
2025年9月20日(土)、シネマスコーレ(名古屋市中村区椿町8-12 アートビル1階)にて、
『はらむひとびと』
初日舞台挨拶が開催された。
本作は、企画・プロデュース・主演を務めた相馬有紀実が、制作期間中に妊活・妊娠・出産・育児を経験した渾身の一作。
スクリーンからあふれ出すのは、「20年の俳優人生のすべてを注ぎ込んだ」という覚悟だ。
監督・脚本は、Creepy NutsのMVなどを手掛け、CMディレクターとしても活躍する中嶋駿介監督。
「痛み」をテーマに描き続けてきた中嶋もまた、新たな覚悟を持って本作に挑んだ。
また、「ブラックファミリア」などテレビドラマを中心に活躍する富安美尋が共同脚本を手掛けた。
相馬有紀実と共にW主演を務めるのは、『この日々が凪いだら』の瀬戸かほ。
『クレマチスの窓辺』『きまぐれ』そして『NEW RELIGION』(10月3日(金)~ミッドランドスクエアシネマ公開)と、主演作が続く。
『三人夫婦』の浅香航大、「海に眠るダイヤモンド」の前原瑞樹が「男性代表」として出演しているのも観逃がせない。
『茶飲友達』の磯西真喜の好演も光る。
『はらむひとびと』は、「孕む」……自身に何かを抱える人々の群像劇だ。
観る者は、現代社会が抱える「生きづらさ」と生物として根源的に持つ「命の尊さ」について否応なく自問、勘考することになる。

『はらむひとびと』ストーリー亜湖(相馬有紀実)と郁美(瀬戸かほ)は、高校時代の同級生。
3歳の息子・ゆうりを育てる亜湖(相馬有紀実)は、育児はもちろん家事に無頓着な夫・雅人(前原瑞樹)に頼ることも出来ず、育児ノイローゼに陥っている。
広告会社に勤める郁美(瀬戸かほ)は予期せぬ妊娠中で、子供を拒否している有名コピーライターである夫・真山俊介(浅香航大)との関係に思い悩んでいる。
SNSがきっかけで偶然再会した二人は互いの境遇に共感し、郁美は亜湖の子育てを手伝うことで育児に向き合うことを決意する。
パートタイムの仕事を始め、多忙な日常にも心の拠りどころが戻ってきた、亜湖。
子供を産み、育てることの現実に直面し、少しずつ心境に変化が出てきた、郁美。
そんな中、幼稚園でゆうりが発熱したことで、亜湖は義母(磯西真喜)に厳しく叱責されてしまう。
「もう失敗できない」と気負い直す亜湖と郁美だが、更なる大事件が発生してしまう――。
今回シネマスコーレでは、中嶋駿介監督、瀬戸かほ主演の短編映画
『empty』
も同時上映され、同テーマにも拘わらず全く違う作劇に衝撃を受けた。
上映後のシネマスコーレは、「痛み」と「希望」の狭間で揺れ動く観客の感情で場内の空気が渦を巻いているようだった。

舞台挨拶に登壇したのは、監督・脚本の中嶋駿介監督、企画・プロデュース・主演の相馬有紀実さん、主演の瀬戸かほさん。
三人は、制作の裏側や作品に込めた熱い想いを語り、一言ひとこと深まっていく『はらむひとびと』の世界を、観客はかたずを飲んで聴き入った。
ちなみに、写真で向かって右の中嶋監督は目を閉じているが、実はこちらのポーズがデフォルトだとか。
現代社会に生きる私たちに、避けては通れない普遍的なテーマを突きつけるこの作品は、観る者の心に深い問いを投げかける。
この「世界」に触れた貴方は、どんな「はらむひとびと」と出会うのだろうか。
胎動する生命と、日常の絶望、そして葛藤する希望……どうぞ、お観逃しなきよう――。



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