大切な人を喪った時、人はいつでも
「不慮の別れ」
と表現する。
それは時として、長寿を全うした高齢者や、長患いの末に亡くなった病人などにも使われる。
傍目からすれば「不慮」という言葉に違和感を覚えるかもしれないが、考えてみれば致し方ないことなのだ。
私たち人類は、遺伝子レベルに変化を嫌う因子が刻まれている。
ムラを形成し社会生活を送ることで生き延びてきた祖先の遺伝子をダイレクトに受け継ぐ現代人のにとって、変化を恐れることこそが生存の最重要事項なのである。
大切な人、愛する家族、かけがえのない者との死別など、想像することすら忌避してしまいたいものだ。
しかし、いや……だからこそ、「不慮の別れ」を経験した者は、想像もつかないほどの悲嘆に暮れる。
そんな状況のことを、英語では「grief」という。
「gravity(重力)」などと同じく、ラテン語の「gravis(重い)」を語源とするそうだ。
「立ち上がれないほど重い痛み」
英語「グリーフ」には、そんな意味が込められている。
それほどまでの悲嘆に暮れている人たちへの援助のことを、「グリーフケア」と呼ぶ。
2025年1月17日(金)より全国公開となる映画
『君の忘れ方』
は、そんなグリーフケアをテーマにした作品だ。

主人公・森下昴を演じるのは、坂東龍汰。
『春に散る』(23/瀬々敬久監督)、『一月の声に歓びを刻め』(24/三島有紀子監督)等、どの出演作も存在感が光るが、意外なことに単独での主演は今作が初とのこと。

そして、ヒロイン・柏原美紀に扮するのは、西野七瀬。
『孤狼の血LEVEL2』(21/白石和彌監督)、『52ヘルツのクジラたち』(24/成島出監督)等、出演を重ねる度に輝きが増している。
ある日、昴は美紀との「不慮の別れ」を経験してしまう。
気丈に構成作家としての仕事を続ける昴を、プロデューサー(森優作)は色々と気遣う。
だが、取材相手であるカウンセラー(風間杜夫)の言葉も、固く心を閉ざす昴には届かない。
昴は母・洋子(南果歩)の勧めに渋々従い、岐阜へと帰郷することになる。
取材先に紹介された牛丸(津田寛治)は、定期的に「グリーフケア」の会を催している。
昴は、そこで最愛の妻を喪った池内(岡田義徳)と出会うーー。

坂東龍汰の演技が、素晴らしい。
熱演でもなければ、怪演でもない。
スクリーンには、「等身大」としか言いようの無い、愛する人を亡くした若者・昴が「生きて」いる。
そして、西野七瀬に目を奪われる。
今作では、大きな武器である表現の一端を半ば封印される演技を強いられた西野であるが、圧巻の存在感を見せつける。

そんな役者たちの輝きの秘密に迫る撮影秘話を、監督・脚本を務めた作道雄監督から聞くことが出来た。
前作『神さまの轍 ―Checkpoint of the life―』でもそうだったが、作道雄監督は、人生の一コマを切り取る……否、「切り撮る」ことに類まれな手腕を発揮する。
そして、切り撮る瞬間は、青春真っ只中の最盛期でもなければ、人生のクライマックスでもない。
作道監督が切り撮るのは、過去でもなく未来でもない、「いま」だ。
「忘れ方」というタイトルに込められているのは、如何すれば忘れられるのか?というハウツー的な意味ではない。
記憶、そして感情が如何に移り変わるのか?を(当事者であるにも拘らず)俯瞰で眺めるからこそ視えてくる様……
『君の忘れ方』では、そんな静謐な心の、魂の動き、揺らぎが丁寧に描かれている。
それは、「グリーフケア」でいちばん大切なことなのだ、きっとーー。

©「君の忘れ方」製作委員会2024
「不慮の別れ」
と表現する。
それは時として、長寿を全うした高齢者や、長患いの末に亡くなった病人などにも使われる。
傍目からすれば「不慮」という言葉に違和感を覚えるかもしれないが、考えてみれば致し方ないことなのだ。
私たち人類は、遺伝子レベルに変化を嫌う因子が刻まれている。
ムラを形成し社会生活を送ることで生き延びてきた祖先の遺伝子をダイレクトに受け継ぐ現代人のにとって、変化を恐れることこそが生存の最重要事項なのである。
大切な人、愛する家族、かけがえのない者との死別など、想像することすら忌避してしまいたいものだ。
しかし、いや……だからこそ、「不慮の別れ」を経験した者は、想像もつかないほどの悲嘆に暮れる。
そんな状況のことを、英語では「grief」という。
「gravity(重力)」などと同じく、ラテン語の「gravis(重い)」を語源とするそうだ。
「立ち上がれないほど重い痛み」
英語「グリーフ」には、そんな意味が込められている。
それほどまでの悲嘆に暮れている人たちへの援助のことを、「グリーフケア」と呼ぶ。
2025年1月17日(金)より全国公開となる映画
『君の忘れ方』
は、そんなグリーフケアをテーマにした作品だ。

主人公・森下昴を演じるのは、坂東龍汰。
『春に散る』(23/瀬々敬久監督)、『一月の声に歓びを刻め』(24/三島有紀子監督)等、どの出演作も存在感が光るが、意外なことに単独での主演は今作が初とのこと。

そして、ヒロイン・柏原美紀に扮するのは、西野七瀬。
『孤狼の血LEVEL2』(21/白石和彌監督)、『52ヘルツのクジラたち』(24/成島出監督)等、出演を重ねる度に輝きが増している。
ある日、昴は美紀との「不慮の別れ」を経験してしまう。
気丈に構成作家としての仕事を続ける昴を、プロデューサー(森優作)は色々と気遣う。
だが、取材相手であるカウンセラー(風間杜夫)の言葉も、固く心を閉ざす昴には届かない。
昴は母・洋子(南果歩)の勧めに渋々従い、岐阜へと帰郷することになる。
取材先に紹介された牛丸(津田寛治)は、定期的に「グリーフケア」の会を催している。
昴は、そこで最愛の妻を喪った池内(岡田義徳)と出会うーー。

坂東龍汰の演技が、素晴らしい。
熱演でもなければ、怪演でもない。
スクリーンには、「等身大」としか言いようの無い、愛する人を亡くした若者・昴が「生きて」いる。
そして、西野七瀬に目を奪われる。
今作では、大きな武器である表現の一端を半ば封印される演技を強いられた西野であるが、圧巻の存在感を見せつける。

そんな役者たちの輝きの秘密に迫る撮影秘話を、監督・脚本を務めた作道雄監督から聞くことが出来た。
前作『神さまの轍 ―Checkpoint of the life―』でもそうだったが、作道雄監督は、人生の一コマを切り取る……否、「切り撮る」ことに類まれな手腕を発揮する。
そして、切り撮る瞬間は、青春真っ只中の最盛期でもなければ、人生のクライマックスでもない。
作道監督が切り撮るのは、過去でもなく未来でもない、「いま」だ。
「忘れ方」というタイトルに込められているのは、如何すれば忘れられるのか?というハウツー的な意味ではない。
記憶、そして感情が如何に移り変わるのか?を(当事者であるにも拘らず)俯瞰で眺めるからこそ視えてくる様……
『君の忘れ方』では、そんな静謐な心の、魂の動き、揺らぎが丁寧に描かれている。
それは、「グリーフケア」でいちばん大切なことなのだ、きっとーー。

©「君の忘れ方」製作委員会2024
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