
夢に破れ燻っていた写真家志望の青年(峯田和伸)は、ラジオでパンク・ミュージックを知る。
だがそれは、ジョニー・ロットンが電撃的にアメリカツアー中セックス・ピストルズを脱退した1978年のことだった。
青年は「間に合わなかった」のだ。

しかし「パンクの種」を魂に宿した青年は、それまで縁遠かった音楽のことを貪るように吸収し始める。
印刷屋の娘・サチ(吉岡里帆)が自費出版するミニコミ誌「ロッキン・ドール」で情報を目にした青年は、恐る恐る渋谷のライブハウスを訪ねる。
モモ(若葉竜也)率いるバンド「TOKAGE」のライブは、音楽も観客も何にも縛られない、生のエネルギーに溢れた異空間であった。
Punk is not Dead!
東京でパンクは生きているのだ。

青年は、自分たちでレコードを作り、自分たちでイベントを企画する、彼らのDIY(Do It Yourself)精神に衝撃を受ける。
ステージだけでなく客席にもカメラを向けた写真が気に入られ、S-TORA(大森南朋)、「TOKAGE」、DEEP(間宮祥太朗)ら「軋轢」たちのライブに、青年はカメラマンとして帯同する。
青年の名は、ユーイチ。
こうして、音楽シーンに今も伝説として刻まれるムーヴメント「東京ロッカーズ」は始まった――。

これは、3月27日(金)よりロードショー
『ストリート・キングダム
自分の音を鳴らせ。』
の、ほんの一コマである。

「インディーの生き証人」が綴ったバイブルの奇跡の映画化
「インディーズ」、「自主レーベル」、「オール・スタンディング」、「ロック・フェス・スタイル」。
現代では当たり前となったこれらの言葉や文化は、すべて1978年のたった1年間に凝縮された若者たちのエネルギーから生まれたものだ。
本作のメガホンをとったのは、自身もパンク・バンド「ばちかぶり」のヴォーカルとして活動していた田口トモロヲ監督。
田口監督は地引雄一「ストリート・キングダム」(ミュージック・マガジン社)を読んで映画化を熱望、約10年の歳月をかけてこのプロジェクトを完成させた。

脚本には『アイデン&ティティ』でもタッグを組んだ宮藤官九郎を迎え、実在のバンド名や人名を
「リザード(紅蜥蜴)」=「TOKAGE」
「フリクション」=「軋轢」
「S-KEN」=「S-TORA」
などと微妙に変えつつ、宮藤ならではのドラマ要素を加えた群像劇に、そして普遍的な青春物語へと昇華させている。

豪華キャストが集結
主人公・ユーイチ役には、田口トモロヲ監督作品に欠かせない、峯田和伸。
自主レーベル「テレグラフ・レコード」を運営するなど東京のインディペンデント・シーンの当事者である写真家・地引雄一の魂をカバーした。
「TOKAGE」モモの若葉竜也、「軋轢」DEEPの間宮祥太朗、S-TORAの大森南朋が、昭和・渋谷の空気感を存分に纏わせる。
活動最長のガールズバンドとしてギネスに載る「ZELDA」のチホを彷彿とさせるサチを熱演した吉岡里帆の存在感も光る。

そして、未知ヲ(「ザ・スターリン」遠藤ミチロウ)役の仲野太賀が、ヒロミ(「じゃがたら」江戸アケミ)役の中村獅童が、虚と実の狭間で実力を遺憾なく発揮する。
キャスト陣は『アイデン&ティティ』をフックとして田口作品への出演を熱望したというから、役へののめり込み方が半端ないのも頷ける。

圧倒的な臨場感を再現するスタッフとキャストの執念
本作の白眉は、徹底的に作り込まれたライブ・シーンと美術にある。
ライブ・シーンでは「本物の演奏を聴かせたい」という田口監督の意図によりオリジナル音源を吹き替えで使用しているが、俳優たちは猛特訓を経てプロのミュージシャンも驚くほどの完璧な当て振りを披露している。
主題歌はリザードの楽曲をカバーした「宣戦布告」で、大友良英のバンドをバックに峯田和伸と若葉竜也がパンクスピリット溢れる歌声を響かせる。
渋谷屋根裏、S-KENスタジオ、新宿LOFT(旧)、京大西部講堂といった「ロックの聖地」を当時の写真をベースにセットで忠実に再現した美術にも目を奪われる。
レコードジャケットやフライヤーといった小道具に至るまで、当時のDIY精神を美術スタッフが深掘りし、画面の細部に至るまで当時の熱気を刻み込んでいる。

現代へと繋がる「自分の音を鳴らせ」
本作が描く「東京ロッカーズ」の姿勢は、音楽で売れることよりも「自分たちが満足できる音楽を追求すること」に重きを置いていた。
それは、SNSやインターネットを通じて個人が自由に自己主張する現代の若者文化の先駆けでもある。
映画の終盤、ユーイチが現代にトリップするシーンで映し出される老舗レコード店「FUJIYAMA」の看板には、江戸アケミの言葉
「自分の踊り方でおどればいいんだよ」
が記されている。
タイトルの「自分の音を鳴らせ」と共鳴し、過去の物語を今の時代に生きる私たちへの力強いエールへと繋げるパワーワードだ。

ひとつの時代が遺した「ユートピア」の記録
田口トモロヲ監督にとって、この映画は「何かを探している人が何かを見つけられる場所」を描いたユートピアの記録だという。
単なるノスタルジーに浸るための回顧録ではなく、今の閉塞感ある社会の中で「ないなら自分たちでやる」というパンク精神がいかに大切かを教えてくれる。
スクリーンの向こう側で激しく踊り、叫び、自らの音を鳴らす若者たちの姿は、観る者の心に眠る衝動を激しく呼び覚ますに違いない。
DIY精神で生き方を切り拓いた人々を描く『ストリート・キングダム』は、居場所を探し求める現代の私たちに直結する物語なのだ。
さあ、あなたは……どんな音を鳴らすのか――。

『ストリート・キングダム ⾃分の⾳を鳴らせ。』
3⽉27⽇(⾦)
TOHO シネマズ ⽇⽐⾕
ミッドランドスクエアシネマ
センチュリーシネマ
ほか全国公開
企画製作・配給︓ハピネットファントム・スタジオ
©2026 映画『ストリート・キングダム ⾃分の⾳を鳴らせ。』製作委員会
峯⽥和伸 若葉⻯也
吉岡⾥帆 仲野太賀 間宮祥太朗 中島セナ
⼤森南朋 中村獅童
監督:⽥⼝トモロヲ
原作:地引雄⼀「ストリート・キングダム」
脚本:宮藤官九郎
⾳楽:⼤友良英
公式サイト︓https://happinet-phantom.com/streetkingdom
公式 X/Instagram︓@streetkingdomjp
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