
岐阜の地から、若き新星が放つ青春映画が誕生した。
新人・清水友翔監督の初長編『僕の中に咲く花火』だ。
清水監督は、高校を中退し17歳で渡米し映画制作を学んだという異色の経歴を持つ。
なんと、ハリウッドで受賞経験を持つ日本人最年少監督なのだとか。
プロデューサーを務めるのは、清水監督と同じくアメリカで映画を学んだ経験を持つ落合賢。
落合プロデューサーは、清水監督の熱意に心を揺さぶられプロデュースを決意したとか。
「伝えたいメッセージを強く持ち、それを形にするために人を集め、お金を集め、日夜一生懸命になれる23歳が今の日本にどれだけいるのか」と言う。

清水友翔監督は、死の概念を受け入れられないという苦悩を持ち続けているそうで、これが『僕の中に咲く花火』のテーマに直結している。
監督にとって、「自殺」は「自己犠牲という一つの優しさ」だという。
『僕の中に咲く花火』には、自殺を考えている人々に寄り添い、「お守り」として生きる糧にしてほしいという清水監督の強い願いが込められているのだ。
自身の経験も交えたというオリジナル脚本は、物語の舞台もタイトルも姿を変え、最終的には20稿以上を重ねたという。

『僕の中に咲く花火』ストーリー高校三年生の大倉稔(安部伊織)は、幼い頃に母を亡くしている。
それが影響してか、大倉家では家族の関係がどこかぎこちない。
滅多に帰らない父・剛(加藤雅也)とは会話もなく、妹・鈴(角心菜)は不登校で部屋にこもりがちだ。
稔は漠然とした死への恐怖を抱き続けており、周囲に心を開けない。
夏、稔に二つの転機が訪れる。
一つは、翳のある謎めいた年上の女性・水石朱里(葵うたの)との出会い。
そしてもう一つ、死への恐怖を取り去ってくれそうな人物が岐阜にやってくるというのだが――。

主人公・大倉稔を演じるのは、これが映画初主演となる安部伊織。
好奇心と孤独感を併せもつ稔という難役を見事にこなした安部、絶望と恐怖から狂気に走るシーンは圧巻の一言だ。

『タイムマシンガール』の葵うたのが演じる水石朱里は、稔と同じように孤独や絶望を抱えるが強かな生命力も同居するヒロイン。
葵が表現する青い炎のような美しさは、強さと弱さがシームレスなグラデーションを見せる。

稔の妹・鈴は、母親を亡くし誰にも甘えられないでいる。
演じる『ブルーを笑えるその日まで』の角心菜は、壁一枚を隔てただけの生と死を、丁寧に、繊細に演じ切った。

93分の本作は全編を岐阜でロケ敢行し、豊かな飛騨地方の自然が他府県出身の主要キャスト陣と対峙する構図となっている。
これは人生に居場所を見つけられない稔やアウトサイダーの朱里の生き様を、撮影現場という環境自体が表現しているようで興味深い。

そして、剛役を務めた名優・加藤雅也、岐阜出身の桜木梨奈、愛知出身の渡辺哲らベテラン勢が確りと画を支える。

本作は、18歳の少年・大倉稔のひと夏の物語を描く。
まぎれもない青春映画だが、稔が直視するのは「死」である。
死への好奇心であり、恐怖感であり、絶望であり、虚無感である。
生きる者は、他者の死を以てしか死を経験することができないのだ。
そして、私たちは皆ひとしく死亡率100%である。
とかく私たちは「死」や「自殺」という重いテーマから目を背けがちだ。
しかし『僕の中に咲く花火』はその常識を覆し、死を身近な問題として直視するよう迫る。
大切な人の死を経験し、どう向き合い、どう生きるか、その問いを観客一人ひとりに投げかける。
『僕の中に咲く花火』は、単なる青春映画ではない。
青春を生きる者には、生きるヒントを与えてくれる。
青春を過ぎた者には、避けて通れない苦悩に寄り添う。
清水友翔監督が目指した「お守りのような映画」は、今を生きる者に寄り添う伴走者のような存在として結実した。
伴走者は、直接手を貸してはくれない。
だが、常に一緒にいてくれる――。

映画『僕の中に咲く花火』
8/22(金)~先行ロードショー愛知:
センチュリーシネマ/ユナイテッド・シネマ稲沢/ユナイテッド・シネマ阿久比/ローソン・ユナイテッドシネマ岡崎/ユナイテッド・シネマ豊橋18
岐阜:
CINEX/TOHOシネマズ岐阜/TOHOシネマズモレラ岐阜/大垣コロナシネマワールド
8/30(土)~全国順次ロードショー
ユーロスペース ほか
安部伊織 葵うたの 角心菜 渡辺哲 / 加藤雅也
水野千春 佐藤菜奈子 平川貴彬 米本学仁 桜木梨奈 田中遥琉 古澤花捺 國元なつき
【製作】ファイアワークスLLP 【制作】フォトシンス
【制作協力】Arct’4 Film 清水友翔監督作品「僕の中に咲く花火」
【キャスティングディレクター】髙野力哉 【監督補】鐘江稔 【衣装】宮本まさ江 【音楽】伊藤明日香
【編集】和田剛 【美術監督】山下修侍 【撮影監督】有近るい 【録音】飴田秀彦
【インティマシーコーディネーター】浅田智穂 【ヘア・メイク】奈央 【整音】高木創
【音響効果】仙崎ケヴィン 阿南美佳 【VFX】ヴィナメーション 【助監督】石原壮一郎
【エグゼクティブプロデューサー】竹内力也 世古哲久 丸山大知 下野泰輔 山本貴士
【ラインプロデューサー】高木宏通 【プロデューサー】落合賢
【脚本・監督】清水友翔
【配給】彩プロ
2025/日本/ビスタ/93分/PG12
©ファイアワークスLLP
映画『僕の中に咲く花火』公式サイト
https://bokuhana.ayapro.ne.jp/
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