「特撮」と聞くと、私たちは「怪獣映画」という意味で捉えがちだ。
実際、日本では「ゴジラ」も「ウルトラマン」も「仮面ライダー」も長寿シリーズとして人気を博し、「スーパー戦隊」に至っては50年(!!)に亘る歴史に一旦ピリオドを打つという報道が一般ニュースの扱いで伝えられるほど、「特撮作品」は社会に定着している。
そして、そんな人気シリーズのみならず、近年でも『カミノフデ』『怪獣ヤロウ!』『アユラ』といった新たな意欲作も続々と誕生している。
だが何も、怪獣や怪人、悪の秘密結社や神話レベルで語られる怪異などを可視化する作品だけを「特撮」と限定するのは甚だ勿体ない。
『日本沈没』や『首都消失』といったパニック・スペクタクル、『さよならジュピター』のようなハードSF、『のぼうの城』のような時代劇にも、特撮の精神は息づいている。
12月6日(土)より池袋シネマ・ロサほか全国順次公開となる
『ブラックホールに願いを!』
は、まさにそんな「特撮映画」だ。

PFF入選作『限界突破応援団』(2015)や、ローカルヒーロー・キタキュウマンPV『Hey!!北九州』(2018)を手がけてきた「STUDIO MOVES」は、若き特撮クリエイターが集う映像制作者集団。
そんな「STUDIO MOVES」初長編映画となる本作の企画が始動したのは、なんと2016年。
三池崇史監督が主催する「カチンコ Project」では優秀企画賞を受賞した実績を持つ。
特筆すべきは、その特撮への尋常ならざる情熱だ。
監督・脚本・編集を務めた渡邉聡監督は、生まれて初めてしゃべった言葉が「ゴジラ」だったという根っからの特撮オタク。
『シン・ゴジラ』以降、特撮現場に携わってきた監督が、特撮というジャンルを根底に置きつつ、現代的な主題を取り入れることを目指した作品が、長編デビュー作『ブラックホールに願いを!』である。
第一線の特撮現場で活躍する若手スタッフが結集した本作は、「誰も見たことのない迫真の映像」をスクリーンに叩きつける。
ロケはユネスコ世界文化遺産の端島(軍艦島)や、最先端の大型粒子加速器を有する高エネルギー加速器研究機構(KEK)で敢行され、その世界観は折り紙つきだ。
本作の撮影手法は、まさに「特撮的アプローチ」。
「実現可能な物理現象は可能なかぎり実際に現場で再現する」というコンセプトに基づいている。
時間遅延現象を引き起こす劇中の「ボブル空間」の撮影では、ペンをロッド操作でゆっくりと落とし、宙空に浮く物体は針金で固定するなど、SF的な現象が実際に現場で撮影されたという。
特技監督・青井泰輔の指揮のもと描かれる物語中盤の大規模な都市破壊描写も、ただごとではない。
ミニチュアビルを超スローモーション撮影が可能なカメラで撮影することで、これまでにないスケール感を実現した。
また、大型加速器の描写にもミニチュア撮影が駆使されており、迫力と映像美はインディーズ映画の枠を完全に超越している。

『ブラックホールに願いを!』ストーリー西暦2036年、伊勢田みゆき(米澤成美)は人工ブラックホールの研究を行う「人工縮退研究所」の総務部に勤めている。
緊張すると声が出なくなってしまう場面緘黙(かんもく)症を患う伊勢田だが、研究員として働く准教授・吉住あおい(吉見茉莉奈)に憧れており、何とか彼女と話したいと日々トライ&エラーを繰り返している。
ある朝、研究所は見えない時間の壁「ボブル空間」に覆われ、山之辺(斎藤陸)ら住吉研究室の数人、たまたま空間の外にいた星教授(濱津隆之)や伊勢田らを除いて、行動不能に陥る。
そこに届いたのは「悪魔博士」と呼ばれる孤高の研究者・赤城容子教授(鳥居みゆき)からの犯行予告動画で、3時間後に時間犯罪を起こして人類に復讐するという。
一行は、事件解決のカギを握る吉住を、そして世界を救うことは出来るのか――。

映像制作者集団「STUDIO MOVES」が6年を掛けて世に放つ渾身の空想特撮映画『ブラックホールに願いを!』には、怪獣は出ない。
ブラックホールを扱う作品だが、G細胞が恒星爆縮を経て地球に帰還したりする物語ではない。
だが、ヒーローは登場する。

主演を務めた米澤成美は、緘黙症に悩む総務部の女性という何とも難しい役どころを見事に演じ切った。
『スリッパと真夏の月』や『サイキッカーZ』といったSFコメディだけでなく、『つむぎのラジオ』のようにシリアスで繊細な演技も熟せる米澤だからこそ。

