個人的な話で恐縮だが、物事に対してまずは否定しないと気が済まない方が、私の知り合いにいる。
浅からぬ縁で恩義も感じていたためお付き合いしていたが、予め個人的に好むことを伝えていた事柄にすら否定的なアプローチで会話が始まることも多くあり、辟易とすることは少なくなかった。
やがて、私自らに否定する癖が移りつつあることに気付いた時、その方とは距離を置くことにした。
そんな時、私の助けになったのは、世の中に数多存在する「名品」だ。
百年、千年の時を越え、過去から現在まで残り続ける、名画、古美術、名曲。
これらは全て、先人たちが未来へと遺さんと努力を注いだからに他ならないことに、遅まきながら気付いたのだ。
名品を鑑賞するということは、過去の鑑賞者が時代を超えて送り続けた作品への愛を、肯定を、味わうということだ。
名品を目の前にすると、人は謙虚になれるのだ。
鑑賞することによって謙虚にさせてくれる作品は、年月を経ているものとは限らない。
数多くの人々の肯定が込められているなら、謙虚に鑑賞できる作品足りうると言えるだろう。
例を挙げるとするならば、やはり映画だ。
多くの場合、映画は(バジェットにより規模の大小はあれど)完成までに膨大な人の手が介在することになる文化である。
原案者が立案し、脚本家がシナリオを書き、俳優は役作りに腐心して撮影に臨む。
構図に従い撮影機材が、ロケーションに合わせ録音機器が、必要に応じ照明設備が揃えられ、衣装が合わせられ、必要な美術が用意される。
監督からOKが出された作品は、編集作業を経て、プロデューサーが最終ジャッジを出し、配給は作品に相応しい興行を考える。
映画は、携わった人々のすべての肯定があって、初めて完成する。
映画は、いいものに決まっているのだ。

そんな「映画はいいもの」という想いを全力で肯定する映画が、2月10日(金)より全国公開される。
城定秀夫監督『銀平町シネマブルース』だ。
セミナーで映画好きのホームレス・佐藤(宇野祥平)、借金まみれの梶原(吹越満)と知り合った近藤は、梶原が支配人を務める映画館「銀平スカラ座」で住み込みバイトを始めることになる。
銀平スカラ座は赤字経営が続くミニシアターで、バイト仲間、エリカ(藤原さくら)・美久(日高七海)、老練な映写技師・谷口(渡辺裕之)が働いている。
60周年を迎えるスカラ座ではイベントの目玉になる企画を探していて、常連客(中島歩、木口健太)らもアイデアを出し合っていた。
そんな時、自主映画界では知る人ぞ知るカルト監督という近藤の素性が明らかになる。
近藤にはかつて撮りあげたホラー映画があったのだが、とある事情によりお蔵入りとなっているのだ――。

給料が遅れても働き続けるエリカ・美久を演じる、藤原さくら・日高七海。
フィルム、デジタル問わず真摯に映写する谷口を演じる、渡辺裕之。
映画館に、作品に、そして映画そのものに係わることを心から願う常連たちを演じる、中島歩、木口健太、黒田卓也、小鷹狩八。
初監督作を憧れの劇場で公開せんと奔走する谷内を演じる、小野莉奈。
元女優とその娘を演じる、さとうほなみ・谷田ラナ。
息子の面影をスクリーンに求める母を演じる、片岡礼子。
スカラ座に集う人々は、みな映画愛に溢れ、例外なく映画を肯定する。
そんな人々の想いを受けて、飄々と踏ん張る支配人を演じるのが、吹越満だ。
そして、映画への肯定を体現する人物・佐藤を演じるのが、宇野祥平だ。

その中で、一人だけ映画を肯定できない人物が、かつて映画監督だった近藤だ。
良太郎(平井亜門)とのことが原因で、映画にOKが出せなくなってしまった近藤。
近藤がかつての自分を、人生そのものを取り戻す切っ掛けとなるものが、やはり映画だというのがまた痛快だ。
近藤を演じるのが『銀平町シネマブルース』が本格的な主演復帰作となる小出恵介というのは、まさに適役としか言い様がない。
「映画愛を込めた映画」をこれだけ奇を衒わずに描けるのだから、城定秀夫監督は、流石だ。
そして、いまおかしんじ脚本は、流石だ。
ありがとう、『銀平町シネマブルース』。
スクリーンに肯定が、愛が溢れているからこそ、今日も生きていける――。

