
今回お届けするのは、2025年10月3日(金)より全国ロードショーとなる、
映画
『アフター・ザ・クエイク』
あの村上春樹の短編連作「神の子どもたちはみな踊る」を映像化した本作は、2025年4月放送のNHKドラマ「地震のあとで」と物語を共有する。
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監督を務めるのは、連続テレビ小説「あまちゃん」や大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」などを手掛け、天災を描き続けてきた井上剛。
刊行から25年の時を経て今なお私たちの心を揺さぶり続ける村上ワールドの映像化に挑んだ本作。
その真意に迫る、共同インタビューの模様をお届けする。

井上監督は、阪神・淡路大震災から30年となる今年、プロデューサーが持ってきた原作と「再会した」という。
15~20年前に読んだ本を再び読み直した際、監督は「すごく現代性を感じた」という。
まるで「ずっと続いているお話のように」、時代を超えて「我々に迫ってくる話」に見えてくる、と。
だからこそ、原作の95年をそのまま描くのではなく、時系列を組み替えて「我々に近づいてくるようなお話」を一本の映画の中で見せたかったと語った。
岡田将生さん、渡辺大知さん、鳴海唯さん、佐藤浩市さん演じる登場人物全員に投影されている「空っぽ」という言葉は、本作の非常に重要なテーマ。
監督はこの「文学的な」言葉に、何かを入れられる「自由がある」可能性としての「空っぽ」があるのではないか、と語る。
普通のドラマや映画ではあまり出てこないモチーフだけに、表現には苦労もしたという。
映画版で新たに加わった「赤い廊下」のシーンには、監督の深いメッセージが込められている。
地下にある「人間の無意識下にあるもの」をビジュアル化したものだそうで、劇中で描かれる地下鉄の行き先がこの赤い廊下であり、「みみずくんのお腹の中」に見えてもいいと監督は語る。
そこは人の悪意や痛みを吸収して膨らんでいる場所であり、そこに様々な登場人物がたどり着く、というイメージだ。
音楽を担当したのは、井上監督が絶大な信頼を寄せる大友良英氏。
ドラマ版とは異なるアプローチで、映画では観客に「体感してもらうため」の鳴らし方をしているという。
当初大友氏は「人工音しか鳴らない」と提案していたが、第3章で渡辺大知さん演じる善也がグランドで踊るシーンの撮影時に、大友氏がギターとアンプ、スピーカーを持ち込み、その場で2時間近く即興で演奏したという。
その場で生まれた音から初めて劇伴が形作られたそうで、この経験が「一つ一つの楽器が際立つような」かけ方になった理由かもしれない、と監督は振り返った。
『アフター・ザ・クエイク』に込められた「希望」について、監督は登場人物たちが「生きることを諦めずに次へと踏み出そうとしている」点を挙げた。
彼らのその後は分からないが、その時点では皆「次がある」という希望を持ちながら生きていると感じている、と。
監督は、この映画は主人公4人のエピソードを取り上げたに過ぎず、観る人それぞれの間に、それぞれの物語があるはずだと強調する。
「自分だったらどんな物語があるんだろう」と想像してもらいたい、と語った。
先の見えない時代に「からっぽ」になってしまった私たちに、自分を取り戻すための物語を提示する映画『アフター・ザ・クエイク』。
1995年、2011年、2020年、2025年……様々な「揺れのあと」を描き、村上春樹の原作とはまた違ったマジックリアリズムを描き出す。
私たちは一体どう「みみずくん」と対峙すれば良いのだろうか?
『アフター・ザ・クエイク』は、大切なものを見つけ出すための希望の物語だ。
2025年10月3日(金)より、テアトル新宿、シネスイッチ銀座、ミッドランドスクエアシネマほか全国ロードショー。
この“揺れ”を、ぜひ劇場で体感してほしい――。
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