閑静な住宅街であり、阿佐ヶ谷、高円寺、荻窪など都下でも有数の商圏、文化圏を持つ
、杉並区。
59万人と23区内でも6番目の人口を抱えつつ、昔から続く商店街や、豊かな緑地に恵まれた人気の土地柄だ。
劇作家・演出家のぺヤンヌマキは、そんな杉並に20年以上暮らしている。
猫とミドリガメと共に住むアパートは、鳥の憩う大樹がある路地や緑あふれる遊歩道に程近く快適そのものだ。
だが、ある日思いもよらぬことを知る。
杉並区では道路の拡張工事が数年の内に着工する計画で、立ち退きエリアには慣れ親しんだ散歩道や、馴染みの芝居小屋、何より長年暮らすアパートが含まれている……!
行政に問い合わせてみると、「決定事項だから覆せない」と取り付く島もない。
「これは、ダメだ」と感じたぺヤンヌマキは、自分に出来ることを模索し、「住民思いの杉並区長をつくる会」という市民団体に辿り着く。
『映画 ◯月◯日、区長になる女。』は、それまで無縁だった行政の世界へと飛び込んだ劇作家ぺヤンヌマキが、杉並区民たちと共に選挙戦に挑んだドキュメンタリー。
「住民思いの杉並区長をつくる会」が白羽の矢を立てたのは、ベルギーのNGO職員を勤め、公共事業に関連する書籍を著した、岸本聡子(さとこ)。
岸本が出馬を表明したのは、2022年4月。
杉並区の区長選は、同年7月……わずか90日という無謀な選挙戦は、こうして幕を開けた――。
2024年1月2日ポレポレ東中野(東京都中野区)でロードショー公開が始まり大旋風を巻き起こした『映画 ◯月◯日、区長になる女。』が、いよいよ3月30日(土)名古屋での初日を迎えた。
上映館は、ナゴヤキネマ・ノイ(名古屋市千種区今池1丁目6−13 今池スタービル 2F)。
オンラインでぺヤンヌマキ監督を迎えた初日舞台挨拶を取材した。
劇中、「ミュニシパリズム」という耳慣れない外来語が登場する。
ミュニシパリズム(municipalism)とは、地域に根付いた自治的な民主主義や合意形成を重視する考え方のこと
この言葉が、日本語に定着する日まで……
選挙は続くよ、どこまでも――。
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