
2025年12月28日(日)、ミッドランドスクエアシネマ(名古屋市中村区名駅4-7-1)にて、映画パーソナリティー・松岡ひとみコーディネートによる恒例のシネマトークライブ
【松岡ひとみのシネマコネクションVOL.91】
が開催された。
上映作品は、スピッツの名曲から誕生した忘れられないラブストーリー
『楓』
ゲスト登壇した行定勲監督は、名古屋への愛着を語りつつ、本作に込めた並々ならぬ情熱を明かした。
名曲「楓」というプレッシャーから星の世界へ
1998年にリリースされ、世代を超えて愛され続けてきたスピッツの「楓」。行定監督は、スピッツのメンバーだけを招待した試写会について振り返り、「緊張した」と語った。
劇中では、渋谷龍太(SUPER BEAVER)や十明ら4組の異なるアーティストによってこの曲が歌い継がれる。
行定監督は「歌入りの楽曲を劇中で使うのは難しい」としながらも、Yaffleによる絶妙なアレンジを得て、主人公たちの記憶にリフレインする重要な役割としてこの名曲を「立体化」させた。
ニュージーランドの星空が教えた「道標」としての死生観
物語の重要な舞台となるのは、世界一美しい星空を誇るニュージーランドのテカポ湖。ロケハンでマウント・ジョーン天文台を訪れた監督は、降るような星空を前に「人として、自分の位置を感じるために見ておいた方がいい」と圧倒されたという。
「楓」のカップリング曲が「スピカ」であることからも連想されるように、劇中には天体の要素が色濃く反映されている。
かつて星は旅人の道標(みちしるべ)であった。
喪失を抱えた人々が空を見上げるのは、亡くなった人が星になり、残された者の人生を導いているからではないか。
撮影監督ユ・イルスンから提案されたクレーンを駆使した極端な俯瞰(ふかん)ショットから、行定監督は「魂の目線」として映像に刻み込んだ。
福士蒼汰の進化と「喪失」の先にある再生の物語
主演の福士蒼汰は、亡くなった双子の弟のフリをして生きる兄・涼という、繊細かつ大胆な表現が求められる難役に挑んだ。行定監督は、海外での経験を経て肩の力が抜けた福士のスタンスを絶賛し、本作が彼の俳優としての新たな「脱皮」の機会になることを期待している。
20年前に『世界の中心で、愛をさけぶ』を手がけた行定監督が、再び巡り合った喪失と再生の物語。
それは、ヒロインの福原遥や宮沢氷魚ら若手実力派キャストたちが、言葉にならない心の機微を目線一つで体現した、美しくも残酷なラブストーリーだ。
1度目では観逃す「心の声」を聴くために
「1度目では気づかないような俳優たちの繊細な演技が、2度目、3度目の鑑賞で発見できるはずだ」と、行定監督は語る。
単なるミュージックビデオ的な枠を超え、スピッツの名曲に新たな存在意義を与えた本作は、観る者の心に深く静かに沈み込む一本であることは間違いない。
映画『楓』は、ミッドランドスクエアシネマほかにて絶賛上映中。
この冬、銀幕に広がる満天の星空と、切なくも温かい「楓」の旋律を、是非ぜひ劇場で全身に浴びてほしい――。


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