
お馴染み、月イチなのに今月2度目(笑)トークライブ企画【松岡ひとみのシネマコネクション VOL.22】が7月24日(日)、ミッドランドスクエアシネマ(名古屋市中村区名駅4丁目7−1 ミッドランドスクエア5F)で開催された。
上映作品は、前週よりロードショー公開が始まったばかりの超注目作、『キングダム2 遥かなる大地へ』!
司会はもちろん松岡ひとみさん、そしてモデルで映画ナビゲーターのヴィトルさんと共に、佐藤信介監督を迎えてのトークが繰り広げられた。


『キングダム2 遥かなる大地へ』ストーリー
古代中国、春秋戦国時代。舞台となるのは、西方の大国「秦」。孤児である信(山﨑賢人)は、奴隷同然の使用人だが、天下の大将軍という大望を抱いている。
共に立身出世を誓いあった幼馴染の漂(吉沢亮)を喪うという悲劇に見舞われながらも、若き王・嬴政(吉沢亮:二役)に力を貸すことになる。
信らは、盟友・河了貂(橋本環奈)、山の民の王・楊端和(長澤まさみ)の協力を取り付け、クーデターの鎮圧に成功。
嬴政は玉座を奪還、秦の王として返り咲いた。
信が秦軍に参戦して半年後、隣国「魏」の侵攻を迎え討つとの嬴政の勅令が発せられる。
信は、同郷の兄弟・尾平(岡山天音)、尾到(三浦貴大)、少年のような羌瘣(清野菜名)と共に、頼りない伍長・澤圭(濱津隆之)が率いる伍隊に組みこまれてしまう。
戦の天才と言われる魏の総司令官・呉慶(小澤征悦)に対し、秦の総大将は豪将・麃公(豊川悦司)将軍。
信の伍が配属された千人隊を指揮する縛虎申(渋川清彦)は、戦術上の重要拠点・蛇甘(だかん)平原の丘を奪還すべく、無謀ともいえる突撃命令を下す――。

松岡ひとみ お忙しいので、お呼びするのも迷ったくらいなんですが……
佐藤信介監督 ちょうど一年前、『今際の国のアリス シーズン2』という作品を撮ってたんですよね。あるシーンを撮るために、名古屋で道路を全面封鎖しまして……多分、日本映画史上空前の封鎖だったと思うんですけど、その時松岡さんに遊びに来ていただいて。「舞台挨拶がある時は、是非」という約束を、一年ぶりに果たせました。
ヴィトル その時の作品は、12月にNetflixで観られるんですよね?
佐藤監督 配信されるので、観たら「あのシーンか!」と思っていただけると。あの時は本当にありがとうございましたと、お礼を申し上げたいと思います。

松岡 『キングダム2』、凄い迫力でした。
ヴィトル 何回観ても楽しめますよね。
松岡 朝から凄い熱量の映画を観て、疲れてしまった方もいらっしゃるかもしれませんね。
佐藤監督 そうですね。僕らも一日一回くらいしか観れないかな、なんて言ってたんですけど(笑)。ちょっと元気が無くなることも多い昨今なんで、吹き飛ばす作品を作りたいと思って。逆に、今に相応しい作品なんじゃないかと。
松岡 信(山﨑賢人)さんは、前にしか進んでいかないですからね。監督、信介さんと信さんで、何だかご自身のような感じなんじゃないですか?
佐藤監督 そうですね。実は『キングダム』の1をやる前から、ちょっと意識してたんです。田舎から都会に出てきて、一旗揚げる辺りまでは僕と同じだったんで……僕は、広島なんですけど。
松岡 前作は、どちらかというと個人対個人だったんですけど……
ヴィトル そうですよね。今作は、多勢じゃないですか。人が増えると、撮影も大変じゃないですか?
佐藤監督 本当に、大変です。今回「伍」という仲間を作品に盛り込むのがテーマだったんですが、映画は2時間なので最小限の中で自然な感じで(登場人物を)追いかけていくのが、難しいというか、やり甲斐がありました。
ヴィトル 戦車隊が実現できたのは、吃驚しました。
佐藤監督 まず戦車を作るんですが、日本にはない訳ですよ。中国にはモデルになる物があるんですが、それをそのまま使える訳ではないので、日本に設計図を取り寄せてキングダムオリジナルの戦車を作りました。戦車は二輪なんですが、四輪を作れても二輪で作れる人は日本に一人か二人くらいしかいらっしゃらなくて。お住まいの北海道で作ってテストしてもらって、来てもらって打ち合わせをして……そこからでした。戦車を作ったら、2頭の馬で牽っぱるんですけど、並行して走らせるのが難しいんですよ。日本の馬はもうそんなことしてないので、真っ直ぐ進まないんです。その練習を、来る日も来る日もやりました。映像を作るのも大変でしたけど、調教の方が時間かかったかもしれません。

