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ドキュメンタリー界に新しい風を吹き込む珠玉の一作を紹介する。

2026年3月28日公開
『ライフテープ』

この映画は、約12万人にひとりという指定難病「メンケス病」を抱える少年・珀久(はく)くんとその両親、そして猫のフィガロが織りなす「幸福」の記録である。

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「悲劇」を超越するポジティブな日常

メンケス病とは、銅の吸収不全により深刻な中枢神経障害や結合織異常を引き起こす極めて過酷な疾患である。
症状も千差万別で、珀久くんは唾液を飲み込む力がなく数分おきに吸引を必要とする。

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実に痛々しい日常が映し出され、直視をも避けたくなる現実が繰り広げられるが、観ていくうちに『ライフテープ』が湛える温かさに気付かされる。
それは、被写体となった人々が持つ「ポジティブさ」に由来する。

「人生は乗り越えられる運命で出来ている」などと言語化すれば途端に安っぽく感じられてしまう。
だが、珀久くんの両親・隆一さんと朱香さんが交わす言葉は、優しさにしても強さにしても圧倒的だ。

映画での台詞ではないが、この言葉は覚えておこうと思う。
私たちが彼らのマインドを持ち得たなら、世界中の人々がそんな発想を共有したなら、あらゆる戦争も終結すると断言できる。

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「親友」という特権的な視座

これまで安楽涼監督は、自身の実人生で直面した出来事を映画化してきた。
『ライフテープ』は、そんな安楽監督にとって初めてのドキュメンタリー映画。
そして、レンズを初めて他者の人生へと向けた映画といえる。

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製作のきっかけは、安楽監督の幼なじみである隆一さんからの「俺ら家族を撮ってほしい」という祈りにも似た電話であったという。
安楽監督のカメラは、単なる「観察者」ではなく、家族にとっての「目」や「耳」のように当たり前の存在としてその場に溶け込んでいる。

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私たち観る者が家族のポジティブさに幸せを感じるのと同じように、安楽涼監督も溢れる幸福感に驚愕したに違いない。
だからこそ本作は世に出ることになり、私たちはこの幸福な家族から幸せの「おすそわけ」をもらうことが出来るのだ。

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音楽と声とが繋ぐ「生の尊さ」

作品の余韻を決定づけるのは、父・隆一さん自身が制作した楽曲「ONE DAY」(EP『LIFE TAPE』収録)だ。
この軽やかな音楽に乗せて映し出される「ある日」の積み重なりは、鑑賞者の表情を自然と和らげる力を持っている。

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また、珀久くんのかすれ声には、家族には読み取れる感情が込められている。
だからこそ、終盤で隆一さんと朱香さんが下す決断は、途方もなく切ない。

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両親は、珀久くんに対して途切れることなく声を掛ける。
カメラを回す安楽涼監督も、家族の様子に釘付けになる私たちも、「声」大切さを切実に痛感させられる。

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何度も噛みしめたい幸福な瞬間

そんな家族だからなのだろう、映画のラストでちょっとした奇跡の瞬間が訪れる。
きっと、ほとんどの観客は気付けなかったことを悔やむだろう。

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だから、もう一度『ライフテープ』を観ると良い。
たった1秒のために再び101分の幸福を味わうなんて、本当に素敵な体験ではないか。

そして、リピート鑑賞の折には誰かと一緒に観ると良い。
私たちは、大切な誰かと一緒に生きずにはいられないのだから――。

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『ライフテープ』

2026年3月28日(土)ユーロスペース
4月3日(金)京都シネマ
4月4日(土)第七藝術劇場、横浜シネマリン
4月18日(土)ナゴヤキネマ・ノイ

ほか全国順次公開

出演:隆一 朱香 珀久 フィガロ
監督・撮影・編集:安楽涼 プロデューサー:大島新 前田亜紀

音楽:RYUICHI(EP「LIFE TAPE」より)

製作:すねかじりSTUDIO 制作協力:ネツゲン 配給:東風

2025年|101分|日本|DCP|ドキュメンタリー

©『ライフテープ』製作委員会

『ライフテープ』公式サイト
https://lifetapefilm.jp/