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ヤングケアラー……
グリーフケア……
メンタルヘルス……
セクシャルハラスメント……
パワーハラスメント……
貧困……
闇バイト…………

2〜3本……否、列挙した数だけの作品が撮れそうなテーマを一つに盛り込んだ、しかもエンターテインメントとして成立している稀有な映画がある。

それが、2025年10月4日(土)、シネマスコーレ(名古屋市中村区椿町8−12 アートビル 1F)でロードショー初日を迎えた

映画『嬉々な生活』

磯部鉄平監督作品のプロデューサーを務めてきた谷口慈彦監督の劇場デビュー作となるオリジナルストーリーは、社会派のヒューマンドラマでありながら、ブラックユーモアがふんだんに散りばめられた群像劇に仕上がった。

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『嬉々な生活』ストーリー

家族5人の何気ない、だが幸せな日常を写したスマホ動画。
だが、そんな日々は過去の話。
中学2年の長女・嬉々(西口千百合)は、母親が急死してから妹や弟の世話はもちろん、すべての家事を一身に背負う。
最愛の妻を亡くした父・賢介(川本三吉)はコミュニケーション不全となり、毎日をなかば万年床で過ごす。
日々バイトを探し学校を休みがちな嬉々を親友の美優(毛利美緒)は献身的にサポートし、一家は団地に住む世話焼きなご近所の厄介になっている。
そんなある日、嬉々は担任教師だった高妻(渡辺綾子)の不審な行動を目撃してしまう――。

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メンタルの不調、職場でのハラスメント、ヤングケアラーという「今の日本にあふれている問題」を、観客に自分事として痛感させる谷口監督の語り口と演出に目を見張る。

嬉々のクールな眼差しで、舞台となる大阪の団地で様々な人間模様を織りなす不器用でお節介な大人たちが浮き彫りになっていく。
主演の西口千百合は、大らかな人間力で主人公・嬉々の「危機」を演じ、第25回 TAMA NEW WAVEコンペティション部門でベスト女優賞を受賞した。

さらに本作は、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2024にて、審査員特別賞とSKIPアワードをW受賞するという快挙を成し遂げている。
谷口監督の脚本、演出は、矛盾だらけの人間を的確な距離をもって描き出し、「人間をしっかり描けば自ずと社会が浮かび上がってくるということを証明している」と評価された。

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10月4日16:50の回、上映後に登壇したのは、

谷口慈彦監督
西口千百合(主演:佐久間嬉々役)さん
川本三吉(佐久間賢介 役)さん

三人は制作の裏話や作品に込めた想いを語り、重いテーマを扱いつつも軽妙なトークに観客は本編同様に心を奪われた。



さて、『嬉々な生活』で特に絶賛されているのが、ラストシークエンス。
「圧巻」「必見」 と評されるラストシーン、筆者も激しく心を揺り動かされた。

日常と非日常とが紙一重であることを知らしめ、それでも確かに何かが芽吹こうとする気配をとらえた、家族ドラマの傑作。

この「心が張り裂けるほどの愛に満ちた人生」 の結末を、どうぞ、お観逃しなきよう――。

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映画『嬉々な生活』公式サイト

https://www.kikinaseikatsu.com/