地元での映画制作にこだわりを持つ、自主映画集団【三河映画】。
単に基盤を置く豊田や岡崎など愛知県・三河地方での撮影を目的としている訳ではなく、世界を視野に入れたスケールの大きな作品を生み出すことを目標とする、映画創作集団である。
昨年レポートした、長編第2弾作品『Ben-Joe 〜お父さん、抱きしめて欲しかった〜』で、【三河映画】を深く心に刻んだ映画ファンも多いと思う。
※よろしければ、こちらもどうぞ※
さて、『Ben-Joe』が第2弾なら、第1弾はどんな映画なのだろう?
その名を、『幸福な結末』という。
実は『幸福な結末』、関係者試写が行われたものの、諸々の理由により長らく日の目を見ることが叶わなかった、不遇の映画である。
そして、様々な紆余曲折を経て、昨年ようやく世に出せる作品となった『幸福な結末』。
撮影は2010年の夏というから、公開まで要した年月は足掛け13年!
陰になり日向になり公開を目指した関係者の方々の労苦は、想像だに困難である……紆余も曲折も、測り知れないスケールだ。
人々の目に触れるや否や、『幸福な結末』は瞬く間に話題作となりつつある。
98ヶ所の映画祭で入選・受賞し、2023年10月14日(土)15日(日)にはシネマスコーレ(名古屋市中村区椿町8-12 アートビル1F)での一般公開も予定されている。
2023年7月9日(日)、豊田市福祉センター(愛知県豊田市錦町1丁目1−1)で開催された『幸福な結末』感謝上映会を取材した。
そして、確信した。
『幸福な結末』は、『Ben-Joe』に勝るとも劣らない【三河映画】の大看板となることを。
13時からの開演を前に11時半に開場した豊田市福祉センターのロビーでは「口福(こうふく)なマルシェ」も同時開催され、来場客の心とお腹を満たしていた。
そして、上映にさきがけ沢山のキャスト陣が顔を揃えたトークショーが2度にわたり開催された。
司会進行は、岩松あきら監督だ。
トークショー①、ゲストは5名。
主演の井上 秀之さんが演じたのは、ハッピーエンド(幸福な結末)をかくことが出来ない絵本作家・桐原薫。
幼少時より家族に恵まれなかった桐原は、自分を捨てた母・恵子と数十年ぶりに対峙するものの、母は危篤の病床で意識もない。
人生に希望も意志も失くした桐原がビルの屋上から身を投げるという、衝撃の序盤から映画は幕を開ける。
冴木 茶々(撮影当時:斉木りえ)さんが演じた石野千明は、桐原の別れた妻。
絵本作家を目指す若い頃から桐原を傍で支えてきた千明は、息子・達也の出産を機に彼と結婚する。
だが、作品をかけなくなった桐原が次第に荒んでいくのを見かねて、千明は達也を連れて家を出た。
タケヤマ タケゾウ(撮影当時:竹山 史恭)さんが演じた里見は、若き日の桐原の仲間であり、ライバル。
どこか人を遠ざける厭世質の里見は、作る物語が桐原と真反対で、二人は互いの力を認め合っていた。
池野 亜夢さんは、桐原、千明、里見らと教室で席を並べ絵本制作を学んだ仲間を演じた。
絵本教室の有志一同で同人誌を出すのだが、それは後に大きな事件を巻き起こすことになる。
追加キャストである高橋ゆなさんは一風変わった役どころ、なんとネコの声を担当した。
出番は多くないものの、物語のキーでありヒントであり核心ともいえる、大切な台詞を担った。
トークショー①の様子は、こちらの動画を観てほしい。
そして、トークショー②、こちらもゲストは5名。
清水 香奈さんは、物語の「もう一人の主人公」である少女役。
ビルの屋上から身を投げる桐原の目の前に突如として現れた少女は、劇中いちばん謎めいた存在だ。
3匹の動物たちに導かれながら、少女は「自分探し」に奔走する。
新 研吾(撮影当時:昭和 研吾)さんは、主人公を追い詰める「三河日報」記者の役。
新米記者ながら彼が掴んだ特ダネは世論を動かし、桐原は大きな窮地に立たされる。
脇田 敏博さんは、新さんの先輩記者として大きな存在感を示した。
悪役といっていいダーティな役で、時として弱気になる新人記者の野心を焚きつける。
23歳の松尾隆成さんは、回想シーンでの少年時代の桐原薫を熱演した。
台詞なしに心情を表現する巧みな芝居は、撮影当時10歳だったとは信じられないほどだ。
彬田れもん(撮影当時:坂本 由佳)さんは、桐原の母を担当する新米看護師の役。
急遽召集され思うようにリハーサルも取れない中、物語をクライマックスへと導く難役を見事こなした。
トークショー②の様子は、こちらの動画をどうぞ。
程なくして大ホールでは113分の本編が上映され、満席となった観客からは時おり笑いと、終盤はすすり泣く声も聴こえてきた。
そして、上映後に開催された舞台挨拶では、割れんばかりの大きな拍手が鳴り響いた。
映画、演劇、文学……すべての物語には、すべからく結末が存在する。
そして、あらゆる表現者は、物語に最高の結末が訪れるよう、苦労に苦労を重ねる。
だが、結末があったとしても、それは物語の終局ではない。
完結を決めることが出来るのは、物語を観た者だけなのだ。
物語の真の結末とは、観客の心の中にこそ存在するのである。
だとしたら、映画『幸福な結末』の結末は、最高のハッピーエンドで間違いない……
そんなことを、確信した。
会場を後にする観客の、心から満ち足りた表情を見ながら――。
地元での映画制作にこだわりを持つ、自主映画集団【三河映画】。
単に基盤を置く豊田や岡崎など愛知県・三河地方での撮影を目的としている訳ではなく、世界を視野に入れたスケールの大きな作品を生み出すことを目標とする、映画創作集団である。
昨年レポートした、長編第2弾作品『Ben-Joe 〜お父さん、抱きしめて欲しかった〜』で、【三河映画】を深く心に刻んだ映画ファンも多いと思う。
※よろしければ、こちらもどうぞ※
さて、『Ben-Joe』が第2弾なら、第1弾はどんな映画なのだろう?