ヴィトル 原作からもアニメ版からも良い感じにアレンジが加えられていて、観ていてワクワクしました。
佐藤監督 このストーリーを漫画で描いた場合、原泰久先生の傑作がある訳じゃないですか。アニメ化もされています。で、映画には映画のエッセンスなり、スパイス……映画の良さがあるんですね。ストーリーは大きくは同じなんですけど、色んなカスタマイズをしてるんです。映画の本当の面白さを込めないと、他の物と同じになってしまうので。
松岡 キャラクターは多いのに、全然迷子になりませんでした。これは、登場人物がしっかり描けてるからだと思います。
佐藤監督 「この人はこうだ」と思ったら、それを掘っていったり、カリカチュア、強調することを仕向けたところがあります。僕は撮ってる時、原作を現場に置いといて見るってことはないんですよね。一回バイブルとして自分の中に染み込ませて、脚本作ってから始まる段階で段々と拡大解釈が進んでいくんです。役者さんも、例えば渋川(清彦)さんの中には縛虎申が入っているので、原作を見ながら真似するということではないんです。信(山﨑賢人)も、そうです。始まったら、答え合わせはないんですよ。もう前に前に進んでいるというか、それぞれがこの世界を生きてるんじゃないかと思います。
ヴィトル 麃公将軍(豊川悦司)は、めちゃめちゃリンクしてると思いました。
佐藤監督 それも、原作見ながらミリ単位でやってることではないんですよね。イメージ画を描いて、「この人は、こうだよね」ってゼロから作るところがあって、試行錯誤しながら行き着くんです。羌瘣(清野菜名)なんかはイメージカラーは赤ですが、色んな色を試してるんです。一回何もかもを忘れてトライしてるんですね。
松岡 私は原作をあまり知らないんですが、楽しめました。
佐藤監督 原作を全く知らない方……もしかしたら日本の方ではないかもしれない方に届いた時、頭から観てちゃんとグッと来るかとか、そっちばかり考えてるかもしれません。ファンのことを忘れてるってことはありませんが、一方で(原作を知らない観客を)置き去ってはいけないので、一本の映画としてオリジナル作品のつもりで作っています。
松岡 脚本に原作者の原さんが参加していますが、こんなことは珍しいのでは?
佐藤監督 そうですね、あんまり無いですね。今作では1の頃から私たちは割りと親しく会って、キャスティングの話とかも忌憚なく話し合ってたりしました。脚本も読んでもらったら、「この台詞、こんなのどうでしょう?」みたいな赤が入ってたこともあったり。今回は映画オリジナルシーンも入ってるんですけど、漫画のネームで提案されたりとか。
松岡 撮影は2019年からとか。コロナの影響もあって、大変だったのでは?
佐藤監督 1もそうなんですけど、日本と中国で撮ってます。中国で撮るシーンを残して日本で撮影してたんですけど、2年前の11月くらいに「今日ビザが取れないと、スケジュール上(中国に)行けない」ことが確定する日が来てしまったんです。全部日本で撮るのは絶対無理なので、中国でチームを組んでもらいました。僕と打ち合わせの出来るトップの方を立ててもらって、キャストの衣装なんかも全部送って。そんなことが本当に可能なのか……誰もやったことがなかったんですけど、やりました。思わぬところが日本だったり、思わぬところが中国だったり……スタッフが観ても、分からなくなってたり(笑)。いつも映画マジックを使うんですけど、今回はそれを全投入した感じですね。
松岡 今回、馬のシーンも凄かったですね。
佐藤監督 今回ほど馬と取り組んだ作品も、ちょっとないんじゃないかと。日本ではあんまり映画に使える馬の頭数がいないので、かき集めたんですけど、まだ少なかったんです。中国にはいても、今作は何千何万騎って話なので、やはり足りなくて。それをあたかも足りてるように見せるのが、映画なんですが(笑)。どちらにせよ馬をたくさん扱ったことに間違いはなくて、しかも馬一頭に付き世話をする人も要る……もう、馬と共に生きたんですけど、それだけで億単位のお金が動いてたりするんですね。
松岡 山﨑賢人さんの身体能力、凄いですね。
佐藤監督 実は最初、馬に乗れなかったんで、乗馬訓練から始まったんですね。前作では、乗ってたんですけど、動かなかったので。それがもう、まるで昔から乗ってたんじゃないかと思うくらい、乗りこなしてましたね。麃公将軍とのランデブーのシーンはどうしてもやりたかったんですけど、あれは実際に走ってるんですよ。もう、疾走ですよね。
ヴィトル 羌瘣が舞いながら戦うシーン、本当にワクワクしました。
佐藤監督 羌瘣(清野菜名)に関しては、(敵兵に)取り囲まれるシーンがクランクインだったんです。何も撮っていない状態にいきなり「トーンタンタン」から入らなきゃいけないのって一番難しいと思ったんですけど、逆に身体を動かすところから始めるのも、解れて良いんじゃないの?って(笑)。ちなみにこの映画のクランクインは、3人(山﨑賢人、吉沢亮、橋本環奈)が揃うシーンだったので、それは凄く気持ちよかったんですけどね。

