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原作:吉田修一
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監督:大森立嗣


『さよなら渓谷』から10年、最強タッグによる待望の新作『湖の女たち』が、いよいよ5月17日(金)よりロードショー公開となる。

湖の女たち メイン

『湖の女たち』ストーリー

大湖の畔に建つ介護療養型老人ホーム「もみじ園」で、100歳の男性が低酸素症で亡くなった。
人工呼吸器に不具合が発生する確率の低さを考え、管轄する西湖署は殺人も視野に入れ捜査を開始する。
事件発生時に当直の勤務だった看護師、介護士への取調を担当するのは、若手刑事の濱中圭介(福士蒼汰)とベテランの伊佐美佑(浅野忠信)。

伊佐美に言われるままに事情聴取する圭介は、高圧的な態度とは裏腹に、職員への容疑を固めきれないでいた。
そんな中、伊佐美は介護士・松本郁子(財前直見)を容疑者と断定する。
伊佐美は17年前、大物政治家からの圧力で立件が揉み消され、無念のあまり号泣した薬害事件の捜査を経験していた。

その薬害事件を、若手の雑誌記者・池田由季(福地桃子)が元警察官のリークをネタに取材している。
池田は、もみじ園で不審死を遂げた老人・市島民男が、薬害事件の当事者の一人であることを突き止める。

伊佐美からの突き上げもあり苛烈な尋問を続ける圭介は、日ごとにストレスを強めていく。
そして、重要参考人の一人である介護士・豊田佳代(松本まりか)に歪んだ支配欲をぶつけるようになる。
佳代もまた、威圧的に振舞いながらどこか翳のある圭介に惹かれていく。
圭介と佳代は、抜け出すことの出来ない湖の底へと沈むように、後戻りできない関係に嵌っていく――。

湖の女たち サブ6

映画『湖の女たち』は、ベストセラー作家・吉田修一の同名小説を原作としている。
「パーク・ライフ」で第127回芥川賞を受賞、2016年から同賞の選考委員を務める吉田氏は、純文学・大衆文学といったジャンルに捉われない傑作を著し続ける文字通りの巨匠。
『東京湾景』『女たちは二度遊ぶ』『7月24日通り』『悪人』『横道世之介』『怒り』『楽園』『路』『太陽は動かない』など、映画化された作品も数多い。

メガホンを取るのは、『光』『日日是好日』『タロウのバカ』『MOTHER マザー』『星の子』などの話題作、名作の監督・脚本を務めた、大森立嗣
大森立嗣監督と吉田修一氏のタッグは『さよなら渓谷』以来で、同作が第35回モスクワ国際映画祭で日本映画48年ぶりとなる審査員特別賞受賞の快挙は記憶に新しいが、凡そ10年が経とうとしている。

湖の女たち サブ4

物語の主人公は圭介と佳代であるものの、脇を固める登場人物たちが素晴らしく、『湖の女たち』はさながら群像劇と呼びたい重厚さが立ち込めている。

過去のトラウマを引きずり続ける伊佐美を余すことなく表現する、浅野忠信
笑顔を封印し、作品のテーマの中心人物とも言える難役をこなす、財前直見
暗い水中に沈み込むような暗澹たる物語に一筋の灯火をもたらす、福地桃子
人を惹きつける静謐さと、底が知れぬ恐ろしさ……大湖が持つ二面性を宿したかのような、三田佳子土屋希乃が見せる好対照ぶり。

湖の女たち サブ7

それほど共演陣が輝きを放つのだから、主役のふたりは大変だ。
そして勝るとも劣らぬ好演で魅せるのだから、流石だ。

湖の女たち サブ1

圭介というキャラクターは、ともすれば観客の共感を置き去りにしかねない。
福士蒼汰は、そんなこれまでのキャリアに無い役所を見事に表現した。
溜めこんでいくストレスと、如何ともしがたい劣情の発露は、観る者の感情に苦々しい澱を残す。

湖の女たち サブ2

困難にあっても凛として立つ「湖の女たち」の中で、佳代だけが寄る辺なく揺蕩い続ける。
寄る辺ないにも拘わらず、否、それゆえ感じる愛おしさは、松本まりかが演じたからこその境地であろう。
彷徨い続ける佳代の「生」にはまた、ネガティブ・ケイパビリティを持つ強かさも併せ持つ。

湖の女たち サブ3

全編通して作品に覆いかぶさる閉塞感は、まさに湖そのものだ。
川でも海でもない湖に辿り着いた水は、もはやどこへも流れていけない。

そんな陰鬱な空気を、時に引き裂き、時に寄り添うのは、鮮烈なバイオリンの独奏。
J.S.バッハの無伴奏パルティータから「シャコンヌ(Chaconne)」の調べは、高湿度がよく似合う。

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4月22日(月)、ミッドランドスクエアシネマ(名古屋市中村区名駅4丁目7-1 ミッドランドスクエア5F)では、『湖の女たち』先行上映が開催され、舞台挨拶が行われた。

登壇したのは、大森立嗣監督、福士蒼汰(主演:濱中圭介 役)さん、松本まりか(主演:豊田佳代 役)さん。

司会進行は、ご存じ映画パーソナリティー・松岡ひとみさん。



理不尽に直面し、寄る辺を無くし、正義を見失い、無情を知る。
しかし、それでも「美」を追い求める。

人とは、なんと愚かしい。
そして、なんと――

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映画『湖の女たち』公式サイト

https://thewomeninthelakes.jp/
©️2024 映画「湖の女たち」製作委員会