
日本は、というか島に限らず陸地とは、ほぼ例外なく中央部が高地で、周縁部=海岸線が低地である(当たり前だが)。
そこに川があるならば、水は高みから低みに流れる(当たり前だが)。
同じ土地に長く暮らすと忘れがちだが、太平洋側に住む人と、日本海側に住む人とでは、河川の上流・下流の概念が逆の方角になる(オホーツク海側、離島に暮らす方はさておき)。
太平洋側に暮らす者にとって河川とは北から南へ、あるいは西から東へと流れるものであるから、日本海側で川を見ると「逆に流れている」感覚に襲われる(もちろん、逆もしかり)。
2023年7月2日(日)、ミッドランドスクエアシネマ2(名古屋市中村区名駅4丁目11−27 シンフォニー豊田ビル)で開催された【松岡ひとみのシネマコネクションVOL.42】。
今回の上映作品は、そんな川の流れにまつわる映画……劇団ヨーロッパ企画オリジナル長編映画第2作、『リバー、流れないでよ』。

『リバー、流れないでよ』ストーリー
京都・貴船川のほとりに建つ老舗の料理旅館「ふじや」では、多くの人々が日常を、休日を過ごしていた。旅館で働く、仲居のミコト(藤谷理子)、同僚のチノ(早織)、番頭(永野宗典)、女将(本上まなみ)、料理人のタク(鳥越裕貴)・エイジ(酒井善史)、料理長(角田貴志)たち。
そして客として「ふじや」を訪れた、作家(近藤芳正)と編集者(中川晴樹)、昔馴染みのノミヤ(諏訪雅)とクスミ(石田剛太)、たまたま通りかかった猟師(土佐和成)に、ヒサメ(久保史緒里)。
川を見つめ一息つくミコトは、女将に呼ばれ、番頭と一緒に食事客の部屋掃除を始める。
だが……仕事を片付けたと思いきや、また元いた川のほとりに戻っていることに気づく。
どうやら貴船界隈では、突然2分間のタイムループが発生しているようで――。

【松岡ひとみのシネマコネクションVOL.42】、今回のトークゲストは、ヨーロッパ企画の中川晴樹(スギヤマ役)さん、酒井善史(エイジ役)さん、山口淳太監督。

MC(松岡ひとみ/映画パーソナリティ)
本当に面白い作品を、ありがとうございます。
山口淳太監督
「ヨーロッパ企画を知らない」方にも届いたなら、本当に嬉しいですね。

酒井善史
そうですね。

中川晴樹
演劇ファンももちろんですが、映画ファンに僕らのことを届けられたかもしれないなと思っているんです。

MC
中川さんは愛知県名古屋市中川区の出身ですが、あんまり帰ってきてないんですか?
中川
そうですね……公演で年一回名古屋でやらせてもらってるので、それで帰ってくる感じです。
酒井
あ……じゃあ、僕らと名古屋に来る回数そんなに変わらないんですかね?
中川
そうなんですよね……まぁ、コロナもあったしね。
MC
山口監督が、本広克行監督と同じく名古屋めしが好きなので、しょっちゅういらっしゃってるイメージが(笑)
山口監督
この前も、一緒に味噌カツ食べに来ました。
酒井
名古屋に?
中川
何してんの?
山口監督
でも、松岡さんも一緒だったんですよ(笑)。
中川
……何してんの?
MC
味仙も行きましたよね。
酒井
何の話してんですか(笑)?

中川
撮影は10日間くらいだったんですけど、4日目が十年に一度の大寒波で、雪に包まれまして……
酒井
貴船って、けっこう京都の奥の方なんです。京都駅からでも……
山口監督
1時間は掛かりますよね。
中川
京都市内では全然大したことなくても、貴船は大雪みたいな所で。そんな中で、撮影が完全に一度ストップしたんですが、雪でもやろうよ!ってことになったんです。そこで、完璧な台詞がありましたよね。
酒井
大寒波のギリちょい前で、でも雪が降ってしまって。タイムループって同じ状況を繰り返すはずなんですけど、雪を待ってたら絶対に撮れない……しかも山の谷あいなので天気も変わりやすくて。なんとか雪があることにしようってことで、急遽脚本の上田(誠)さんが現場で「雪の状況を見るに、世界線が少しずつズレてるのかもしれません」という台詞を書いてくれたんですよね。

中川
エイジさんは説明的な長台詞が沢山あったから、めっちゃ大変だったんじゃないですか?
酒井
大体が僕の説明台詞で(芝居の時間が)調節されるんですよ。だから「この一言なくそう」とか直前に言われたり……正直テンパりはありました。撮り直しも多かったですよね。各シーン、テーク10以上とか……
山口監督
平均5回は絶対やってますね。

