前作で、富山県の「はりぼて」加減を赤裸々に描き、その様は日本の縮図に過ぎないことを暴いた挙げ句、監督自らの去就の顛末までも写し切ることで、観る者を他人事ではいられなくする――。
五百旗頭幸男(いおきべ ゆきお)監督の作家性は、新作ドキュメンタリー映画『裸のムラ』でも、存分に発揮される。
(チューリップテレビ、石川テレビにて数々の傑作ドキュメンタリーを撮り、ギャラクシー賞も受賞している五百旗頭監督だから、『はりぼて』(2019年/監督:五百旗頭幸男、砂沢智史)を「前作」と言うのも違和感があるのだが)
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『裸のムラ』の舞台は、五百旗頭幸男監督の新たなホームグラウンド、石川県。
石川県庁から望む金沢湾に沈む夕日も実に見事な古都は、北陸が誇る保守王国でもある。
在位7期27年目という現職最長の県知事・谷本正憲は、コロナ禍に臨み問題発言も問題行動も繰り返すが、周囲は忖度するばかり。
そんな谷本知事の8選出馬に待ったを掛けるのは、選対本部長を務めていた衆議院議員・馳浩。
フィクサーには、地元出身でオリンピック村の頂点にいた「あの人」の姿が見え隠れする。
古邨・能登の市井には、様々なニューカマーが暮らしている。
金沢モスク設立に奔走した、松井誠志、ヒクマ・バルベイド夫妻と、同じくムスリムである子どもたち。
夫妻ともにバックパッカーの経験から、バンライファーを支援するシェアハウス「田舎バックパッカーハウス」を能登で経営する、中川家。
見えない同調圧力、様々な偏見、差別、コロナ警察……
砂を噛むような市民の生活をよそに、金沢県庁では今日も丁寧に茶器は拭われ、庁外でも大規模な飲食会が開催される。
10月16日(日)、『裸のムラ』公開二日目の名古屋シネマテーク(名古屋市千種区今池1丁目6−13 スタービル 2F)に、五百旗頭幸男監督が登壇した。
舞台挨拶の様子を取材したので、動画でレポートする。
「モヤモヤしないで映画館から帰られるのが、いちばん嫌なんですよね」
五百旗頭監督は、そう言って笑った。
ドキュメンタリー監督ならではの、言葉だ――。
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