中央ヨーロッパ、バルト三国の北に位置するエストニア。
2013年3月、エストニア国会で同性婚法案が議決され、2024年3月に施行されるに至った。
エストニアは、世界で35か国目の同性婚承認国である。
旧ソ連圏では初となる同性婚承認国に至ったエストニアだが、大きな原動力となった映画『Firebird ファイアバード』が、2024年2月9日(金)より公開中だ。
『Firebird ファイアバード』ストーリー1970年代後期、エストニアはソビエト連邦の占領下にあった。
エストニアの空軍基地に所属するセルゲイ(トム・プライヤー)二等兵は、間もなく兵役を終えようとしていた。
趣味のカメラで女性将校のルイーザ(ダイアナ・ポザルスカヤ)を撮影していると、新しく配属された尉官のロマン(オレグ・ザゴロドニー)と出会う。
お互い撮影が趣味ということもあったが、セルゲイとロマンが惹かれ合うことに時間は掛からなかった。
だが、当時は同性愛はタブー視されており、露見すれば処罰の対象となっていたのだ――。
2月10日(土)、ミッドランドスクエアシネマ2(名古屋市中村区名駅四丁目11番27号 シンフォニー豊田ビル2階)で『Firebird ファイアバード』舞台挨拶を取材した。
来日したのは、ペーテル・レバネ監督、主演・共同脚本を務めたトム・プライヤー、ロマン役のオレグ・ザゴロドニー。
Ｑ．『ファイアバード』制作の経緯を教えてください。
ペーテル・レバネ監督
「この物語が、私を見つけてくれたんです。私の友人が、主人公となっているセルゲイ(・フェティソフ)の自伝を持ってきてくれて、私はロシア語はそれほど完璧ではないんですが、家で読みました。読み終わり、泣きました。そして、(物語を)書き始めたんです。
準備ができたところで、ハリウッドのプロデューサーがトム(・プライヤー)に私の作品を紹介してくれました。それから二人で数年かけて脚本を書き直して、今の形になりました。
それからオレグ(・ザゴロドニー)と会いまして、その後の物語はすべて映画に織り込まれています」
トム・プライヤー
「まずストーリーを読んだ時、色々な要素があると思いました。軍隊、アクション、ロマンティックなスリラー、そして、深い愛の物語。そんな要素の組み合わせに心を奪われました。長年かけて脚本を書き上げた訳ですけど、このプロジェクトに関して私達は信念がありました。真実の愛、そして、セルゲイという人そのものについて……愛の物語から色々な方向へ広がっていきました」
オレグ・ザゴロドニー
「監督から「この素晴しい作品に参加したければ、英語を学ばなければいけない」と言われましたので、2ヶ月で習得しました。
この映画で、世界の人達が私のことを知ってくれました。そのことで(故郷のウクライナ)兵士に何かできるのではないかと思いました。今着ているのは、私が作った服です。世界の人がこの作品(服)を買っていただけると、売上を使ってウクライナ兵の制服、ブーツなどの装備を買い、提供することができます」
また、共同記者会見にて、ペーテル・レバネ監督に直接質問することができた。
Ｑ．本作『FireBird』の公開やレバネ監督のロビー活動が、エストニアで同性婚が承認される大きな原動力になったと聞いています。日本ではまだ同性婚は法的に認められていません。愛の形が認められず苦悩している人々に、何かメッセージがあればお願いします。
ペーテル・レバネ監督
「今年(2024年)の初め、仰るようにエストニアでは同性婚が合法化されました。日本は非常に先進的な国であり、他人を思いやる文化があるのに、平等な権利が認められていないのは悲しいことです。
やはり政府は平等ということをきちんと国民に提供すべきで、すべての社会はすべての人が幸せになるようにしなければいけません。何かを取り上げるのではなく、すべての人々に将来の可能性を与えることが必要です。人は、平等な権利を与えられていると思えることが重要なんです。
その対策としては、皆がきちんと意見を言わなければいけないと思います。自分の心に従う、そして、意見を言うことです。恐れに準じてはいけません。そして、皆さんの友人や政治家に対して発言してください。
私達エストニアで(同性婚が)合法化されたのは、ゲイの人たちの力によってだけではありません。ほとんどの(発言する)人々はストレートの人たちだったんです。議会では半数以上の賛成が必要で、そんなストレートの人たちの力によって成立しました。そうした活動によって、いつか日本でも平等が与えられるのではないかと思います」
『Firebird ファイアバード』公式サイト
https://www.reallylikefilms.com/firebird
コメント