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【ファンタジア国際映画祭】最優秀長編アニメーション賞受賞など様々な映画祭で絶賛され、日本での一般公開もミニシアター部門で1位を獲得するなど大盛況となった映画『JUNK HEAD』(2021年)。
ギレルモ・デル・トロ監督からも称賛された堀貴秀監督は、7年という歳月を費やし『JUNK HEAD』を撮りあげた。
企画、製作、脚本、撮影、美術、照明、編集……なんと声優までほとんど一人で、しかも独学だというから驚くよりほかにない。
ストップモーションアニメという手法にキモカワなキャラクター達が絶妙にマッチし、緻密な設定のハードSFを下地に描かれたディストピアは、映画ファンだけでなく多くの観客を魅了した。

『JUNK HEAD』から4年、全世界待望の新作

『JUNK WORLD』

が、いよいよ6月13日(金)より公開されている。

本作は、『JUNK HEAD』の世界観をさらに進化・深化させた直接の続編。堀貴秀監督によると、三部作の2作目に当たる。
前作から1042年前の「失われた未来の物語」だ。

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『JUNK WORLD』ストーリー
開発用の労働力として人間により生み出された人工生命体「マリガン」は、人類に反旗を翻し、地下世界の支配権を手中に収めた。
120年続いた人類とマリガンとの戦いの停戦協定から280年後、人類は地上に留まり、マリガンが支配する地下世界は地球規模に広がっている。
地下都市「カープバール」で起きた異変を調査するため、人間とマリガンとの共同チームが組織されるが、作戦開始直前にチームが集結した緩衝地帯「中の島」が何者かに襲われる。
生き残ったマリガンチームの隊長ダンテによると、襲撃してきたのはマリガンのカルト教団「ギュラ教」。
どうやらギュラ教の目的は、希少種である人間の女性、すなわち人間チームの隊長トリスだという。
激しい攻防戦の中、トリスの護衛ロボット・ロビンは、時間を超えた壮大な作戦を実行するのだが――。

『JUNK WORLD』でも、監督、脚本、撮影、照明、編集など、多くの役割を担当している堀貴秀監督。

6月15日(日)ミッドランドスクエアシネマ2(名古屋市中村区名駅4-11-27シンフォニー豊田ビル2F)で開催された堀貴秀監督による舞台挨拶を取材した。

MCを務める鳥羽洋典プロデューサーが言うには、満席と聞いた堀貴秀監督は
「お客様は人間じゃないんじゃないか?マリガンやギュラ教が紛れ込んでいるのではないか?」
と恐れているという。
堀監督を安心させるため、観客は拍手の代わりに「ピロピロ」で監督を迎えた。

「なかなか気合の入ったピロピロじゃないか」

堀貴秀監督の第一声に、客席からは大きな笑い声が飛んだ。

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堀監督は、本作の日本語吹き替え版はプロの役者は起用せず、スタッフのみで収録されたことを明かした。
監督自身も、ナレーション、子ロビン、小さな怪獣のキャラクターなど、多くの役を担当したとのこと。
堀監督は字幕版では情報量が大幅に制限されるため、まず日本語版での鑑賞を希望しているそう。
前作『JUNK HEAD』の「ゴニョゴニョ」が意図せず成功してしまったため、今回の『JUNK WORLD』でも「ゴニョゴニョ版」(字幕版)が先に観られることに焦りを感じていると語った。

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堀監督はかつて名古屋に約半年間住んでいたそうで、栄のホストクラブで皿洗いをしていたとか。
ところが一時的にフロアにホストとして出ることになってしまい、人生で一番辛い仕事だったと振り返った。

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『JUNK HEAD』制作時はアナログ手法(粘土や石膏)が中心だったが、『JUNK WORLD』では技術革新により3Dプリンターを本格的に導入。
堀監督は初めて3Dプリンターの仕組みから学び、30台以上を導入してピーク時は全台稼働させていたそう。
大型の造形物一つに2~3日かかることもあり、停電による失敗など、試行錯誤の連続だったと語った。
制作チームは『JUNK HEAD』の2~3人から『JUNK WORLD』では6人に増員されたそうで、経験豊富なプロではなく、熱意とセンスがあり、移住をいとわない若手を採用し、3D制作も手探りで習得しながら共に完成させたことを明かした。
3DCGを導入しつつも、人間が一コマ一コマ演技し、それを人形にトレースして動かすという従来のコマ撮り手法は変わっておらず、これが作品の強みでもあると語った。

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劇中に登場する飛行機などの乗り物やキャラクターの造形物は、撮影に映らない部分まで精巧に作られており、変形機能を持つものも作られたが、本編では使用されなかった機能も多かったとのこと。
これらの造形物は、作品のコスパの良さを示すものであり、将来的には展示やオークションで販売することでファンが細部まで楽しめる機会を提供したいと考えていると述べた。
鳥羽プロデューサーとの話の中で、コマ撮り映画は「物を作る」ことから始まるため、自身で作品を作り、その成果物(フィルムだけでなく造形物やパンフレットなどのグッズも含む)を収益化し、その資金で次の作品を製作するという独立したスタイルを堀監督は重視しているという。
これは、外部からの出資に頼らず、自由に映画を作り続けるための戦略であり、『JUNK HEAD』のパンフレットが分厚い設定資料集のような内容であったり、グッズ販売やクラウドファンディングも全て、続編へと繋げるための試みであると説明した。

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そう、続編。
三部作の第3作である。

タイトルは、

『JUNK END』

だという。

堀貴秀監督に、YAMIKEN作品に、今後も目が離せなくなりそうだ––!

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映画『JUNK WORLD』公式サイト
https://junkworld-movie.com/