ミッドランドスクエアシネマと映画パーソナリティ松岡ひとみさんとの名物コラボ企画、【松岡ひとみのシネマコネクション】。
月イチトークイベントのはずだが、11月4日(土)、前日に引き続きミッドランドスクエアシネマ2(名古屋市中村区名駅四丁目11番27号 シンフォニー豊田ビル2階)で【VOL.51】が開催された。
今回の上映作品は、絶賛公開中の『愛にイナズマ』。
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今作が大好きなあまりラブコールを送り続けたという映画パーソナリティ松岡ひとみさんに応え、石井裕也監督がトークゲストに駆けつけた。
石井裕也監督によると『愛にイナズマ』の舞台挨拶は首都圏以外では最初で最後だということで、なんとも貴重で贅沢なトークショーとなった。
もちろん、MCは松岡ひとみさんだ。
「『愛にイナズマ』はコロナ禍中に考えられた作品だそうで。撮影はいつされたんですか?」と尋ねられた石井監督は、
「(『月』を撮る前の2022年)5月1日から撮影を始めて、5月21日に撮り終わるというスケジュールでした。日程だけ先に決めて、逆算して脚本を書き始めました」
と明かした。
脚本を書き始めてから撮影までのスパンが非常に早かったこともあり、ロケ地については、
「いつも飲みに行ってるバーや、以前フェリーで訪れて凄く美味しかった料理屋さんなど、ゆかりのある場所にお願いして撮影しました。
花子の実家は、以前『生きちゃった』という映画のロケで使った空き家を今回も使わせてもらったんです」
と制作の裏話を語った。
また、本作をチャプターで区切っている理由を問われると、
「現代のコロナの状況下の凄く小さい世界の話をちょっと神話っぽく見せたかったんです。
各チャプターは酒とか愛とかカメラとか色々あるんですが、どれも人間の本質を暴く可能性のある装置で、雷、イナズマが全部一瞬だけ照らすというイメージがあった」
と明かし、思わず観客も唸った。
家族の喧嘩シーンが非常に面白かった、アドリブもあったのでは?という質問に対しては、
「あの喧嘩のシーンというのは、凄く面白かったです。優れた俳優であればあるほど脚本に忠実にやろうとするので、俳優は深読みして何周も回って、最後は言いづらい台詞もそのままやるんです。多分、アドリブはゼロですね。
アンサンブルが上手くいったのは、(佐藤)浩市さんが若手たちに「懐に入ってきていいよ」というメッセージを出しながら、みんなでそこに向かっていったという感じで。演技バトルとは言え、そこには凄く強い敬意がお互いあったこと、そして途轍もない才能、能力があったことで、全然違う何かを生んだという感じじゃないですかね」
と振り返り、俳優陣を讃えた。
『愛にイナズマ』には朝ドラ「ブギウギ」でお馴染みの趣里さんも出演しているが、松岡さんは彼女の役について「AIっぽい」という感想を持ったそうだ。
「インターネット上の操作ミスで携帯電話の番号が消えてしまった時、AIのチャットに「もうどうしようもありません」と言われたことがありまして。こっちにどんな気持ちと思いがあっても、全く歯が立たない感じは、今の社会のある一面を象徴しているんじゃないかなと思ったんです」
という石井監督の言葉に、客席も頷いた。
そんな客席からの
「今まで監督をしてきた中で、すごく嬉しかったことがありましたら、教えてください」
という質問に、
石井監督は、
「今回の親子喧嘩シーンは、今までたくさん辛いことを経験してきた自分へのご褒美だと思ったぐらい、 面白かったです。初めてかもしれないですね、現場でこれほど多幸感に満ちたことは」
と、充実した撮影現場を述懐した。
絶賛公開中、石井裕也監督『愛にイナズマ』の快進撃は、まだまだ留まることをしらない。
あなたの、怒りに、不安に、悲しみに、煩悩に、そして、愛に、
届け、イナズマ!!
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