
私を含め、とかく当事者でないものは「復興」という言葉を不用意に使いがちだ。
時に希望を込め、そして何かしらの激励を込めて。
災害から立ち上がらんとしている人々の気持ちは、置き去りとなることは少なくない。
それは、被災者の方々に「立ち上がれ」と強いているようにも写る。
「移民」「在日」という言葉は、末尾に「問題」と続けて語られることが多々ある。
やはりそこには、当事者の思いは無視されがちだ。
移民として暮らす人々、その子供たち、そして同じ街で暮らす人々が日々感じていることは。
2025年1月17日(金)ロードショーの映画
『港に灯がともる』
は、そんな忘れがちな視点に寄り添った作品である。

人間社会の最小単位である「家族」が織りなす物語は、紛れもなく現代社会のあり様そのものだ。

『港に灯がとも る』ストーリー
成人式を迎える金子灯(富田望生)は、阪神淡路大震災で大きな被害を受けた神戸・長田で暮らしていた在日コリアンの3世。とはいえ、震災の記憶は無く、在日としても幼い頃から父(甲本雅裕)が語っていたような気持ちは理解できずにいる。
父母(麻生祐未)の離婚、姉・美悠(伊藤万理華)の帰化を巡る問題など、家族には灯が精神を擦り減らすような問題が次々と湧き起こる。
ひとり煩悶し続ける灯は、離れて暮らす父を訪ねるのだがーー。

『港に灯がともる』が映画初主演となる富田望生が、とにかく驚愕の演技を見せる。
熱演とも違う、怪演とも違う……「金子灯」は、確かにいまを生きている。
決してスクリーンの中だけの存在ではない。
私たちと同じ社会を「生きて」いる。

そして、「もう一人の主人公」とも言える甲本雅裕にも目を奪われる。
灯が今を生きるなら、甲本雅裕の一雄は「過去を見せる」。
劇中まったく語られることのない、父の、家族の過去が、はっきりと観る者の脳裏に浮かぶ。

そんなミニマムでありながら重厚な物語を作り上げたのは、連続テレビ小説「カーネーション」「花子とアン」「まんぷく」「カムカムエヴリバディ」大河ドラマ「花燃ゆ」土曜ドラマ「心の傷を癒すということ」など、数々の名ドラマを演出したドラマ番組ディレクター・安達もじり監督。
監督を、そして川島天見と共に脚本を務め、その手腕を遺憾無く発揮した。
今回、そんな安達もじり監督と共に映画『港に灯がともる』を作った、堀之内礼二郎プロデューサーにインタビューすることができた。
NHK在籍時にプロデューサーとして、連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』ドラマ『心の傷を癒すということ』などを担当。
現在は独立して、映画『港に灯がともる』のプロデューサーを務めている。
ひとりの人間が、ひとつの家族が、いくつかの街が、港が、「灯」(ひ)をともさんとしている。
そこに、傍から見る者が、予断を挿むのは止そう。

今年も、1月17日がやってくる。
『港に灯がともる』公開初日は、2025年1月17日(金)。
阪神淡路大震災から、30年が経とうとしているーー。

映 画『港に灯がともる』
1月17日(金)ミッドランドスクエアシネマ
伏見ミリオン座
ほかロードショー
配給:太秦
『港に灯がと もる』公式サイト
https://minatomo117.jp/©Minato Studio 2025
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