『枝葉のこと』(2017)『逃げきれた夢』(2023)と、国の内外、洋の東西を問わず映画ファンに「届く」作品を撮り続ける、二ノ宮隆太郎監督。
待望の新作『若武者』もまた、2024年5月に世界同時公開を果たし、その注目のほどが伺える。
『若武者』ストーリー
工場勤務で物流を務める渉(坂東龍汰)は、無口で感情を表に出さない。居酒屋のホール係として働く英治(髙橋里恩)は、暴力的で独り語りが多い。
グループホームの介護士である光則(清水尚弥)は、温厚そうに見えて毒を吐く。
幼馴染の3人はいつもつるんでいるが、特にやることもなく、街の人々に絡んでは日々を過ごしている。
ただ、心に抱える闇は徐々に3人の関係を歪ませ、やがて思いも寄らない事件となって表れてしまう――。
2024年6月16日(日)、『若武者』公開が始まったばかりのセンチュリーシネマ(名古屋市中区栄3丁目29−1 名古屋パルコ東館8階)では、二ノ宮隆太郎監督、坂東龍汰さん、髙橋里恩さん、清水尚弥さんによる舞台挨拶が開催された。
司会進行は、鈴木徳至プロデューサー。
普段の坂東さんを知る方にとって今回の役は真逆のように感じたと思うんですが、如何ですか?
坂東龍汰 パブリックイメージで僕のことを知ってくださってる方は、かなり真逆だって思うと思うんです……僕もそう思います(笑)。
でも、昨日父親と母親に会って、『若武者』を観てくれたみたいで……鬱屈としてた中学校の頃の反抗期の僕を見ているようだと言われました。
見抜いてましたか、監督?
二ノ宮隆太郎監督 見抜きましたね(笑)。
坂東 流石だな、と思いました(笑)。「今まで演った役の中で、いちばん龍汰に近い」って言ってました。
一方、髙橋さんはボキャブラリーにクソ満ち溢れた「英治」という役名でしたが(笑)、物凄い台詞量で憶えるの大変じゃなかったですか?
髙橋里恩 いや、スッと。
どうやって憶えるんですか?
髙橋 公園ブラブラしながら
一同 怖っ(笑)!
髙橋 (苦笑)……あとは、中学校時代とかに行ってた場所で台詞を言いながら……昔の自分と英治を馴染ませる作業みたいなのをして、憶えてました。公園とか、商店街とか……思い出に触れる感じで、良かったですけどね。
清水さんは今回オーディションでしたね。
清水尚弥 台本を読んだ第一印象は、ちょっと本当に役柄は難しいなと思って……。実際、お二人(坂東・髙橋)は長い関係性があって、僕はそこに「交ぜてもらう」って感じだったので……二人が僕を迎え入れてくれたから、「光則」も居場所、居所、居るべき所が出来上がったなと思って。本当に(共演が)二人で良かったなと思ってます。
バランスみたいなものは意識した?
清水 そうですね。めっちゃ喋らない「渉」と、めっちゃ喋る「英治」……
髙橋 で、(「光則」は)めっちゃ見てる?
清水 う〜ん……それを、ただ「見てる」だけにしちゃうと輪から外れちゃうから……
坂東 確かに、確かに……
清水 三角形になれるような関係性が映画の中に収まれば良いな、と考えて。
絶妙な三人ですね。
坂東 「支点・力点・作用点」ですよね。
髙橋 ムズいよ(一同笑)。
そんなクセ強三人に、監督は自分の中の闇を三分割して託したとか?
二ノ宮監督 そうなんです。普段の自分はドラえもんみたいにニコニコして、他人に如何に害を与えないで生きていこうって感じなんですけど、それでもやっぱり自分の中の綺麗事にしたくない思いを、三人に込めたという感じですね。
キラキラしたものだけじゃ人間は描けないなという思いがありまして……でも、ちょっとやりすぎましたかね(笑)?
坂東 笑えるシーンも一杯ありますよね。
最初は面食らっても、何回か観ると目茶苦茶ふざけてますよね。
坂東 阿呆ばっかり、という(笑)。
でも、そんな闇を託された御三方は、どうでしたか?
清水 「闇を三分割した」みたいな話って、事前に聞いてた?
