2013年10月、クラブ「三愛」経営の男(70=東京都葛飾区新小岩)が警視庁保安課に逮捕された。
「三愛」は新聞(一般紙)に「茶飲み友達紹介」と告知していたのだが、これは高齢者に向けた売春の斡旋が目的の三行広告だった。
売春クラブ三愛の登録会員は、男性(平均年齢65歳前後)が約1000人、女性(平均年齢60歳前後)は約350人ということで、社会を震撼された。
「当該広告は『茶飲み友達の紹介』と理解し掲載していた。犯罪に利用されたことは誠に遺憾。今後はさらに慎重に審査する」
とコメントしたのは、三行広告を約10年載せていた東京新聞。
そんなニュースから着想を得た社会派群像劇が、公開開始から大きな話題となっている。
外山文治監督の最新作、『茶飲友達』だ。
『茶飲友達』ストーリー
日々黙々と家事をこなし一人で食事する時岡茂雄(渡辺哲)は、妻を亡くした独居老人。日課で目を通す新聞にある日見つけたのは、「茶飲友達、募集」という三行広告だった。
時岡が待ち合わせ場所のカフェに行くと、そこにいたのは会員制クラブ「茶飲友達(ティー・フレンド)」代表・佐々木マナ(岡本玲)と、女性会員「ティー・ガールズ」の道子(瀧マキ)だった。
「茶飲友達」の実体は高齢者専門の売春斡旋クラブで、マナは仲間(光永聖、海沼未羽、中山求一郎、鈴木武、佐野弘樹、アサヌマ理紗)達と共に、65歳以上の女性会員(岬ミレホ、長島悠子、百元夏繪、クイン加藤、海江田眞弓、楠部知子)らを派遣・送迎し、男性会員から集金するビジネスモデルを確立していた。
ある日、マナはスーパーで万引きを見咎められた松子(磯西真喜)を助ける。
疑心暗鬼になっている松子に、マナは「私のファミリーになって」と乞う――。
2月17日より待望のロードショー公開が始まった名演小劇場(名古屋市東区東桜2丁目23−7)でも、『茶飲友達』は大変な評判を呼んでいる。
2月25日(土)に開催された舞台挨拶を取材した。
外山文治監督、岬ミレホ(カヨ 役)さん、楠部知子(花子 役)さん、長島悠子(鞠子 役)さんが登壇した。
閉塞感あふれる、令和のニッポン。
高齢者も辛いし、若者も辛い。
老若男女、みな辛い。
生き方が揺らげば、正義も揺らぐ。
実際の事件を下書きに外山文治監督が創りだした物語は、私たちへの大いなる問いだった。
映画『茶飲友達』は、今をサバイブする私たちの為の、社会派群像エンターテインメントなのだ――。
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