
下向拓生監督による「平成39年 サーガ」最新作にして、「INTER::FACE 三部作」最終話
『INTER::FACE
知能機械犯罪公訴部
faith』
いよいよ2月7日(金)より劇場公開となる。
1月10日(金)~
『INTER::FACE 知能機械犯罪公訴部 ペルソナ』
1月24日(金)~
『INTER::FACE 知能機械犯罪公訴部 名前のない詩』
2月7日(金)~
『INTER::FACE 知能機械犯罪公訴部 faith』
居並ぶ「INTER::FACE 三部作」に、当シリーズへの注目度が窺い知れる。
今後全国の映画館へも順次波及していくロードショーは、まさに令和7年の台風の目となるだろう。
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『INTER::FACE 知能機械犯罪公訴部 faith』ストーリー
愛知地方検察庁「知能機械犯罪公訴部」の新任検事・米子天々音(吉見茉莉奈)は、同期の検事・三国(長屋和彰)から捜査協力を求められる。先ごろ、前那古乃市長・島崎(津田寛治)と秘書・井舟(大前りょうすけ)が警察に出頭した。
応対した警察官(松林慎司)によると、献金1500万円が銀行口座に入金されたが、政治資金規正法に抵触する金額のため返金したいのだという。
島崎は、過去に市民病院の医療機器の入札について特定業者に便宜を図った疑惑が持たれており、三国検事はこれを突破口に受託収賄容疑の捜査を始めたい思惑があった。
三国からの要請を受け、米子と彼女のデジタルツインである検察官バッジ・テン(澤谷一輝)は、島崎に違法な額を献金した坂梨守人について捜査を始めるが、死亡していた。
米子検事は、坂梨が生前暮らした荒れた部屋で、「人口知能」の声を聴く。
彼(?)は言った、「誰に殺されたのか、調べておきなさい」と――。

今作『faith』は、豪華なキャスト陣、重厚なストーリー、本格的なミステリ要素と、まさに「INTER::FACE 三部作」のラストを飾るのに相応しい映画となっている。

米子天々音役の吉見茉莉奈は、『faith』でも前作に負けぬ劣らぬ輝きを放つ。
米子検事とテン(澤谷一輝)との人馬一体ならぬ「人機一体」の活躍は今作でも健在で、二人の関係性はまさしくシリーズの核となるテーマを帯びている。

また、米子検事のバディともライバルとも言える関係である検事・三国を演じた長屋和彰にもご注目を。
コメディリリーフ・香取剛との凸凹コンビは、今作に血を通わせる存在だ。

凸凹コンビといえば、「INTER::FACE」シリーズのお馴染みは、吉見茉莉奈と大山真絵子……あまね・あべのの「あまあべペア」。
今回、大山真絵子が扮する阿倍野が、大変なピンチに陥ってしまう。

そんな展開は、物語における単なる枝葉末節と見過ごされてしまいそうだが、さに非ず。
「平成39年 サーガ」を通して描かれる「社会が抱える矛盾」が結集したエピソードといえる、重要パートだ。
平成39年は、どうやら私たちの暮らす現実世界に比べ、高度なデジタル社会。
それなのに、文書のデータ化は3割程度しか達成されておらず、米子ら検事たちは未だに証拠書類の山を風呂敷に包んで持ち歩く。
学習型AIが高度に発展し人々は多大な恩恵を享受しているが、AIの研究、運用においての包括的なガイドラインなどを示唆する描写はない。
平成39年の日本では、人間および社会に害をなすAIが例外的に出現した場合、当該AIへの処罰を可能とする法律が「場当たり的に」施行されているのみだ。

ここで、入江崇史が演じる「知能機械犯罪公訴部」部長・小坂部が他部署と兼任しているという設定が生きる。
小坂部検事は、人間を被告とした従来の裁判における学習型AIの活用に興味があるようで、AI自体を訴追する積極的な姿勢は見られない。
平成39年は、AIを被疑者として裁き、目撃者として証言を得ることの是非が問われる過渡期なのだ。
だからこそ、判断できない案件が持ち上がると、専門家のアドバイスを求める。

そのおかげで、過去作のキャストが再登場するという嬉しいサプライズがある。
松本高士の扮する上野芝は協力者というよりゲスト探偵とでもいうべき立ち位置であるし、星能豊、もりとみ舞らも謎解きの重要パートで再登場する。

そして、『ペルソナ』で謎の存在感を放っていた、大前りょうすけが今作『faith』で本領を発揮する。
そして、そして……津田寛治の、ラスボス感たるや……!

『ペルソナ』で味付け程度に思われた島崎と井舟との会話が、『faith』では物語の、ミステリのメインディッシュとなる。
『INTER::FACE』シリーズ通してのレギュラーである松林慎司との会話劇も、見所の一つ。

必ずや過去作を反芻したくなること請け合いなので、まだ鑑賞機会のある今こそ、刮目して観ておくことをお薦めする。
もちろん、U-NEXTで配信中の『センターライン』も含め。
様々な矛盾に満ちた、本シリーズ。
だがしかし、そんな矛盾点、不条理、理不尽さがあるからこそ、重層的で衒学的な物語となっている。
考えてみれば当たり前のことなのかもしれないが、私たちが暮らしている現実社会もまた矛盾に満ちた世界だ。
ならばこそ、高度に作り込まれた「INTER::FACE」の作品世界には大いなる魅力を感じるのだろう。
現実とは少し違うが、私たちの社会と良く似た世界。
下向拓生監督が描き出す「すこし・ふしぎ」なSF世界は、これからも大きく広がっていくに違いない。
ちなみに、「インターフェイス」(interface)とは、そもそも「異質な物の間の接合部分」「境界面」という意味を持つ。
平成39年サーガにおける「人間」と「AI」との境界を行き来する存在、それこそまさしく「INTERFACE」なのだ。
そして……
現実と、物語世界とを自由に縦断する「SF的感覚」を持つ下向拓生監督が、
そして、物語とリアルとを存分に横断する私たち自身もまた、
平成・令和を亘る「INTERFACE」なのだ。
傍観していただけのつもりが、当事者になっている……
「INTERFACE」とは、私であり、あなただ。
私たちはお互い、鏡に映った自分自身を観ているのだーー!

『INTER::FACE 知能機械犯罪公訴部
faith』
2025年2月7日(金)〜
池袋HUMAXシネマズほか
全国順次ロードショー
©2025 INTERFACE
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