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2026年3月27日(金)、日本映画界に新たな「ケアの物語」の金字塔が打ち立てられる。

映画『90メートル』

メガホンをとったのは、『カランコエの花』(16)『か「」く「」し「」ご「」と「』(25)など話題作を世に放ち続ける俊英・中川駿監督
中川監督自身の母親を看病した実体験を投影した半自伝的なオリジナル作品で、難病を抱える母と介護に追われる息子の不器用な葛藤と自立を丹念に描く。

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夢と責任の狭間で揺れる「ヤングケアラー」のリアル

本作が秀逸なのは、介護を単なる「献身の美談」として描かれていない点にある。
自身の夢と、責任感の狭間で揺れ動く、家族介護の現実。
そして、家族の将来を縛り付けても、頼らざるを得ない患者の苦悩。
現代日本が抱える「ヤングケアラー」の不可視な問題が鋭くあぶり出される。

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『90メートル』ストーリー
幼い頃から本気でバスケットボールに打ち込んできた高校3年生・藤村佑(山時聡真)だが、今は日々の生活に追われている。
二人暮らしの母・美咲(菅野美穂)がALS(筋萎縮性側索硬化症)を患ったことで、佑は家事と母親のケアを一身に背負うことになったのだ。
進路相談で佑は、要件さえ満たせば受験できる自己推薦を担任教師から勧められる。
しかし、「高校生活で打ち込んだこと」と問われても、部活は途中で辞め、バスケ部の仲間たち(南琴奈、田中偉登)とも疎遠になった自分には答えることが何もない。
何より、日に日に体の自由を失っていく美咲を残して家を出ることは、佑にとっては現実的な話ではない。
そんなある日、美咲のケアマネージャー・香織(西野七瀬)から、母子に一報が届く――。

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山時聡真と菅野美穂が体現する「身体性」の凄み

本作を支えるのは、ダブル主演を務める二人の圧倒的な演技だ。

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藤村佑に抜擢されたのは、『君たちはどう生きるか』(23)『蔵のある街』(25)の山時聡真
オーディションで中川監督から「母親に電話する」という異例の課題を出され、限られた時間で親子の関係性を見事に感じさせたという。
バスケシーンの「陽」と、介護シーンの「陰」……山時聡真がみせる振り幅あふれる身体性は、映画の空気をも揺さぶる。

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ALS患者という難役に挑むのは、『ディア・ファミリー』(24)『近畿地方のある場所について』(25)と近作で「母親役」が続く菅野美穂
身体の自由を、言葉を失っていく過程で、眼差しや呼吸の僅かな乱れで感情を表現するという、研ぎ澄まされた圧巻の凄みを見せつける。
母親としての慈愛と孤独が交錯する終盤の表情は、登場人物だけでなく観る者の胸をも締め付ける。

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そして、脇を固めるキャスト陣がしっかりと支えつつ、花を添える。
西野七瀬がケアマネージャーを抑えた表現で好演し、南琴奈田中偉登が佑の高校生活に説得力を与える。

『90メートル』は、ウェットなだけの物語ではなく、無味乾燥な社会派作品でもない。
リアリティとエンタテイメントとが重層的に散りばめられた、実に豊かな映画となっている。
キャスト陣の熱演により、それが見事に結実している。

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距離と時間に象徴される人の想い

便利だからこそ、生活の自由を奪うものがある。
『90メートル』というタイトルは、実に象徴的だ。

そして、家族だからこそ、伝わらない想いがある。
待ちきれなかったために失ってしまったかけがえのない瞬間を、私たちはいくつ数えることが出来るだろう。

110分足らずの短い時間の中で、『90メートル』に生きる人々は何かを失い、何かに気付き、何かを取り戻す。
それは、静かに、だが確実に、観る者の胸に迫る。

そんな余韻を決定づけるのは、エンドロールを彩るMrs. GREEN APPLE大森元貴が書き下ろした主題歌「0.2mm」だ。
受精卵の大きさ=「命の起源」を意味するこのタイトルには、親子の絆の原点への想いが込められている。
大森が試行錯誤の末に生み出したというミドルテンポのバラードに込められた、小さな痛みと小さな肯定は観客の心を静かにさすってくれる。

『90メートル』は、難病ものというジャンルを超え、人が人を想うことの重みと、そこから生まれる「優しい強さ」を描き出した傑作である。
当たり前の日常がどれほど尊く、そして切ないものであることを、本作は静かに、しかし力強く教えてくれるだろう――。

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『90メートル』
3月27日(金)全国公開

山時聡真、菅野美穂、西野七瀬、南琴奈、田中偉登


©2026 映画『90メートル』製作委員会

配給:クロックワークス

『90メートル』オフィシャルサイト
https://movie90m.com/