もう一人の主人公・吉見茉莉奈は、時間犯罪テロに立ち向かう若き天才研究者という難役を丁寧に表現した。
『センターライン』シリーズ、『啄む嘴』で主演を張った経験が間違いなく本作にも生きており、また『BY THE WAY -波乱万丈-』のように吉見はSF作品にもよく似合う。
ふたりの共演は、『サイキッカーZ』以来となる。

『河童の女』の斎藤陸、『カメラを止めるな!』『キングダム』シリーズの濱津隆之ら共演陣の好演も観逃がせない。
『シン・ゴジラ』の三輪江一、『仮面ライダーx仮面ライダーウィザード&フォーゼMOVIE大戦』のキャッチャー中澤、「ウルトラマンオーブ」のねりお弘晃、そして金子修介監督、雨宮慶太監督の作品には欠かせない螢雪次朗と、特撮ファンならずとも思わず唸るキャスティングにも注目だ。

また、地球滅亡を狙う悪魔博士・赤城容子を演じるのは、「ヒットエンドラン」でお馴染みのお笑い芸人鳥居みゆき。
『時間巡りエブリデイ』『全員死刑』など女優としても高い評価を受ける鳥居は、本作でもエキセントリックなだけではない存在感で光り輝く。

劇中、次々と発生するボブル空間によって崩壊していく世界は、様々な天災、人災により荒廃する実社会の延長線上にある世界線と言える。
そして、次々と分断を浮かび上がらせる「壁が可視化された世界」は、まさに私たちが暮らす世界の縮図である。
世界の危機に立ち向かうのは、普通に市井を生きる人たちや、矛盾や葛藤、ハンデを背負った主人公だ。
迫真の特撮が描き出すディストピアで覚束なげに立ち上がるヒーローたちに、胸を熱くさせられる。

8年間燃やし続けた特撮愛の結晶『ブラックホールに願いを!』がもたらす未曽有の鑑賞体験を、是非とも確かめてほしい。
あなたのその目で、劇場で――!
池袋シネマ・ロサ
ほか全国順次公開
米澤成美 吉見茉莉奈
斎藤陸 濱津隆之 キャッチャー中澤 ねりお弘晃
三輪江一 大沢真一郎 星能豊 長万部純 岡崎森馬 浦山佳樹
鳥居みゆき 螢雪次朗
監督・脚本・編集:渡邉聡
特技監督:青井泰輔
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実際、日本では「ゴジラ」も「ウルトラマン」も「仮面ライダー」も長寿シリーズとして人気を博し、「スーパー戦隊」に至っては50年(!!)に亘る歴史に一旦ピリオドを打つという報道が一般ニュースの扱いで伝えられるほど、「特撮作品」は社会に定着している。
そして、そんな人気シリーズのみならず、近年でも『カミノフデ』『怪獣ヤロウ!』『アユラ』といった新たな意欲作も続々と誕生している。
だが何も、怪獣や怪人、悪の秘密結社や神話レベルで語られる怪異などを可視化する作品だけを「特撮」と限定するのは甚だ勿体ない。
『日本沈没』や『首都消失』といったパニック・スペクタクル、『さよならジュピター』のようなハードSF、『のぼうの城』のような時代劇にも、特撮の精神は息づいている。
12月6日(土)より池袋シネマ・ロサほか全国順次公開となる
『ブラックホールに願いを!』
は、まさにそんな「特撮映画」だ。

PFF入選作『限界突破応援団』(2015)や、ローカルヒーロー・キタキュウマンPV『Hey!!北九州』(2018)を手がけてきた「STUDIO MOVES」は、若き特撮クリエイターが集う映像制作者集団。
そんな「STUDIO MOVES」初長編映画となる本作の企画が始動したのは、なんと2016年。
三池崇史監督が主催する「カチンコ Project」では優秀企画賞を受賞した実績を持つ。
特筆すべきは、その特撮への尋常ならざる情熱だ。
監督・脚本・編集を務めた渡邉聡監督は、生まれて初めてしゃべった言葉が「ゴジラ」だったという根っからの特撮オタク。
『シン・ゴジラ』以降、特撮現場に携わってきた監督が、特撮というジャンルを根底に置きつつ、現代的な主題を取り入れることを目指した作品が、長編デビュー作『ブラックホールに願いを!』である。
第一線の特撮現場で活躍する若手スタッフが結集した本作は、「誰も見たことのない迫真の映像」をスクリーンに叩きつける。
ロケはユネスコ世界文化遺産の端島(軍艦島)や、最先端の大型粒子加速器を有する高エネルギー加速器研究機構(KEK)で敢行され、その世界観は折り紙つきだ。
本作の撮影手法は、まさに「特撮的アプローチ」。
「実現可能な物理現象は可能なかぎり実際に現場で再現する」というコンセプトに基づいている。
時間遅延現象を引き起こす劇中の「ボブル空間」の撮影では、ペンをロッド操作でゆっくりと落とし、宙空に浮く物体は針金で固定するなど、SF的な現象が実際に現場で撮影されたという。
特技監督・青井泰輔の指揮のもと描かれる物語中盤の大規模な都市破壊描写も、ただごとではない。
ミニチュアビルを超スローモーション撮影が可能なカメラで撮影することで、これまでにないスケール感を実現した。
また、大型加速器の描写にもミニチュア撮影が駆使されており、迫力と映像美はインディーズ映画の枠を完全に超越している。

