一ヶ月に一度、家庭の事情で転校を余儀なくされる子供がいる。
一昔前の、話ではない。
海外の、話でもない。
現代の、日本の、話である。

そんな話を聞くと、心穏やかではいられない人も少なからずいるのではないか。
「すわ、虐待ではないか」と。

だが、その子の境遇を聞くと、ある程度の人はホッと胸を撫で下ろすはずだ。
その子の父は大衆演劇の座長であり、その子は一座の看板なのだ。

映画『瞼の転校生』は、大衆演劇の世界に身を置く中学生が主人公の物語。
若手映像クリエイターの登竜門【SKIPシティ国際Dシネマ映画祭】20周年と、埼玉県・川口市の市制90周年を記念して製作された、長編映画だ。
【SKIPシティ国際Dシネマ映画祭 2023】のオープニング作品として上映され、拍手喝采で迎えられた感動作である。

そんな『瞼の転校生』が、5月4日(土 祝)より待望の名古屋上映を果たす。
上映館は、大衆演劇が舞台の『瞼の転校生』にこの上なく相応しい、シネマスコーレ(名古屋市中村区椿町8−12 アートビル 1F)。
ご存知の通りシネマスコーレを創設した若松孝二監督作には、『寝盗られ宗介』(1992年)というドサ回り一座が舞台の傑作がある。

『瞼の転校生』ストーリー

埼玉県川口市に、旅回りの大衆演劇「雄飛座」で女形を務める中学3年生・裕貴(松藤史恩)が引っ越してくる。
ひと月ごとに転校を繰り返す裕貴にとって、学校に居場所を見出すことが出来ず、友達も作らず過ごしてきた。
ある日、担任教師(タモト清嵐)に言伝を頼まれ、渋々不登校で成績トップの建(齋藤潤)の家を訪ねる。
ぎこちない出会いの裕貴と建だったが、地下アイドル「パティファイブ」の浅香(村田寛奈)の存在を切っ掛けに、二人の仲は一気に近づく。
更に、建の元カノでお節介で好奇心旺盛な茉耶(葉山さら)も加わり、三人は一緒に過ごす時間を増やしていく。
だが、タイムリミットは刻々と迫っていた。
公演が千秋楽を迎えれば、裕貴はふたりと別れなければならないのだ――。

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一座で人気の女形、歌謡ショーで舞踊もこなす中学生団員・裕貴を熱演したのは、松藤史恩。
デビューは0歳、芸歴=年齢という驚愕のキャリアの持ち主で、『雑魚どもよ、大志を抱け!』(監督:足立紳)『658km、陽子の旅』(監督:熊切和嘉)『死刑にいたる病』(監督:白石和彌)とスクリーンへの出演経験も豊富な若すぎる実力派。

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頭脳明晰な孤高な天才肌だが、色恋沙汰には鈍感な不登校気味のクラスメート・建に扮したのは、齋藤潤。
2019年デビュー以来、ドラマ・CM・映画などジャンルを問わず活躍。
小学館「アオアシ」スペシャルムービー『4月のキックオフ』で主演を務め、一躍注目株となった。

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好奇心旺盛な姐御肌、建の元カノでもある茉耶を好演したのは、葉山さら。
2021年スカウトで芸能界入りすると、翌年から「薬用養命酒」、さらに「ABCMART ×アンダーアーマー」のCMに出演した注目株。
ドラマ出演は、「エルピス-希望、あるいは災い-』(2022/カンテレ)「VOICEアクト『芸人交換日記』」(2023/BSフジ)、『福田村事件』(2023/監督:森達也)で映画出演も果たしている。

この中学生三人が、本当に素晴らしい。
今まさに青春真っ盛りの、アオハル世代。
これから青春時代に突入する、子供たち。
そして、甘酸っぱい季節を通り過ぎてきた、大人たち。
老若男女、すべての観客を満足させる、本当に素敵な瞬間を見せて……いや、魅せてくれる。

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そんな主人公たち脇を、高島礼子、佐伯日菜子、村田寛奈、生津徹、タモト清嵐といった、名優・実力者が固めるのだから、堪らない。
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その上、座長・松川小祐司ひきいる「劇団美松」により、大衆演劇の世界を心ゆくまで堪能できる(実に!)のだから、本当に眼福だ。

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作品を語る上で、メガホンを取った藤田直哉監督の手腕を絶賛しない訳にはいかない。
『stay』(2019年)が【SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2020】短編部門でグランプリを獲得した実力派とは言え、本作が長編映画デビューとは驚愕してもし切れない。
長編映画企画の研修を受けたニューヨークでの修行は、伊達ではないのだ。 

Sub5

『瞼の転校生』は鑑賞にあたり年齢制限を設けてはいないが、それでいて確りとダイバーシティについて描かれているのも、素晴らしい。

人は皆、自分の居場所を必要とする。
居場所を見つけ、それを大切な人に認めてもらってこそ、人は自分らしく生きられる。

それが、多様化というものだ――。

『瞼の転校生』公式サイト


シネマスコーレ公式サイト


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