12月がやってきた。
ニューヨーク・ダコタハウスに銃声が響いた夜以来、12月8日は「イマジン」を歌う日になった。
世界中の音楽ファンのみならず、平和を願う全ての人々が悲しみに暮れた、12月がやってきた。
平和の求道者、愛の伝道師、神に祝福されし音楽家、そしてチーフ・オブ・ビートルズである、ジョン・レノン。
ジョンの作品は今も人々に喜びをもたらし、ジョンの死は今も世界に絶望をもたらす。
12月8日(木)より公開となる『ジョン・レノン ～音楽で世界を変えた男の真実～』は、ジョン・レノンの半生に迫るドキュメンタリー映画である。
世界には、今こそ音楽が、平和が必要だ。
ビートルズ研究家のデイヴィッド・ ベッドフォード氏と、詩人・作家のポール・ファーリー教授が語り手を務める『ジョン・レノン ～音楽で世界を変えた男の真実～』は、英国ナショナル・フィルム・アワードで最優秀ドキュメンタリー映画賞にノミネートされた2018年製作のドキュメンタリー。
監督、編集は、ロジャー・アプルトン。
未公開の映像・資料、ジョン・レノンの幼馴染みや大学時代の同級生、元バンドメンバーなど多彩な関係者のインタビューからなる貴重な映像の数々は、ジョン・レノンの、ビートルズのファンならずとも心を打つこと請け合いだ。
「マザー」のセカンドコーラスで“You left me”(あなたは僕を捨てた)と歌われた、実父アルフレッド・レノンの足取り。
ジョンの友人が生々しく語る、実母ジュリアの事故の現場。
フェミニストらしからぬ、シンシアとの結婚生活。
ジョンを激しく打ちのめした、二つの訃報。
ジョン・レノンを知る音楽ファンは、知られざる事実に驚くことだろう。
ビートルズやレノン＝マッカートニーに縁のなかった人々には、新鮮に映ることだろう。
ビートルズのアマチュア時代であるシルバー・ビートルズについては文献で知っていた私も、その前身となったクオリーメンがスキッフル・バンドであったことは知らなかった。
スキッフルとは音楽ジャンルというよりはバンドの一形態で、ギターやバンジョーの他は、ティーチェスト(茶箱)ベースやウォッシュボード(洗濯板)を組み入れた簡素な所謂ガレージバンドを指す。
20世紀の初頭にアメリカで台頭したそうで、1950年代のイギリスでリバイバルブームが起きていたと聞く。
クオリーメンがスキッフルバンドではなく、結成当時からちゃんとした(という表現もおかしいが)楽器編成のロックバンドだったとしたら、腕自慢のポール・マッカートニーをバンドに迎え入れることはなかったかもしれない。
ポールの後輩でギター名人として名を馳せていたジョージ・ハリスンがメンバー入りすることもなかったかもしれない。
『バック・ビート』(1994年)で一躍有名になった「もう一人のビートルズ」スチュアート・サトクリフとの邂逅もなかったかもしれない。
そもそも、ザ・ビートルズは生まれていなかったかもしれない。
改めて、人の生涯とは奇跡のような縁の積み重ねによって成り立っていることを、まざまざと感じる。
縁といえば、ジョン・レノンが敬愛したというあのロックンローラーについて作中で語られなかったのが意外だった。
後年、ビートルズ時代の自作について訴訟騒ぎが起きるほど、かのミュージシャンを信奉していたはずなのに――。
そんな疑問を紐解いてくれるかもしれない魅惑のイベントが、『ジョン・レノン ～音楽で世界を変えた男の真実～』公開を記念して開催される。
12月9日(金)より公開が始まる名演小劇場(名古屋市東区東桜2丁目23番7号)では、
音楽評論家の小川真一氏によるトークイベント付き先行上映「前夜祭」が、12月8日(木) 19:15より
ビートルズ研究家で本作の監修にも名を連ねる藤本国彦氏によるトークイベント付上映が、12月10日(土)10:00より
それぞれ開催される。
1980年12月8日から、42年。
パンデミック、戦争……貧困、格差、差別……
私たちには、今こそ必要なのだ。
音楽と、平和が――。
ドキュメンタリー映画
『ジョン・レノン ～音楽で世界を変えた男の真実～』
2022年12月8日(木)〜
アップリンク吉祥寺ほか
2022年12月9日(金)〜
名演小劇場ほか
全国順次ロードショー
キャスト
Gary Mavers （ナレーション／声の出演）
Rod Davis （ザ・クオリーメン）
Bill Smith （ザ・クオリーメン）
Colin Hanton （ザ・クオリーメン）
Len Garry （ザ・クオリーメン）
Chas Newby （ザ・ビートルズ）
David Bedford （ザ・ビートルズ歴史研究家）
Paul Farley （詩人、作家）
監督・編集
Roger Appleton
製作
Garry Popper
製作総指揮
David Rogers
Steven Rogers
Marcus Searancke
Alena Walker
John Adams
監修
ピーター・バラカン
藤本国彦
配給
NEGA
上映時間：93分 / 製作：2018年（英）
©SEIS Productions Limited
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