
東京・大久保のアイヌ料理店「ハルコㇿ(HaruKor)」では、様々な伝統的アイヌ料理が並ぶ。
キトピロ(行者にんにく)。
ユㇰ(鹿肉の炙り)。
オハウ(汁物)。
ルイベ(冷凍した刺身)。
イモシト(芋団子)……
そして、店主であるアイヌ文化アドバイザー・宇佐照代さんの傍には、大勢の人たちが集う。
照代さんの母・タミエさん等大勢のアイヌ民族を撮影した写真家、宇井眞紀子さん。
朝鮮・韓国民謡奏者で在日コリアン2世の、黄秀彦さん。
評論家で、民族問題について研究、著作を持つ、太田昌国さん。
東日本大震災以降、故郷・青森とアイヌとの関係性に関心を寄せる美術家、奈良美智さん。
カムイノミ祭司にして、自らを「縄文人」と名乗る造形作家、平田篤史さん……

『夜間もやってる保育園』(17)『島にて』(19)『ケアを紡いで』(22)など上質で被写体に寄り添うドキュメンタリー作品を多数手がけた大宮浩一監督が丹念に写し撮ったのは、照代さんの家族や「ハルコㇿ」に集まる人々の証言から見えてくる、無かったことにされてきた歴史であり、多様で豊かな社会への渇望である。
2025年4月5日(土)ナゴヤキネマ・ノイ(名古屋市千種区今池)で開催された大宮浩一監督、宇佐照代さんによる舞台挨拶を取材した。
大宮浩一監督
照代さんと講演会で初めて会った3年前、その場でもう映画にすると決めて、お話をしました。
照代さんのお話と、ムックリ、トンコリの響きを皆さんと共有したいという思いでした。
撮影を始めて2週間後にウクライナ(侵攻)が始まってしまいました。編集中にはガザが戦火になりました。そんな時代背景を意識せざるを得なかったところはあります。

宇佐照代
最初は(映画の話を聞いて)驚きましたけど、祖母のこと、母のこと、関東にいるアイヌのこと……自分では出来ない記録として残すことが出来たら嬉しいという思いでした。
終わってからどうなるかなんて全然考えてもいなかったんですけど、こんな全国に飛び回りながらご一緒するなんて予想もしていなかったです。何なら出来上がってからの方が忙しいような(笑)。
何回も数年間のことを振り返りながら、あらためてたくさんの素晴らしい人たちが周りにいて幸せ者だと思います。それを感じさせていただいたのは本当に感謝です。ありがとうございます。


ここで、宇佐照代さんによるムックリ(口琴)、トンコリ(弦楽器)の演奏、歌唱が披露された。
客席で観ていた照代さんの娘・ルイノさんが輪唱する嬉しいサプライズも。



ナゴヤキネマ・ノイでは4月6日(日)も舞台挨拶が開催されるが、大宮浩一監督、宇佐照代さんだけでなく、ルイノさんも登壇する予定とか。
ちなみに、「ルイノ」とはアイヌ語で「強く」「激しく」という意味というーー。


『そして、アイヌ』公式サイトhttps://soshite-ainu.com/
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