
2026年3月8日(日)、ナゴヤキネマ・ノイ(名古屋市千種区今池1丁目6-13 今池スタービル 2F)にて、土井敏邦監督の最新ドキュメンタリー映画
『在日ミャンマー人
-わたしたちの自由-』
舞台挨拶が挙行され、土井敏邦監督が登壇した。
2021年2月1日の軍事クーデターから5年という節目、国際社会の関心が他の紛争地へ移行し、情勢が深刻な膠着状態にある中で、本作は「人間が人間らしく生きる」ことの根源を問いかける。
パレスチナや福島の人々の声を取材してきた土井俊邦監督は、『異国に生きる 日本の中のビルマ人』(13年)で14年に及ぶ在日ミャンマー人への取材をまとめたドキュメンタリーを世に送っているが、更に大きく踏み込んだ本作のカメラは彼らの気持ちに寄り添い並走する。
「二重の生活」が交差する地・名古屋での上映
本作の舞台挨拶が名古屋で行われた背景には、統計的な必然性がある。
名古屋市の外国人住民数は初の10万人を突破したが、中でもミャンマー人は前年末比63.4%増(2,646人)という突出した伸びを記録している。
愛知県全体で見ても増加率は全国平均を大幅に上回る87%に達しており、全国で8番目にミャンマー人が多い地域となっている。
彼らの多くは、平日は技能実習生や留学生として過酷な労働や学業に従事し、週末には名古屋駅前などで母国の民主化を訴える募金活動に奔走している。
今池の40席という濃密な空間で本作が上映されたことは、共にこの街で生きる隣人の「声」に耳を澄ませる、極めて重要な機会となった。
多層的な構造を浮き彫りにする三部構成
土井監督が『異国に生きる 日本の中のビルマ人』より更に10年の歳月をかけて完成させた本作は、多角的な視点からミャンマーと日本の関係を問い直す三部構成となっている。
第一部:異国・日本での闘い
日本で生活する3人の若者、ワナトン、エィミィミィ、レーレールィンに焦点を当てる。
空爆で家族を失った悲しみや、日本社会で直面する差別に抗いながら、「自分の自由はみんなの自由につながっている」と信じて活動を続ける彼らの内面に肉薄する。
第二部:国境のミャンマー人
舞台をタイ・ミャンマー国境の街メーソットへ移し、避難した子どもたちが通う学校を支援する在日ミャンマー人女性・大槻美咲を追う。
第三部:ミャンマーと日本
1991年から亡命生活を続けるチョウチョウソーを軸に、日本のODA(政府開発援助)が実質的に軍事政権の資金源となり、市民への弾圧を支えているという「加害」の構造を告発する。
「パラヒタ」という問いかけ
本作を通じて観客に突きつけられたのは、ミャンマー伝統の精神「パラヒタ(利他主義)」だ。
自分の幸せを社会の解放や他者の救済と切り離さない彼らの在り方は、個人主義や自己責任論が蔓延する現代日本社会にとって、自らの生き方を映し出す「鏡」として機能する。
「一瞬の幸せより、一生の幸せを」
と願う彼らの切実な言葉は、不条理に抗うための連帯を促す。
ナゴヤキネマ・ノイという公共圏から始まったこの対話は、単なる映画の受容を超え、私たちが享受している「自由」の正体を問い直すための、静かな、しかし確実な一歩となった――。

『在日ミャンマー人 -わたしたちの自由-』公式サイト
http://doi-toshikuni.net/j/myanmar/
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