2022年10月から始まった、
アジマカズキ初ソロアルバム
「みちくさ音楽」
CD完成記念お披露目ライブ
2023年1月22日(日)、Flying Doctor(フライング・ドクター)岩田ゆいこ(yuipu)を迎え、【其の九】が畑と昭和と音楽酒場 はな咲(名古屋市中区伊勢山1丁目9−13)で開催された。
以前のレコ発ライブのレポートの動画を見てくれた映画仲間が、
「大瀧詠一のよう」
という感想をくれた。
なるほど……
今回のライブは、アジマカズキの初ソロアルバムの発売を記念して開催されているツアー。
「みちくさ音楽」は、主に名古屋で活躍するミュージシャン達が全曲をサポートする、でら贅沢な構成。
フクラ本舗
パーポーズ
そらしの(madoromi)
春日井直人(RadicalHumanism)
スティーブジャクソン
あしかけオーケストラ
うかいありな
みうらまい
etc.....
サポート陣には、東海のライブシーンに不可欠なメンバーが綺羅星の如く並ぶ。
これは確かに、大瀧詠一が率いた所謂「ナイアガラファミリー」を彷彿とさせる。
【其の九】でジョイントを買って出た岩田ゆいこも、彼女が所属するポップ・クラシック・トリオ「Flying Doctor」も、もちろん「みちくさ音楽」を支えるミュージシャンの一員。
岩田ゆいこは、ライブの初端を飾るステージを務めた。
1st Stage Setlist:
美しきロスマリン(Fritz Kreisler)
ユーモレスク(Antonín Leopold Dvořák)
早春賦
金平糖の踊り(Peter Ilyich Tchaikovsky)
Gavotte en Rondeau(Johann Sebastian Bach)
チャルダッシュ(Vittorio Monti)
Encore:
「四季」より『冬』第1楽章(Antonio Vivaldi)
と、クラシックを中心にしながらも、ノリの良いポップなステージに仕上げて魅せるのは、流石はyuipu。
ステージの一曲目を飾ったのは、クライスラーの名曲『美しきロスマリン』。
MCにあったようにロスマリンとは花の名前だが、日本では英語圏で呼ばれている「ローズマリー(Rosemary)」で通っている。
ローズマリーの花言葉は「追憶」「呼び起こす思い出」なので、これほど岩田ゆいこが伝道するクラシック音楽に相応しい花はあるまい。
続いては、メインであるアジマカズキのステージ。
Main Stage Setlist:
旅立ち前の歌さよならプリンス
夜を煮る
チェリー(スピッツ)
天の川があふれた夜に
羽がないのに
と、カバー1曲以外はほぼ全曲「みちくさ音楽」からの楽曲で構成。
『旅立ち前の歌』や『夜を煮る』など、ミニマムだとアルバムとは印象をガラリと変えるアジマ作品は、その懐の深さを存分に発揮していた。
アジマカズキは、日本映画界が誇る名匠・原恵一監督が描く人物を、どこか彷彿とさせる。
特に、2010年の傑作『カラフル』を想い起こさせる。
何がそうさせるのか……まずは容姿だと思う。
そして、優しくて、少しシニカルなところ。
自分の軸となる表現をしっかりと持っていて、平凡なことの大切さが分かっているところ。
『カラフル』の主人公・真は美術部だったが、早乙女くんと一緒の高校に進学したとしたら、大人になるとアジマカズキになるのではないか……そんなことを妄想している。
アジマはメインステージで
「アンコール(のリクエスト)は、要りません。この後のコラボが、長いアンコールみたいなものなので」
と煙を巻いていた。
その看板に偽りなしで、岩田ゆいことのコラボレーション・ステージは、小一時間というサービスたっぷりのスペシャルライブとなった。
COLLABO Stage Setlist:
ストーク(hosovoso)星を食べる(たま)
生活の柄(高田渡)
僕の万年床
がぁでぃあん
Encore:
罪とペンシル
六月の雨の夜、チルチルミチルは(友部正人)
と、カバー、アルバム曲と絶妙なバランスで、オーディエンスからの歓声、手拍子を引き出す素晴らしいステージだった。
アジマは最後の曲で、「黒い車」を「青い車」、「空の鳥かご」を「鳥のかご」と、原曲の歌詞と違えて歌った。
ライブの後で訪ねてみると、
「間違えました!!!」
ととぼけられたが、曲の登場人物たちがメーテルリンクの童話のように、ほんの少しだけでも「青い鳥=幸福」を感じていたなら……という気持ちが滲み出たのだと思えてならない。
長らく続いた【アジマカズキ初ソロアルバム「みちくさ音楽」CD完成記念お披露目ライブ】だが、いよいよ明日
1月29日(日)Rolling Man(名古屋市中区新栄3丁目18−27 ホワイトハウス新栄 1F)
を以て、ファイナルを迎える。
だが、単なる通過点であるレコ発ライブが一区切り付いただけで、アジマカズキからはこれからも目が離せない。
アジマはソロだけでなく、「すぱっつ」というバンド活動もある。
そして何より、地元ミュージシャン達と培ってきた絆は、今後いっそう大きな花を咲かせるに違いない。
大瀧詠一にナイアガラファミリーがいたように、
アジマカズキには「ナゴヤガラ」ファミリーがいるのだ――。
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