『ロボジー』や『舞妓はレディ』など、数々のエンターテインメント大作をプロデューサーとして世に送り出してきた土本貴生が、初の監督作として選んだのは、戦前のプロレタリア文学者・谷口善太郎であった。

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なぜ今、100年前の「たたかう小説」を映画にする必要があったのか。
土本貴生監督が作品に込めた思いと、現代社会への「違和感」の正体に迫った。

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故郷の風景を呼び覚ました、忘れ去られた「至宝」

土本監督が本作を企画したきっかけは、極めて個人的な「シンクロニシティ」にある。
谷口善太郎が石川県から京都へ出てきて働き、小説の舞台とした場所が、監督自身が育った東山区今熊野界隈であったこと。
そしてコロナ禍直前に手にした谷口の評伝が、監督をかつての名作へと導いた。

「100年前の小説なのに、当時の生活が生き生きと描かれていて、夢中で読んだ」
と監督は語る。
特に代表作『綿』や『清水焼風景』に見られる、広い視点から土地の条件を捉え、物語の細部へと分け入る構成は、プロの映画人の目から見ても「映画的な導入部」として驚きに満ちたものであった。
「なぜこれほど面白い小説が、今、世の中に存在していないのか」
という義憤に近い思いが、監督を突き動かしたのである。

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「再現」ではなく「追体験」させるための演出

本作で最も印象的なのは、小説のテキストそのものをスクリーンに映し出し、俳優たちの「声」によって物語を立ち上げる演出だ。
低予算ゆえの割り切りと監督は苦笑するが、そこには「中途半端な再現ドラマよりも、文章そのものの力を伝えたい」という確固たる信念がある。

柊瑠美川合諒今里真といった実力派たちの声が、100年前のテキストに血を通わせ、当時の労働者たちのリアルな感情を現代に蘇らせる。
「きちんと読めば、100年前の言葉もこれほどまでに伝わるのだ」
という発見は、ドキュメンタリーという枠組みを超え、観る者を「谷口善太郎の内的世界」へと誘う重要な装置となっている。

【動画公開】「地続きの歴史」と、表現することへの執念



上記の動画には、監督が制作を通じて感じた、現代社会と戦前・戦中を繋ぐ「不穏な匂い」についての踏み込んだ発言が収められている。

特に注目すべきは、コロナ禍の緊急事態宣言下で見られた「日本人の特性」と、治安維持法下の空気感の類似性についての考察だ。
「右向け右」と言われれば一斉に従う社会の歪みに、監督は強烈な恐怖と違和感を覚えたという。

また、動画内では谷口善太郎が軟禁状態でペンを執り続けた「命がけの身代わりエピソード」の詳細や、今のコンプライアンス社会では考えられない「表現への渇望」についても語られている。
「大変だったけれど、ものを作ることが楽しかった」
という谷口の言葉の裏に、監督はどのような救いを見出したのか。
その全貌は、ぜひ動画で直接確かめてほしい。

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立ち止まって考えるための「心の余裕」

土本監督は、情報が氾濫するSNS時代の今こそ、「ちょっと待てよ」と立ち止まる余裕を持ってほしいと訴える。
「谷口善太郎の時代に比べれば、今は何でもできる。彼のズ太い精神に触れ、励ましを受け取ってほしい」
というメッセージは、閉塞感に覆われた現代を生きる私たちへの、力強い処方箋である。

ドキュメンタリー『谷口善太郎 たたかう小説』に宿った100年前の熱量は、間違いなく「今の私たち」へと繋がっている。

金沢21世紀美術館 シアター21
(石川県金沢市広坂1-2-1)
6月21日(日)10:00 / 13:30

北文化小劇場
(名古屋市北区志賀町4丁目60-31北図書館2階)
6月30日(火)10:30 / 14:00


谷口善太郎の「たたかい」は、まだまだ終わらない――。

『谷口善太郎 たたかう小説』公式サイト

https://tanizen-film.jp/