
フィリピン映画「第3黄金期」を牽引する鬼才ブリランテ・メンドーサ監督。
『キナタイ─マニラ・アンダーグラウンド─』(2009年)で第62回の監督賞を、『ローサは密告された』(2016年)で第69回の主演女優賞を獲得するなどカンヌ国際映画祭に愛されるメンドーサ監督は、『グランドマザー』(2009年)が第66回ヴェネチア国際映画祭、『囚われ人 パラワン島観光客21人誘拐事件』(2012年)が第62回ベルリン国際映画祭と、世界三大映画祭のコンペティション部門出品を果たした名匠だ。
圧倒的なリアリズムで社会の暗部を炙り出す独特の作風は、「ドキュドラマ」と称されている。
そんなブリランテ・メンドーサ監督の新作『FEAST -狂宴-』が、2024年3月1日(金)を皮切りに全国順次ロードショー公開となる。

『FEAST -狂宴-』ストーリー
ラファエル(ココ・マーティン)は父(リト・ラピッド)が経営する宴会場の仕入のため、トラックを運転していた。助手席の父との会話に気を取られた一瞬のうち、ラファエルは父娘が乗ったトライシクルと事故を起こしてしまう。
父はショックで動揺するラファエルと運転を変わり、二人はそのまま現場を後にする。
弁護士に治療費を負担するよう勧められ、ラファエルは訪れた救急病院で被害者が死亡したことを知る。
ラファエルの父は、息子の替え玉として警察へ出頭し、服役に処される。
ラファエルと母(ジャクリン・ホセ)は、ニータ(グラディス・レイエス)ら被害者遺族を使用人として雇い入れ、生活を保障するのだが――。

主人公を演じるココ・マーティンは、「プリンス オブ インディーフィルム」の愛称で呼ばれるフィリピンの大人気俳優。
主人公の母役のジャクリン・ホセは、東南アジアで初のカンヌ国際映画祭主演女優賞の受賞者。
ココ・マーティンが『キナタイ─マニラ・アンダーグラウンド─』、ジャクリン・ホセが『ローサは密告された』、共にブリランテ・メンドーサ映画には欠かせない存在だ。

人気、実力ともフィリピン屈指の二人が顔を揃えるに相応しく、脇を固めるキャスト陣も曲者揃いとなっている。
スタントマンからキャリアをスタートしたリト・ラピッドは、俳優としてだけでなく政治家としても名高い。
悪役が当たり役のグラディス・レイエスは、コメディエンヌとしての顔も持ち、プリメーラ・コントラビダという別名義でも活躍している。

そんな配役の妙は、実は『FEAST -狂宴-』という映画のテーマそのものを物語っている。
何一つ不自由のない生活を送っているはずの主人公は気が弱く優柔不断で、これは過去に抱えた(であろう)不幸な出来事に起因している。
冷徹な父親は時に不正義を犯すことも厭わないが、誰より思い遣りに溢れてもいる。
母は気丈にビジネスを切り盛りするが、若い頃は恵まれた暮らしでなかったことが語られる。
夫を事故で喪った寡婦は、決して心の深淵を表に出すことはない。
『FEAST -狂宴-』に込められたテーマは、二面性だ。

何気ない穏やかな会話劇で、カメラは煽るようにぎこちなく振れ続ける。
幸福感に満ちた宴で登場人物が歌うのは、哀しみの溢れる思い出の曲。
心を込めた料理を作る場面では、不穏な劇伴が大音響で鳴り響く。
ブリランテ・メンドーサ監督は、出演者たちの行動をつぶさに描く。
同時に、揺れ動く心情を表現する。
そして、観る者に問い掛ける。
あなたなら、どうする――と。

生きることは、選ぶことだ。
私たちは、選択を繰り返しながら、生きる。
法律を、道徳を、宗教をこえ、魂の本質が浮かび上がる。
『FEAST -狂宴-』に、あなたはどんな物語を観るだろう。
ブリランテ・メンドーサ監督からの問いは、私たちの本質を試すのだ――。

映画『FEAST -狂宴-』
2024年3月1日 (金)ヒューマントラストシネマ渋谷
2024年3月29日(金)
ミッドランドスクエアシネマ
ほか全国順次ロードショー
監督: ブリランテ・メンドーサ
出演: ジャクリン・ホセ、 ココ・マーティン、リト・ ラピッド、グラディス・レイエス
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