見られます。感覚器は一通り駆使しているようですが、特に視覚と聴覚に頼る傾向にあります。
対して非感染者に関しては、謂わば極く普通の人間なので説明は割愛しますが、今作で特筆すべきは、感染者に対抗する有効な攻撃手段を持ち合わせていないことです。感染者といえど銃火器など殺傷能力の極めて高い攻撃手段なら殲滅しうるようですが、旅行者がそんなものを持ち合わせているはずもありません。テロ防止の観点から、現代社会の列車内には非常用の斧もありませんし。
武器代わりになる物といえば、野球のバットと、機動隊が残していった警棒と盾くらいのものです。KTX車内は非常時ですので自動ドアなどは切ってあるようですが、逆にドアを開け閉めするためには少々面倒な操作が必要で、素手でいる必要があります……噛まれたらアウト!なのに。
『新感染』劇中では、極端な劇症型感染症(しかも、正体不明)のパンデミックという極めて危機的な非日常を、登場人物たちが割りと冷静に許容するという、一種独特な作品世界が構築されています。
所謂“ゲーム脳”に侵された現代社会を揶揄しているようにも思えますし、様々な災害・人災の延長線上に“リヴィング・デッド”をメタファーとして置いているとも解釈できます。実際、映画の冒頭では「口蹄疫」のことが(そして、いつも行政の対応は信用ならないことが)意味ありげに語られます。
ともかく、そんな独特の世界観により、『新感染』は“泣けるパニック映画”たり得ているのです。『新感染』が普通のパニック映画と決定的に違うこと、それは登場人物たちが一刻も早く非日常から抜け出そうと模索するのではなく、狂った世界を生き延びようと足掻くことなのです。
『新感染』は、過去のゾンビ映画へのオマージュが溢れています。強化ガラスのドアを破ろうとする感染者たちは、“あのスーパーマーケット”を思い出させるでしょう。迫り来る夥しい数の灰色の腕は、地下要塞の悪夢を呼び覚ますでしょう。KTXの窓に張り付いた異形の群れに、ロンドンの地下鉄を思い起こす人も多いでしょう。
でも、どんな名作ゾンビ映画でも表現できなかったものが、『新感染』には写っているのです。
徐々にウィルスに侵されていく者たち(4人ほど該当します)の生き様(もしくは、逝き様)を、是非とも牢記してください。
ところで、ヨン・サンホ監督の名前を聞いてピンと来た方は、かなりの映画通でしょう。そう、初めての長編『豚の王』(2011年)でカンヌ国際映画祭に衝撃を与えた、アニメーション作家のヨン・サンホ監督です。
初の実写映画としてチャレンジした今作『新感染』が、世界156ヵ国からオファーが殺到し、韓国ではわずか19日間で1000万人以上を動員し興行収益No.1(2016年)となったのですから、ヨン監督の才能たるや恐るべしです。
もちろん、ヨン監督はアニメーション作品の新作も手掛けています。直近では、長編第3作『ソウル・ステーション/パンデミック』が9月30日より全国順次ロードショーとなります。
この『ソウル・ステーション/パンデミック』、実は『新感染』の前日譚に当たる直接の姉妹作品なのです。『新感染』で残ったままの謎が、含みを残した登場人物が、『ソウル・ステーション』で語られることもあるかもしれません……こちらも、公開が待ち遠しいです。
極端なゴア(残酷)描写のない、パニック・アクション寄りのホラー映画、しかも“泣けるホラー映画”ですので、このジャンルには鬼門のファミリー鑑賞も大丈夫です。
「いくらなんでも、ファミリーでは、ちょっと……」と思われるかもしれませんが、少なくともカップルにはオススメです。
「ホラーは、一人観!」という映画ファンは多いと思います。でも『新感染 ファイナル・エキスプレス』に関しては、誰かと一緒に鑑賞してみませんか?
大切な人と一緒に観たい、そして、観終わった後は大切な人の顔が見たくなる――『新感染 ファイナル・エキスプレス』は、そんな映画なのです。
愛知では、ミッドランドスクエアシネマ、中川コロナシネマワールド、109シネマズ名古屋、ユナイテッド・シネマ豊橋18、シネプレックス岡崎 、半田コロナシネマワールド、豊川コロナシネマワールド、安城コロナシネマワールド、小牧コロナシネマワールド、ユナイテッド・シネマ稲沢、MOVIX三好、ユナイテッド・シネマ、ミッドランド・シネマ名古屋空港 で、公開中。
岐阜では、シネックスマーゴ 、大垣コロナシネマワールドすべてで、公開中。
……“感染者”、続々増殖中デス。。
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