THE RIGHT MANサブ1

人間は、ヒトというものは、自身の生涯に価値を求めたがる。
ヒト以外の生き物の思考(?)は知り様がないので、実はありとあらゆる生物に共通なのかもしれないが……
知る由もないので、少なくとも、ヒトは。

例えば死に直面した人間は、自身の人生を反芻し、とかく「答え合わせ」をしたがるものだ。

これは古今東西を問わないようで、西洋の宗教には「最後の審判」という考え方があるし、仏教でも閻魔大王は浄玻璃鏡で亡者を裁くとされる。

映画の世界でも「人生の答え合わせ」をテーマにした作品には数多の名作がある。
真っ先に浮かぶのは、フランク・キャプラ監督の『素晴らしき哉、人生!』。
邦画代表というと、やはり黒澤明監督『生きる』か。
余談だが、台詞の聴き取りが唯一の難点である黒澤映画において、『生きる』は何故か聴きやすい。
近作でも、ウベルト・パゾリーニ監督『おみおくりの作法』、武正晴監督『EDEN』などの名作がある。

人は誰しも、人生の価値を自問しながら、生きるものなのだ。

そんな「人生の答え合わせ」映画に、もう一つ心に刻んでおきたい傑作が生まれた。

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宅間孝行監督
『THE RIGHT MAN 正義の男』


渋谷ユーロスペースで、2月1日(土)より公開。
全国順次ロードショーとなる。

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『THE RIGHT MAN 正義の男』ストーリー

中村正義(金田明夫)は、正しいことしか出来ない男。
困った人を見かけると放っておけず、落とし物を素通りできず、歩きタバコや乗車中のマナー違反は注意せずにはいられない。
だが、中村の貫いた正義は、必ずトラブルに繋がってしまうのだーー。
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演劇プロジェクト「TAKUMA FESTIVAL JAPAN(タクフェス)」主宰、俳優・演出家・脚本家とマルチに才能を発揮する宅間孝行
三上博史主演の映画『LOVEHOTELに於ける情事とPLANの涯て』(19)では監督・脚本を務め、映画ファン、演劇ファンに留まらない多くの観客を集めた。

そんな宅間孝行が全幅の信頼を寄せる俳優・金田明夫を主演に、自身が監督・脚本を務めた今作『THE RIGHT MAN 正義の男』は、一風変わった映画だ。
なんと21篇の短編映画を集めたオムニバスの体裁をとっており、上映時間も61分。
長編というより、中編映画の尺である。

それぞれ3分前後のショートムービーがテンポよく展開する上、基本的にはコメディテイストで物語は進む。

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出ずっぱりの主人公・金田明夫は、飽きさせることなく小気味よい会話劇を見せる。
そんな金田と、浜谷健司(ハマカーン)、三戸なつめやまもとまさみモト冬樹中村玉緒ら豪華共演陣が、強烈な化学反応を生み出す。

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主人公・中村は、正しい行為を貫くものの、正義を押し付ける人間ではない。
正しい(と自分が思う)ことしか出来ない自分自身に悩みつつ、正義を行使する男だ。
使い古された言葉だが、正義の対義語は別の正義なのだ。

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だからこそ、彼もまた「人生の答え合わせ」を求める。
コメディタッチの小さなエピソードの積み重ねでは見過ごされてしまいそうなアイロニー、そしてペーソスが、丁寧に繰り返されるショートムービーだからこそジワジワと観る者の胸に沁みる。

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情報時代だからこそ、自己実現が出来ない皮肉な世相の現代社会。
ほんの一寸でも出過ぎた杭は打たれ、思いも寄らない外野から「自己顕示欲」なる流行りコトバが矢鱈と浴びせ掛けられる。
世の中が便利になればなるほど、私たちの生活はどんどん不自由になる矛盾。

だからこそ、せめて映画の中では問うてみたいではないか。
自分の正義は、異端なのか?
自分の人生に、価値はあるのか?

縁を結んだ人々に、いったい何と名付けよう?
中村正義は……そして、あなたはーー?

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映画『THE RIGHT MAN 正義の男』

2月1日(土)〜
ユーロスペース
2月7日(金)~
ミッドランドスクエア シネマ
ミッドランドシネマ名古屋空港


『THE RIGHT MAN 正義の男』公式サイト

https://the-rightman.com/
©映像制作リアン