
2026年6月27日(土)、シネマスコーレ(名古屋市中村区椿町8-12 アートビル1F)にて映画
『藍反射』
(らんはんしゃ)
が公開初日を迎えた。
上映後には野本梢監督、主演の道田里羽、キャストの村上りおん、そして企画・プロデュースの千種ゆり子が登壇。
「映画の学校」を冠する同館に、新たな「私たちの物語」が刻まれた。

「柔らかい社会派」野本梢が描く、身体と生きづらさ
野本梢監督は、LGBTQや発達障害といった、身近でありながら不可視化されがちな「生きづらさ」に寄り添い続けてきた気鋭の映画人だ。彼女の作家性の核には、実体験や丁寧なインタビューから汲み取った「他者のリアルな感情」がある。
特にトイレや水、生理といった「身体性」を伴う演出は、一人の人間が自己と向き合う時間を象徴的に捉える。
また、監督自らが脚本・編集を兼任し、キャストへの「当て書き」を基本とするスタイルが、フィクションを超えた切実な説得力を作品に与えている。

揺らぐ未来を抱きしめるための、静かな格闘本作は、気象キャスター・千種ゆり子が26歳で下された早発閉経の診断を原点としている。
25歳の主人公・はるか(道田里羽)は、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)という予期せぬ現実に直面し、「当たり前だと思っていた未来」が足元から崩れる不安に晒される。
彼女の孤独な視界に、万引きを疑われる中学生・優佳里(滝澤エリカ)が入り込むことで、物語は世代を超えたシスターフッド的な広がりを見せていく。
特筆すべきは、不妊治療という重いテーマを扱いながら、決して「悲劇」として消費しない構成だ。
表面的な明るさで自らを偽りながらも、診察室での短い転換の中で感情を切り替えていく道田里羽の繊細な演技と、未成熟な心を抱える滝澤エリカの佇まいが、観客に深い共感を呼ぶ。
これは、疾患の有無にかかわらず「思い通りにならない身体」と共に生きていく全ての女性、そして他者を思う全ての人へ向けられた、再生の物語である。
【動画公開】それは「わたし」の物語
この動画には、満席となったシネマスコーレで語られたトークが凝縮されている。
映画を「絵空事」でなく、フィクションを「つくり話」でなく、どうしたら「自分事」として受け取ってもらえるのか……
作り手たちが本作に込めた「誠実さ」を垣間みることが出来る。
公式インタビューの文字情報だけでは伝わらない「心根」を、ぜひ動画で追体験してほしい。

7月3日(金)まで上映が続くシネマスコーレでは、連日の舞台挨拶が予定されている。
6月28日(日):野本梢監督、村上りおん、稲村久美子EP。
7月1日(水):野本監督、土屋直子(出演)、知多良(撮影)。
7月2日(木):野本監督、土屋直子。
さらに、シアターカフェ(名古屋市東区白壁4-9)では、本公開に合わせ【野本梢監督特集】が開催中だ。
東日本大震災の10年後を描く『3653の旅』や、シアターカフェを舞台に撮影された『現在地』など、野本監督の足跡を辿る5作品が上映される。
『藍反射』とハシゴして鑑賞することで、彼女が一貫して描き続けてきた「居場所」と「他者へのまなざし」の深淵に触れることができるだろう。

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