映画人・足立正生ほど稀有な人生を送る者は少ない。

学生時代の新映画研究会、VAN映画科学研究所、そして実験映画製作上映グループ「フィルム・アンデパンダン」など様々な団体の主要メンバーとして名を馳せ、若松プロダクションでは監督作品の他、若松孝二監督作品の脚本を多数担当した、足立正生。
日本赤軍に身を投じ、カンヌ映画祭(1971年)からの帰途、若松孝二と共にパレスチナ解放人民戦線(PFLP)に合流し、ドキュメンタリー映画『赤軍-PFLP・世界戦争宣言』を撮影・製作。
1974年、再度パレスチナに赴き、重信房子らと日本赤軍を創設。
1997年にレバノンで逮捕・服役され、2000年の帰国後も映画監督として活動している。

そんな足立正生監督が最新作で主人公に据えたのは、実在の人物である桐島聡

死者8人、負傷者約380人という三菱重工ビル爆破事件(1974年)など社会を震撼させた東アジア反日武装戦線、構成グループの一つ「さそり」の元メンバーである。
連続企業爆破事件で重要指名手配された桐島は「内田洋」と名を変え、約49年に亘る逃亡の末、救急搬送された病院で病死した。

足立正生監督の前作『Revolution+1』は安倍晋三元首相銃撃犯を描くという問題作で、2023年3月の公開。
襲撃事件が起きたのは2022年7月8日であるから、制作期間の短さは驚愕というほかない。

そして、最新作のロードショー公開は、2025年3月15日(土)
桐島聡の死去が2024年1月29日であるから、やはり驚嘆のスピード制作だ。

タイトルは、

『逃走』

映画人にしてアナーキスト、足立正生監督の情熱は、燃え滾り続けている。

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『逃走』ストーリー

1974年、新左翼過激派集団「東アジア反日武装戦線」は、三菱重工ビル爆破で死者を出すというミスを犯す。
所属員たちが次々と地下に潜る中、構成グループ「さそり」のメンバーである桐島聡(杉田雷麟)も逃亡生活を余儀なくされ
住込みの日雇労働者として職場や住居を転々とする桐島は、やがて「内田洋」と名乗り神奈川県藤沢市の工務店で働き始める。
そして、2024年。70歳となった彼(古舘寛治)は病に倒れ、担ぎ込まれた病院で末期がんを宣告される――。

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主人公には、足立監督みずからが出演を熱望したという古舘寛治
国内外を問わず愛される個性派俳優にして名バイプレイヤー古舘は、「内田洋」こと桐島聡の人生についての謎に一つの解を投じる。
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古舘と共にそんな「解」の一翼を担う大役を務めたのが、もう一人。
青年期の桐島聡を演じた杉田雷麟だ。
周囲から心を閉ざす「内田」と、手配写真で人懐こい笑顔を浮かべる桐島、その狭間を揺蕩うような好演を魅せる。
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脇を固める俳優陣も、個性派ぞろいで観逃がせない。
桐島の心の支えである宇賀神寿一に、タモト清嵐
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「桐島」の、「内田」の、日常を彩る共演陣は、吉岡睦雄松浦祐也川瀬陽太足立智充木村知貴
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そして、謎のヒロインに中村映里子『逃走』sub13

テロルを肯定する気はさらさらないし、映画で描かれる桐島像が真実とは思わない。
だが、『逃走』を観たなら桐島聡という人間に好感を抱いてしまう気持ちに抗うことは出来ないであろう。『逃走』sub5

何十年も交番に貼られた手配写真の笑顔に、思わず「頑張れ」と呼びかけた気持ちが想い起こされるだろう。

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劇中で何度も耳にする「逃走」という言葉、その幾つかは「闘争」なのだ。
革命闘争に生涯を捧げた桐島聡と、足立正生監督の生き様とが、二重の写しとなり作品を覆う。

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足立正生の闘争は、未だ了わらない――。

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映画『逃走』

2025年3月15日(土)より
ユーロスペース
2025年3月29日(土)
より
シネマスコーレ
ほか全国順次公開

監督・脚本:足立正生

出演:
古舘寛治
杉田雷麟 タモト清嵐 吉岡睦雄 松浦祐也 川瀬陽太 足立智充  中村映里子

遊屋慎太郎 小橋川建 神嶋里花 永瀬未留 さいとうなり 伊島空 東龍之介 神田 青
瓜生和成 宮部純子 大川裕明 小水たいが 浦山佳樹 枝元萌 木村知貴
内田周作 佐藤五郎 岩瀬亮 輝 有子 信太昌之 大谷亮介

企画:足立組 
エグゼクティブプロデューサー:平野悠 統括プロデュ―サー:小林三四郎 
アソシエイトプロデュ―サー:加藤梅造 ラインプロデューサー:藤原恵美子 
音楽:大友良英 撮影監督:山崎裕 録音:大竹修二 美術:黒川通利 スタイリスト:網野正和 
ヘアメイク:清水美穂 制作:渡辺美穂 編集:蛭田智子 助監督:鎌田義孝 山嵜晋平 スチール:西垣内牧子 
題字:赤松陽構造 キャスティング:新井康太 企画協力:寺脇研 宣伝デザイン:100KG
字幕制作:スタンスカンパニー 英語字幕:桜本有三 挿入曲:「DANCING古事記」(山下洋輔トリオ)

【2025年|日本|DCP|5.1ch|114分】(英題:ESCAPE)

©「逃走」制作プロジェクト2025
 
配給・制作:太秦
製作:LOFT CINEMA 太秦 足立組

『逃走』公式サイト

https://kirishima-tousou.com/