『ブラックホールに願いを!』ストーリー西暦2036年、伊勢田みゆき(米澤成美)は人工ブラックホールの研究を行う「人工縮退研究所」の総務部に勤めている。
緊張すると声が出なくなってしまう場面緘黙(かんもく)症を患う伊勢田だが、研究員として働く准教授・吉住あおい(吉見茉莉奈)に憧れており、何とか彼女と話したいと日々トライ&エラーを繰り返している。
ある朝、研究所は見えない時間の壁「ボブル空間」に覆われ、山之辺(斎藤陸)ら住吉研究室の数人、たまたま空間の外にいた星教授(濱津隆之)や伊勢田らを除いて、行動不能に陥る。
そこに届いたのは「悪魔博士」と呼ばれる孤高の研究者・赤城容子教授(鳥居みゆき)からの犯行予告動画で、3時間後に時間犯罪を起こして人類に復讐するという。
一行は、事件解決のカギを握る吉住を、そして世界を救うことは出来るのか――。

映像制作者集団「STUDIO MOVES」が6年を掛けて世に放つ渾身の空想特撮映画『ブラックホールに願いを!』には、怪獣は出ない。
ブラックホールを扱う作品だが、G細胞が恒星爆縮を経て地球に帰還したりする物語ではない。
だが、ヒーローは登場する。

主演を務めた米澤成美は、緘黙症に悩む総務部の女性という何とも難しい役どころを見事に演じ切った。
『スリッパと真夏の月』や『サイキッカーZ』といったSFコメディだけでなく、『つむぎのラジオ』のようにシリアスで繊細な演技も熟せる米澤だからこそ。

もう一人の主人公・吉見茉莉奈は、時間犯罪テロに立ち向かう若き天才研究者という難役を丁寧に表現した。
『センターライン』シリーズ、『啄む嘴』で主演を張った経験が間違いなく本作にも生きており、また『BY THE WAY -波乱万丈-』のように吉見はSF作品にもよく似合う。
ふたりの共演は、『サイキッカーZ』以来となる。

『河童の女』の斎藤陸、『カメラを止めるな!』『キングダム』シリーズの濱津隆之ら共演陣の好演も観逃がせない。
『シン・ゴジラ』の三輪江一、『仮面ライダーx仮面ライダーウィザード&フォーゼMOVIE大戦』のキャッチャー中澤、「ウルトラマンオーブ」のねりお弘晃、そして金子修介監督、雨宮慶太監督の作品には欠かせない螢雪次朗と、特撮ファンならずとも思わず唸るキャスティングにも注目だ。

また、地球滅亡を狙う悪魔博士・赤城容子を演じるのは、「ヒットエンドラン」でお馴染みのお笑い芸人鳥居みゆき。
『時間巡りエブリデイ』『全員死刑』など女優としても高い評価を受ける鳥居は、本作でもエキセントリックなだけではない存在感で光り輝く。

劇中、次々と発生するボブル空間によって崩壊していく世界は、様々な天災、人災により荒廃する実社会の延長線上にある世界線と言える。
そして、次々と分断を浮かび上がらせる「壁が可視化された世界」は、まさに私たちが暮らす世界の縮図である。
世界の危機に立ち向かうのは、普通に市井を生きる人たちや、矛盾や葛藤、ハンデを背負った主人公だ。
迫真の特撮が描き出すディストピアで覚束なげに立ち上がるヒーローたちに、胸を熱くさせられる。

8年間燃やし続けた特撮愛の結晶『ブラックホールに願いを!』がもたらす未曽有の鑑賞体験を、是非とも確かめてほしい。
あなたのその目で、劇場で――!
『ブラックホールに願いを!』
2025年12月6日(土)より池袋シネマ・ロサ
ほか全国順次公開
米澤成美 吉見茉莉奈
斎藤陸 濱津隆之 キャッチャー中澤 ねりお弘晃
三輪江一 大沢真一郎 星能豊 長万部純 岡崎森馬 浦山佳樹
鳥居みゆき 螢雪次朗
監督・脚本・編集:渡邉聡
特技監督:青井泰輔
『ブラックホールに願いを!』公式サイト
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