坂東 いや、聞いてなかった。
髙橋 聞いてないね。
清水 完成後に聞いて「そうだったんだ」ってリアクションだったんですよ、三人とも。
そこは、敢えて言わなかった?
二ノ宮監督 言葉が拙い部分があるので伝えてなかったですけど、汲み取っていただいてお芝居していただいたという……この御三方じゃないと絶対この映画は出来なかったと思いが凄くあります。
会話とか凄く自然ですので「アドリブじゃないか?」みたいな声もよく頂くんですけど……
髙橋 ですよね。
坂東 アドリブは、ほぼゼロじゃないですか……一言一句。
特に印象に残ってるシーンやロケ地はありますか?
髙橋 ロケ地といえば……墓。電車の音も効果的でしたし、あそこは不気味でしたね。
あそこは本当にヤバい場所で……
坂東 「首切り地蔵」でしたっけ?
江戸時代からの処刑場の跡地で、それを弔うために大きな地蔵(像)がある場所で。僕も台本読んで自転車で行ってみたんですけど、ここはヤバい!って。
二ノ宮監督 あそこ近くで、〇〇で✕✕なシーンも撮ろうぜってなったんです(笑)。
あの昭和な感じの街並みは、再開発で見られなくなっちゃったんですよね。
二ノ宮監督 そういうのが残るのが良いですよね、映画って。
坂東さんは今回、大御所と対決というか……
坂東 結構ありましたね。
こういう映画だからこそ、若いチームで和気藹々とやってたんですけど、豊原(功補)さんとのシーンはピーン!と来ましたよね。
坂東 あの日は、もう……汗止まんなかったですよ(場内笑)!めちゃくちゃ張り詰めてましたから、あのシーン。
髙橋 段取り終わって、弁当を二人で食べてたよね(笑)。
坂東 あの日、四畳一間くらいの個室で……
なぜか、二人だけで冷えた弁当を食う、という。
坂東 二人向き合って弁当を食って(場内笑)……どういう表情で食べれば良いんだろう?って(笑)。一言も喋らなかったですからね。
それだけ本気で映画に臨んでらっしゃる方なんだって感じましたよね。
髙橋 しかも、(撮影)3日目とかでしょ?
坂東 だから、あのシーン僕ほとんど記憶ないです。でも撮影終わった後に豊原さんが「一緒にコンビニ行こうよ」って言ってくださって、ホットコーヒー買ってくださって「イエーイ!」みたいな(笑)。
あと、岩松(了)さんとのシーン……この映画をすべて温かく纏めてくれるというか……
坂東 あの言葉に、救われますよね。
実際に岩松さんがああいうことを仰ってたとか?
二ノ宮監督 そうです。岩松さんの舞台に髙橋里恩さんと僕が出演した時、岩松さんが普段の舞台の稽古中に「行動が影響を与えてる」っていう演出があって、それを元に作った映画と言っても過言ではないんです。
坂東 それを、僕が(台詞で)言わなきゃいけないっていう……。僕も二十歳で初舞台の時に、岩松さんとご一緒したんです。
皆にとっての師匠みたいな方なんですよね。
坂東 もう、めちゃくちゃ緊張しました。
最後に一言ずつ、お願いします。
二ノ宮監督 本当にもう、観てくださってありがとうございました。本当に、それだけです。ありがとうございました。
清水 東京の舞台挨拶から始まって、名古屋まで来られて……『若武者』のおかげで連れてきてもらって、本当に嬉しい限りです。是非、忌憚なき意見をSNSでいただけたら、めちゃめちゃ見てるんで。
本当に、今日はありがとうございました。
髙橋 皆さんが来てくれて、名古屋に来れました。名古屋は来たことが無かったので、味噌カツ食べようと思います。
映画は何回観ても色んな味が出てくると思うので、続けて観てください。
ありがとうございました。
坂東 こんなに沢山の皆さんに来てもらって、とても嬉しいです。
この『若武者』という映画は誰かと意見を交わしたくなる映画なんじゃないかと僕は思っています。まだ観ていない友達やご家族に一回観てもらって、何かしらの気付きや意見を交換していただけたらと思います。
こんな沢山の映画が作られている日本で、こんな素敵な一風変わった映画に出れたのは凄く嬉しいので、どうかこの『若武者』をよろしくお願いいたします。今日はありがとうございました。
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