和食の生命である出汁の一滴が感動を齎した『千年の一滴 だし しょうゆ』から、7年。
柴田昌平監督のカメラが「千」の次に迫ったのは、「百」だった。
タイトルを、
『百姓の百の声』
という。
千が百になったからといって、柴田監督の視点は断じてスケールダウンしてはいない。
そもそも日本で農業従事者を指す「百姓」とは、一般人、庶民を意味する漢語が語源で、農業を掘ることは日本の食そのものに迫ることに他ならない。
稲作の匠、薄井さん。
トマトのフロンティア、若梅さん。
新たな米作りにチャレンジし続ける、横田農場。
国産米で養鶏する秋川牧園と、無謀な要求に応えた稲作名人海地さん。
新たなキュウリ農法を自身の経験でアップデートした、山口さん。
発酵を施した土で米を生みだす、斉藤さん。
野菜の苗を「外科手術」する、高橋さん。
600種(!)もの在来種を育てる、「いろいろ米」の上野さん。
畑に合う種を研究し続ける、魚住さん。
高級ブドウを輸出する、深谷さん。
山菜の人工栽培を確立した、細川さん。
森林資源を活用して真冬にトマトを穫る、清友さん。
ナレーションを担当する、遠藤さん、田中さん、横田さんもまた、全員がお百姓さんだ。
12月25日(日)、名古屋シネマテーク(名古屋市千種区今池1丁目6−13 スタービル 2F)には、柴田昌平監督が初週舞台装置に訪れた。
上映後に行われたアフタートークを取材したので、動画で紹介する。
「柴田“監督”と呼んだら、罰金です」と言う柴田監督は、「僕は、生徒みたいなものですから」と笑った。
名古屋シネマテークのロビーにはサインを求める観客が長蛇の列を作ったが、その誰もがちょっと口ごもりつつも「柴田…さん」と笑顔で呼びかけていた。
口々に寄せられる感想は多様だが、どれも「映画から、学んだ」という内容ばかりであった。
監督も、観客も、皆が何かを学ばんとする。
きっとそれが、本質なのだ。
ドキュメンタリー映画とは、そういうものなのだ――。
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