
2026年7月31日(金)より全国公開される映画
『開戦前夜』
2025年8月に放送されたNHKスペシャル「シミュレーション~昭和16年夏の敗戦~」のドラマパートを元に、138分の完全版として再構成された重厚な歴史ミステリーである。
本作は、太平洋戦争開戦直前、日本の敗戦を予測しながらも戦争を止められなかった若きエリートたちの苦闘を描き出す。

精緻な予測を黙殺した「空気」
本作の原案は、作家・猪瀬直樹が1983年に発表したノンフィクションの金字塔「昭和16年夏の敗戦」である。猪瀬が発掘した「総力戦研究所」という史実をベースに、石井裕也監督が脚本・演出を兼任して映像化した。
劇中の舞台となる「総力戦研究所」は、1940年に内閣直轄の機関として設立された。
各省庁や軍、民間から選抜された30代の若きエリートたちが集い、日米開戦を想定した大規模なシミュレーション(机上演習)を行った。
彼らが導き出した結論は、「日本必敗」という驚くほど正確なものだった。
船舶の喪失が生産量を上回り、ソ連が参戦して日本は敗れる――
この結果は東條英機ら政府・軍上層部にも報告されたが、東條は「これはあくまで演習である」と一蹴した。
「物量」という論理的なデータよりも、当時の社会を覆っていた「戦争回避は不可能」という目に見えない「空気」が優先されたのである。

池松壮亮 × 仲野太賀/「豊臣兄弟!」を凌ぐ熱量
本作を支えるのは、現代の日本映画界を牽引する豪華キャスト陣の競演だ。池松壮亮(宇治田洋一 役)は、模擬内閣の「総理大臣」を担う中心人物を、凄まじい眼力と静かな狂気を持って熱演。
仲野太賀(樺島茂雄 役)は、内閣書記官長として、組織の軋轢に揺れる複雑な内面を体現。
奇しくも二人は、現在放送中のNHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」においても、秀吉と秀長という、天下を二人三脚で目指す「主人公兄弟」として共演中である。
大河での軽快な掛け合いとは対照的に、本作では国家の破滅という深淵を覗き込む「戦友」として、ヒリつくような緊張感を生んでいる。
これら一級の俳優陣を、重厚なミステリーへと昇華させたのが石井裕也監督の手腕だ。
石井監督は「個人の人格再現よりも、当時の状況と葛藤を伝えることが主眼」と語り、閉鎖空間での心理戦を通じて、組織が崩壊していく過程をスリリングに描き出した。

同調圧力という名の不可視の力
本作のテーマは、単なる過去の歴史ではない。「必敗」のデータがありながら、同調圧力という見えないチカラによって、誰も国策を止めることができなかった過程は、不気味なまでに現代の社会情勢と一致する。
情報の取捨選択やSNSによる監視社会において、私たちは「正論」よりも「空気」を読み、思考停止に陥ってはいないか。
監督が描きたかったのは、かつて日本が経験した「地獄への行進」の背景にある、人間の脆さそのものである。

劇場で、その「震え」を共有せよ
『開戦前夜』は、歴史の教科書には載らない「敗戦の真実」を、今を生きる私たちの問題として突きつける。映画の公開自体が、「表現の自由」と「歴史の誠実さ」を巡る新たな闘争の場であることをも示唆している。
劇中の池松壮亮の「目」が、そして彼らが叫ぶ「論理」が、いかにして無情な「空気」に消されていくのか。
その恐怖と戦慄を、ぜひ劇場の大きなスクリーンで体験してほしい。
それは、未来の過ちを食い止めるための、私たちへの「最後通告」かもしれない――。

『開戦前夜』
2026年7月31日(金)池松壮亮
仲野太賀 岩田剛典 中村 蒼 三浦貴大 /二階堂ふみ 杉田雷麟
北村有起哉 嶋田久作 中野英雄 渡辺いっけい 別所哲也 / 松田龍平 奥田瑛二 / 國村 隼
佐藤隆太 江口洋介 佐藤浩市
配給:東京テアトル
2026年/日本/ビスタ/5.1ch/138分/
©2026 ポニーキャニオン/東京テアトル/NHKエンタープライズ/RIKIプロジェクト
公式サイト:https://kaisenzenya.com/

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