新宿武蔵野館
センチュリーシネマほか
全国公開順次公開
©2022「銀平町シネマブルース」製作委員会
浅からぬ縁で恩義も感じていたためお付き合いしていたが、予め個人的に好むことを伝えていた事柄にすら否定的なアプローチで会話が始まることも多くあり、辟易とすることは少なくなかった。
やがて、私自らに否定する癖が移りつつあることに気付いた時、その方とは距離を置くことにした。
そんな時、私の助けになったのは、世の中に数多存在する「名品」だ。
百年、千年の時を越え、過去から現在まで残り続ける、名画、古美術、名曲。
これらは全て、先人たちが未来へと遺さんと努力を注いだからに他ならないことに、遅まきながら気付いたのだ。
名品を鑑賞するということは、過去の鑑賞者が時代を超えて送り続けた作品への愛を、肯定を、味わうということだ。
名品を目の前にすると、人は謙虚になれるのだ。
鑑賞することによって謙虚にさせてくれる作品は、年月を経ているものとは限らない。
数多くの人々の肯定が込められているなら、謙虚に鑑賞できる作品足りうると言えるだろう。
例を挙げるとするならば、やはり映画だ。
多くの場合、映画は(バジェットにより規模の大小はあれど)完成までに膨大な人の手が介在することになる文化である。
原案者が立案し、脚本家がシナリオを書き、俳優は役作りに腐心して撮影に臨む。
構図に従い撮影機材が、ロケーションに合わせ録音機器が、必要に応じ照明設備が揃えられ、衣装が合わせられ、必要な美術が用意される。
監督からOKが出された作品は、編集作業を経て、プロデューサーが最終ジャッジを出し、配給は作品に相応しい興行を考える。
映画は、携わった人々のすべての肯定があって、初めて完成する。
映画は、いいものに決まっているのだ。

そんな「映画はいいもの」という想いを全力で肯定する映画が、2月10日(金)より全国公開される。
城定秀夫監督『銀平町シネマブルース』だ。
『銀平町シネマブ ルース』ストーリー
文無し、宿無しで途方に暮れていた近藤(小出恵介)は、声を掛けてきたブローカー・黒田(浅田美代子)が開く生活保護セミナーに参加する。セミナーで映画好きのホームレス・佐藤(宇野祥平)、借金まみれの梶原(吹越満)と知り合った近藤は、梶原が支配人を務める映画館「銀平スカラ座」で住み込みバイトを始めることになる。
銀平スカラ座は赤字経営が続くミニシアターで、バイト仲間、エリカ(藤原さくら)・美久(日高七海)、老練な映写技師・谷口(渡辺裕之)が働いている。
60周年を迎えるスカラ座ではイベントの目玉になる企画を探していて、常連客(中島歩、木口健太)らもアイデアを出し合っていた。
そんな時、自主映画界では知る人ぞ知るカルト監督という近藤の素性が明らかになる。
近藤にはかつて撮りあげたホラー映画があったのだが、とある事情によりお蔵入りとなっているのだ――。

給料が遅れても働き続けるエリカ・美久を演じる、藤原さくら・日高七海。
フィルム、デジタル問わず真摯に映写する谷口を演じる、渡辺裕之。
映画館に、作品に、そして映画そのものに係わることを心から願う常連たちを演じる、中島歩、木口健太、黒田卓也、小鷹狩八。
初監督作を憧れの劇場で公開せんと奔走する谷内を演じる、小野莉奈。
元女優とその娘を演じる、さとうほなみ・谷田ラナ。
息子の面影をスクリーンに求める母を演じる、片岡礼子。
スカラ座に集う人々は、みな映画愛に溢れ、例外なく映画を肯定する。
そんな人々の想いを受けて、飄々と踏ん張る支配人を演じるのが、吹越満だ。
そして、映画への肯定を体現する人物・佐藤を演じるのが、宇野祥平だ。

その中で、一人だけ映画を肯定できない人物が、かつて映画監督だった近藤だ。
良太郎(平井亜門)とのことが原因で、映画にOKが出せなくなってしまった近藤。
近藤がかつての自分を、人生そのものを取り戻す切っ掛けとなるものが、やはり映画だというのがまた痛快だ。
近藤を演じるのが『銀平町シネマブルース』が本格的な主演復帰作となる小出恵介というのは、まさに適役としか言い様がない。
「映画愛を込めた映画」をこれだけ奇を衒わずに描けるのだから、城定秀夫監督は、流石だ。
そして、いまおかしんじ脚本は、流石だ。
ありがとう、『銀平町シネマブルース』。
スクリーンに肯定が、愛が溢れているからこそ、今日も生きていける――。

映画『銀平町シネマ ブルース』
2023年2月10日(金)〜新宿武蔵野館
センチュリーシネマほか
全国公開順次公開
『銀平町シネマブルース 』公式サイト
https://g-scalaza.com/©2022「銀平町シネマブルース」製作委員会
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