2026年7月19日(日)、ミッドランドスクエアシネマ2(名古屋市中村区名駅4-11-27 シンフォニー豊田ビル2F)にて、映画パーソナリティ・松岡ひとみが主宰する人気イベント【松岡ひとみのシネマコネクション VOL.101】が開催された。

記念すべき100回の黒沢清監督を経て、新たな一歩となる101回目のゲストに迎えられたのは、愛知県豊川市出身で『ミスミソウ』などの鬼才、内藤瑛亮監督だ。

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雪女伝説を「ミソジニー・ホラー」として再定義

上映作品は

『氷血』

小泉八雲の怪談「雪女」を現代的な視点で再構築した衝撃作である。

物語は、認知症の父・茂(佐野史郎)の介護のため、都会から豪雪地帯の実家へと移住した稔(北山宏光)と悠希(加藤千尋)の一家が、不可解な怪死と「白い女」の怪異に侵食されていく姿を描く。

本作の本質は、女性を支配し抑圧する悪しき男性性の恐怖を描く「ミソジニー・ホラー」にある。
表面上の優しさで妻をコントロールし、次第にDVモンスター化していく稔。
その背景には、父・茂から受けた暴力のトラウマがあり、行き過ぎた家父長制が「負のスパイラル」として描かれている。

呪いの対象であった雪女は、身勝手な男たちに振り回された女性たちの「怨念の集合体」として反転する。
主人公・悠希が自立と成長を遂げる「ファイナルガール」へと覚醒するプロセスは、従来のホラーの枠を超えたカタルシスを生んでいる。

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五感を侵蝕する「引き算の美学」と緻密な音設計

内藤監督の作家性は、細部まで計算し尽くされた映像と音の設計に結実している。

撮影監督・四宮秀俊が捉えた、白一色の銀世界の中に差し込まれる鮮烈な「血の赤」。
この色彩設計は、劇場の大きなスクリーンでこそ芸術的な恐怖として完成する。

本作の音響効果は特筆すべきクオリティを誇る。
風の音や衣擦れといった環境音の中に、3日間かけて収録した女性の悲鳴や呻き声を、気づかないほどの音量で忍ばせている。
この「聞こえないはずの誰かの気配」が、観客の耳から直接恐怖を植え付けていく。

【動画公開】Jホラー的怪談と北山宏光の「プロ根性」



上記の動画には、雪女に対抗して「夏女」の衣装で登壇した松岡ひとみと、内藤監督による爆笑と戦慄の制作秘話が収められている。

主演の北山宏光が、映像の美しさを優先するために厚手のインナー(ヒートテック等)を拒否して極寒の雪山撮影に挑んだエピソードや、ラストの「衝撃的な姿」が造形物ではなく北山本人の体を使用した実写であることなど、驚きの舞台裏が明かされている。

また、スイスの映画祭で、稔が悠希を「嫁です」と属性のみで紹介したシーンにおいて会場が「やばいやつだ」とざわついたという国際的な反応の差も興味深い。

内藤瑛亮監督がこだわったのは、Jホラー的な文脈と怪談的な展開との絶妙な匙加減だ。

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劇場の暗闇で「あったかい」光を見つける

内藤瑛亮監督は、「人って平等に死ぬんだなと思えるから、ホラーが好き」と語る。
『氷血』という冷たい呪いは、鑑賞後には観客に自立への一歩と、一筋の光を与える不思議な観後感を残す。

名古屋の夏を氷つかせる《侵蝕感》ホラーの全貌を、是非とも劇場の大スクリーンと音響設備で全身に浴びてほしい――。

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『氷血』公式サイト

https://hyoketsu-movie.jp/

松岡ひとみのシネマレスト

https://cinemarest.com/