カンフー メイン

「カンフー」、漢字表記では「功夫」。
元々は「修練の賜物」「練習の成果」くらいの意味だそうで、「充分な功夫を得る」「功夫が足りない」といった用法で使うようだ。
日本語として根付いている「工夫」にも、近しい意味が見てとれる。

北京語で“Gongfu(ゴンフ)”と発音される「功夫」を“kung fu”と発音するのは広東語で、両広地方に於いて「功夫」は中国武術のことを指す。
中国武術で重要視される鍛錬を表す「功夫」という言葉が、武術そのものを表すようになったのだろう。
世界中で中国武術のことを「カンフー」と呼ぶようになったのは、香港が広東語圏に含まれる故の必然なのだ。

サブ1

そう、中国武術をルーツとしたアクションを語るなら、香港映画を外すことは絶対に不可能である。
ブルース・リー(李小龍)、ジャッキー・チェン(成龍)、サモ・ハン(キンポー:洪金寶)、ジェット・リー(李連杰)、ドニー・イェン(甄子丹)……綺羅星の如く並ぶカンフーアクションの巨星たちは、今やハリウッドはもちろん世界を席捲するアクションスターだ。
だが、彼らをスターダムに押し上げたのは、自身の実力もさることながら、彼らの撮影現場に付き従ったスタント・チームの存在なしには語ることができない。

サブ2

ジェット・リーの足払いで派手に吹っ飛び、サモ・ハンの打撃で高層階の窓を突き破り、カメラテストでジャッキー・チェンに変わって落下する――
決して「Noを言わない」スタントたちの偉業を再発見できるのが、2023年1月6日(金)より全国ロードショー公開となる『カンフースタントマン 龍虎武師』だ。

輝かしいアクションスターを裏から支えた、言うなれば陰の存在であるスタントマンに光を当てたドキュメンタリー映画を監督したのは、プロデューサー・映画評論家として名高い、ウェイ・ジュンツー(魏君子)。
3年をかけた徹底取材の甲斐あって、ユエン・ウーピン(袁和平)、スタンリー・トン(唐季禮)、チン・シウトン(程小東)、トン・ワイ(董瑋)、チン・カーロッ(錢嘉樂)、マース(火星)、ユエ・タウワン(魚頭雲)、ディオン・ラム(林迪安)、ユン・ワー(元華)、ツイ・ハーク(徐克)、アンドリュー・ラウ(劉偉強)、エリック・ツァン(曾志偉)、ウー・スーユエン(吳思遠)といったスタントマン、俳優、監督ら香港アクション映画を代表する大御所が、多数出演。
加えてなんと、サモ・ハン、ドニー・イェン、ブルース・リャン(梁小龍)といったアクションスターたちが、自ら現場の様子を熱く語っている。

サブ3

そして、香港カンフーアクションのルーツは、京劇にあること……かつて香港に4校存在した京劇の専門学校には、驚くほどの逸材が通ったこと……立つべき舞台を失くした俳優たちを救った、新興映画会社のこと……とにかく貴重な上に興味深い証言が、次から次へと飛び出してくる。
何よりも、彼らの全面協力を取り付けたことにより、『大福星』(85)、『ファースト・ミッション』(85)、『ファイヤー・ストーム』(13)、『おじいちゃんはデブゴン』(16)など、豪華すぎるアーカイブ映像が膨大に散りばめられており、アクションムービーのフッテージにどっぷりと浸かる他の作品では味わえない映像体験ができる。

サブ4

ドキュメンタリーなのに血沸き肉躍る『カンフースタントマン 龍虎武師』だが、賢明なる諸氏は映画を観ずとも危惧するであろう……この映画で語られている撮影現場は、21世紀の現代では有り得ないことなのだろう、と。
(敢えて言うが)コンプライアンスに目を瞑り、ハラスメント行為も厭わぬ危険を伴う撮影は、CG、そしてSFX等の特殊効果が日進月歩で発展し続ける現代には似つかわしくないのかもしれない。

サブ5

スクリーンに宿る「狂気」を若き映画ファンが過去作でしか感じられなくなる前に、今こそ考えるより感じてほしい。
身体を張ったアクションシーン全てが「ロストテクノロジー」と化してしまう前に、本物のアクションを目に焼き付けたい。

サブ7

そして、過剰とも思えるほどのスタントシーンを、何とか時代に即した形でサバイブさせてほしいと願わずにはいられない。
スタントマンたちが決して「No」を言わずに脈々と受け継ぐ、「功夫」(=技術、研鑽)として――。

サブ6

映画『カンフースタントマン 龍虎武師』

2023年1月6日(金)より
新宿武蔵野館
名演小劇場

ほか全国公開

『カンフースタントマン 龍虎武師』公式サイト

https://kungfu-stuntman.com/