その名を、『幸福な結末』という。
実は『幸福な結末』、関係者試写が行われたものの、諸々の理由により長らく日の目を見ることが叶わなかった、不遇の映画である。
そして、様々な紆余曲折を経て、昨年ようやく世に出せる作品となった『幸福な結末』。
撮影は2010年の夏というから、公開まで要した年月は足掛け13年!
陰になり日向になり公開を目指した関係者の方々の労苦は、想像だに困難である……紆余も曲折も、測り知れないスケールだ。
人々の目に触れるや否や、『幸福な結末』は瞬く間に話題作となりつつある。
98ヶ所の映画祭で入選・受賞し、2023年10月14日(土)15日(日)にはシネマスコーレ(名古屋市中村区椿町8-12 アートビル1F)での一般公開も予定されている。
2023年7月9日(日)、豊田市福祉センター(愛知県豊田市錦町1丁目1−1)で開催された『幸福な結末』感謝上映会を取材した。
そして、確信した。
『幸福な結末』は、『Ben-Joe』に勝るとも劣らない【三河映画】の大看板となることを。
13時からの開演を前に11時半に開場した豊田市福祉センターのロビーでは「口福(こうふく)なマルシェ」も同時開催され、来場客の心とお腹を満たしていた。
そして、上映にさきがけ沢山のキャスト陣が顔を揃えたトークショーが2度にわたり開催された。
司会進行は、岩松あきら監督だ。
トークショー①、ゲストは5名。
主演の井上 秀之さんが演じたのは、ハッピーエンド(幸福な結末)をかくことが出来ない絵本作家・桐原薫。
幼少時より家族に恵まれなかった桐原は、自分を捨てた母・恵子と数十年ぶりに対峙するものの、母は危篤の病床で意識もない。
人生に希望も意志も失くした桐原がビルの屋上から身を投げるという、衝撃の序盤から映画は幕を開ける。
冴木 茶々(撮影当時:斉木りえ)さんが演じた石野千明は、桐原の別れた妻。
絵本作家を目指す若い頃から桐原を傍で支えてきた千明は、息子・達也の出産を機に彼と結婚する。
だが、作品をかけなくなった桐原が次第に荒んでいくのを見かねて、千明は達也を連れて家を出た。
タケヤマ タケゾウ(撮影当時:竹山 史恭)さんが演じた里見は、若き日の桐原の仲間であり、ライバル。
どこか人を遠ざける厭世質の里見は、作る物語が桐原と真反対で、二人は互いの力を認め合っていた。
池野 亜夢さんは、桐原、千明、里見らと教室で席を並べ絵本制作を学んだ仲間を演じた。
絵本教室の有志一同で同人誌を出すのだが、それは後に大きな事件を巻き起こすことになる。
追加キャストである高橋ゆなさんは一風変わった役どころ、なんとネコの声を担当した。
出番は多くないものの、物語のキーでありヒントであり核心ともいえる、大切な台詞を担った。
トークショー①の様子は、こちらの動画を観てほしい。
そして、トークショー②、こちらもゲストは5名。
清水 香奈さんは、物語の「もう一人の主人公」である少女役。
ビルの屋上から身を投げる桐原の目の前に突如として現れた少女は、劇中いちばん謎めいた存在だ。
3匹の動物たちに導かれながら、少女は「自分探し」に奔走する。
新 研吾(撮影当時:昭和 研吾)さんは、主人公を追い詰める「三河日報」記者の役。
新米記者ながら彼が掴んだ特ダネは世論を動かし、桐原は大きな窮地に立たされる。
脇田 敏博さんは、新さんの先輩記者として大きな存在感を示した。
悪役といっていいダーティな役で、時として弱気になる新人記者の野心を焚きつける。
23歳の松尾隆成さんは、回想シーンでの少年時代の桐原薫を熱演した。
台詞なしに心情を表現する巧みな芝居は、撮影当時10歳だったとは信じられないほどだ。
彬田れもん(撮影当時:坂本 由佳)さんは、桐原の母を担当する新米看護師の役。
急遽召集され思うようにリハーサルも取れない中、物語をクライマックスへと導く難役を見事こなした。
トークショー②の様子は、こちらの動画をどうぞ。
程なくして大ホールでは113分の本編が上映され、満席となった観客からは時おり笑いと、終盤はすすり泣く声も聴こえてきた。
そして、上映後に開催された舞台挨拶では、割れんばかりの大きな拍手が鳴り響いた。
映画、演劇、文学……すべての物語には、すべからく結末が存在する。
そして、あらゆる表現者は、物語に最高の結末が訪れるよう、苦労に苦労を重ねる。
だが、結末があったとしても、それは物語の終局ではない。
完結を決めることが出来るのは、物語を観た者だけなのだ。
物語の真の結末とは、観客の心の中にこそ存在するのである。
だとしたら、映画『幸福な結末』の結末は、最高のハッピーエンドで間違いない……
そんなことを、確信した。
会場を後にする観客の、心から満ち足りた表情を見ながら――。
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