酒井
ただ、一回だけ僕の説明台詞が多いシーンで、一発OKがあったんですよ。
中川
そうなの!?それ、気持ちよかった?
酒井
あ、はい……そりゃもう(笑)。
中川
でも、それOK出してるのは監督じゃなく時計だからね(笑)。
酒井
しかも僕、(そのシーンで)時計持ってるんですよ。だから、ちょっとコントロールも出来たりして……もう、「時の番人」的な気持ちで。その分プレッシャーもありましたけど……(時間を)司ってたんで(笑)。

山口監督
旅館も広かったんで、大変でした。「用意、スタート」の前に「そろそろ行きますよー」って言うんですけど……
中川
その声が掛かると僕は裸になって準備して待ってるんですけど、「済みません、仕切り直しになりました」って言われてブチギレる、という(場内笑)。
酒井
中川さんは、初期位置が風呂場でしたもんね。
中川
その風呂場ももう極寒ですし、廊下も途中めちゃめちゃ冷たいんですよ!……寒いのって、伝わってますよね?大丈夫ですよね?よく「寒かったですよね?」って聞かれることが多いんですけど、「当たり前だ!」って(笑)。

酒井
でも、見た目、ずっと室内にいらっしゃるじゃないですか。今のように説明しないと、温かいのかな?とも思われると思うんですよね。まぁ、本当は温かかったんですから、あんまり言わないでほしいですけどね(笑)。
中川
いやいやいや!めちゃくちゃ寒かったよ(笑)!
酒井
いや、わかってますって(笑)。でも監督が「ここは寒いの感じは要らないんで、一回寒いの忘れましょう」って。
山口監督
ループしたら、体温も戻ってるはずなので(笑)。
中川
お前らさぁ、服着てるから言えるんだよ(場内笑)!

MC
カメラマンさんも、めちゃくちゃ大変だったと思います。
山口監督
そうなんですよ。『テルマエ・ロマエ』や『サマータイムマシン・ブルース』とか撮られてる川越(一成)さんがカメラマンさんなんですけど、大ベテランなのにあんだけ階段登ってもらったんです。氷点下なのにTシャツ一枚の時もあって……凄い熱意で撮ってもらってました。
MC
中川さんと同じく、近藤芳正(オバタ役)さんも愛知県の出身ですよね。
山口監督
初めてヨーロッパ企画の作品に出ていただいたので、恐縮しました。
中川
僕らが大学生の時お芝居を始めようっていう時に、もう大スターだった方ですからね。僕は「サンシャインボーイズ」の『ショー・マスト・ゴー・オン』っていう舞台を観て、演劇を始めてるんです。
酒井
その近藤さんと、(劇中で)コンビでしたもんね。
MC
ご一緒するのは初めてですか?
中川
初めてです。嬉しかったですし、緊張しました……憧れの人なので。食事に誘われたんですけど、お断りしましたもん。
酒井
えぇ!?
中川
「ご飯行こうよ」って言われたんですけど、「大丈夫です」って(場内笑)。
山口監督
全然名古屋(出身)じゃない石田剛太とか、ちょいちょい(一緒に食事に)行ってましたよね(笑)。
酒井
僕も、こないだ行ったところです。
中川
俺は、お断りして……でも、近藤さんが紹介してくれたビリヤニ屋さんには、行った。
酒井
いや、近藤さんと行きましょうよ(笑)。
中川
緊張しちゃうから……。


MC
最後に一言お願いします。

山口監督
公開一週目はどうなることかと思ったんですけど、僕ららしいと思うんですけど徐々に徐々に話題を広げていただいてまして、おかげさまで今日も満席をいただきまして感謝しております。まだまだ公開続けていきたいので、周りの皆さんに薦めていただいたり、映画館に投書していただいたり(笑)、してくださると嬉しいなと思っております。どうかどうか、引き続き応援のほど宜しくお願い致します。

酒井
僕らくらいの演劇やってる年代の人でも、大体出てくださった近藤さんがよく出ていらしたサンシャインボーイズだったり、大人計画だったりを目指したり、憧れたりして演劇をやってきたと思うんですけども。僕ら本当に学生の頃から小さい劇場で、面白いことはやってつもりなんですけど、あんまり観てもらえなかったり……
中川
……長いよ!完コピしなくて良いよ!!それ、本当に俺の日比谷の舞台挨拶、完コピじゃねぇか(笑)!!!「人生変えるくらいの」的な短いワードを言ってくれたら良いんだよ、ツッコむから(場内笑)。確かに俺言ってたけど……映像チェックしてくるなよ(場内笑)!
酒井
中川さんの舞台挨拶1分間の動画にしてもらって、さっきもトイレでずっと復習してたんですけど(笑)。

中川
それ、ツッコみ難いから(笑)!えぇと、そうですね……人生変える、世界変えようと思って、頑張って作った作品なんで!
酒井
おっ(場内拍手)♪

中川
「面白い作品やってるから!」と、名古屋の皆さんも周りに伝えてもらえればと思います。是非とも、皆さん宜しくお願い致します(場内拍手)!


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