
2026年3月1日(日)、ナゴヤキネマ・ノイ(名古屋市千種区今池1丁目6-13 今池スタービル 2F)にて、
映画『イマジナリーライン』
舞台挨拶が行われた。
超満席で熱気に包まれたスクリーン前に登壇したのは、愛知県豊橋市出身・主演の中島侑香と、愛知県安城市出身の編集・佐藤善哉。
さらに、サプライズで脚本の峰岸由衣、撮影・照明の小澤将衡が駆けつけ、同世代のチームならではの濃密な制作秘話を語り尽くした。

「現場」名古屋への帰還と監督の祈り
本作は、2021年に名古屋入管で発生したウィシュマ・サンダマリさんの死亡事件に坂本憲翔監督が強い衝撃を受け、東京藝術大学大学院の修了制作として企画された作品だ。
他地域での登壇のため不在であった監督のメッセージを、佐藤が代読した。
坂本憲翔監督(要約)
2021年の名古屋入管事件をきっかけにこの問題に関心を持った。
仮放免の制度が厳しくなる中、難民受け入れの問題は一筋縄ではいかないが、本作を通じてルーツを持つ人々への対応について皆さんと考えていきたい。

登壇者たちが明かす「人間」を描くための執念
登壇した4名は、社会問題という重いテーマに対し、いかにして「一人の人間」としてのリアリティを吹き込んだかをそれぞれの立場から語った。
中島侑香(主演・山本文子役)は、坂本監督から「何度もスクロールしないと読めない長文メール」で熱烈なオファーを受け、「ぜひ期待に応えたい」という気持ちで出演を決めたそう。
撮影では1日に泣くシーンが集中し、ついに涙が枯れて出なくなったが、水分を補給したら再び出るようになったという驚きのエピソードを披露。
地元である愛知の映画館での舞台挨拶は「一つの夢だった」と感極まる場面もあった。
佐藤善哉(編集)は、俳優二人の感情が素材からダイレクトに伝わってきたと振り返った。
特に、夢(LEIYA)が挑んだ病室のシーンは、現場のピリついた空気感をそのまま活かすため、あえて最初のテイクを採用したという。
峰岸由衣(脚本:サプライズ登壇)は、坂本監督と何度も衝突し泣きそうになりながら必死に執筆した記憶しかないと吐露。
自身が書いた脚本の断片が、編集の力によってさらに洗練され、一つの物語として美しく繋がっていることに驚きと感謝を述べた。
小澤将衡(撮影・照明:サプライズ登壇)は、社会問題を撮る際カメラマンとしてどう向き合うか悩み抜いた末、「人間として撮る」ことを決意したそう。
具体的な手法として、レンズの高さをすべて役者の心臓の位置に合わせて撮影した**という秘話を明かした。
これにより、記号的な「外国人」ではなく、体温の通った一人の人間が語っているような映像表現を目指したという。

公共圏としてのミニシアターから始まる対話
タイトルの『イマジナリーライン』は、映像用語であると同時に、社会がマジョリティの安寧を守るために無意識に引いている「見えない線引き」を指している。
イベントの最後、中島は「同世代のチームが作ったこの熱量を持ち帰ってほしい」と呼びかけた。
名古屋入管事件という痛ましい記憶を抱く地で、事件から5年を経て上映された本作。
ミニシアター特有の親密な空間で行われた舞台挨拶は、不条理に苦しむ隣人の存在に気づき、社会の「線引き」を問い直すための静かな連帯の場となった――。


映画『イマジナリーライン』公式サイト
https://www.lamp-kk.com/imaginary-line/
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