
満開のソメイヨシノを打つ桜雨の名古屋、「gallery N」(名古屋市千種区鏡池通3-5-1)を訪ねた。

シネマスコーレ(名古屋市中村区椿町8−12 アートビル 1F)で開催された、『ギャラリーN映画展』。
2022年秋の、三木瑠都(Rutsu Miki)個展【眺望と陰影】。
2023年新春を飾った、宮内由梨(Miauchi Yuri)個展【Scar Script】。
ギャラリーN主催のイベントに足を運ぶのは、これが4度目となる。

3月25日(土)、初日を迎えたのは
大野未来 個展【ぞくぞくと】




大野未来(Miko Ono)さんは、2021年に名古屋芸術大学美術学部洋画コースを卒業。
【連続個展】(アートラボあいち(愛知)/2022年)【3331 ART FAIR】(3331 Art Chiyoda(東京)/2021年)【DELTA】(駒込倉庫(東京)|KAYOKOYUKI/2021年)など、愛知県を中心に精力的に活動している。
gallery Nにとって、大野さんは初出展の作家となる。

映画の話になるが、俳優は通常カメラのレンズを真っ直ぐ見詰めたりしない。
役者のカメラ目線を浴びせられた観客は、登場人物が誰に向かって話しているか見失う。

映画の鑑賞者は物語の世界観を理解し、没入しているものだから、登場人物があたかも物語の傍観者のはずであった自分という存在を意識させるような行動を取ると、途端に現実世界に引き戻されるのだ。

絵画の世界でも、基本は変わらない。
その基本が破られる分野が、肖像画だ。

だから、肖像画が集められた展示スペースというのは、とかく“圧”が凄い。

大野さんのドローイング作品は、肖像画ばかり。
しかも、人ならぬモノ……クリーチャーめいた存在が並ぶ。

観者を見詰め返す、目、眼、視。

壁のシミや亀裂、物の影などによって連想されるイメージから作品を生み出すという、大野さん。
3月25日開催されたオープニングトークで、何故そんな作品を生み出すのかが存分に語られた。
トークゲストは、豊田市美術館学芸員の能勢陽子さん。
卒展以来作品は知っていたものの、面と向かって会うのは初めてというお二人だが、そうとは思えない息の合ったトークが繰り広げられた。
描き方にこだわるより、心の有り様の取り出し方にこだわりたい。
アーティスト大野未来は、そう言った。
ならば、私たち観る者も、如何に観るかにこだわりたい。
大野未来 個展【ぞくぞくと】は、4月9日(日)まで「gallery N」で開催中。
大野さんの作品を鑑賞しにgallery Nを訪れるなら、是非とも離れの茶室で寝転んでほしい――。




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