Q. 『キングダム』のようにイメージの固まっている作品は、どのようにキャスティングするのですか?
佐藤監督 それは、悩むところなんですよね。(原作に)似てる方が良いのか、その人の世界を持ってる人が良いのか、そこで迷いますよね。この人は、どうか……あの人は、どうか……候補を色々と挙げるんですが、スケジュールの問題もありますし。今回は、プロデューサーの松橋(真三)さんが早くに声を掛けてくれたこともあり、ドタバタせずに割りと理想的な人たちが揃ったと思います。
Q. 麃公将軍と王騎将軍(大沢たかお)が話す夕陽のシーンが大好きです。監督が思い入れのあるシーンは、どこでしょう?
佐藤監督 その王騎将軍と麃公将軍のシーンは、実は一回なくなってた経緯もあったりしたんですが、ロケをしている時にたまたま良い夕陽が落ちるのを見て、思い直して急遽復活したんです。王騎将軍(大沢たかお)は、もうクランクアップしていて、撮影のタイミングは一ヶ月後しかなかったんですね。もうバルクアップしなくて良いと思ってたのに、ずっと鍛えなきゃいけないってことをやっていただき、一ヶ月後何事もなかったかのように来ていただいて。もし晴れなかったらどうしようと思っていたんですが、凄い良い夕陽で。よく「映画の神様が降りてくる」って言いますけど、僕は普段雨男なんですが、映画に関してだけは憑いてるんですよね。実は、信と羌瘣が別れるシーンも、同じ日の夕陽なんです。このシーンも、凄く思い入れがあって、気合も入ってます。こちらは、最初に撮影した時は(陽が)沈んじゃったんです。日を改めたら、その日は曇っちゃったんですね。でもどうしても晴れの日に撮りたくて、もう一度チャレンジしたんです。そうしたら、晴れたんですよ。あの「じゃあな」、3日間くらい撮ってるんです。完璧を期したくて、「もう良いでしょう」って言われても「もう一回!」って(笑)……最高の「じゃあな」が撮れました。

松岡 最後に一言、お願いします。
佐藤監督 映画館でやってる期間は、1ヶ月とか2ヶ月、3ヶ月くらいで、それでもう終わっちゃうんですよね。もう、一生映画館で観ることはないっていうのが映画です。配信とかでも観れますが、なかなか大きな音で聴けないので。もう今しかない一瞬のものだと思うので、是非周りの人にも「映画館で観ると良いよ」と勧めていただければと思います。

『キングダム2 遥かなる大地へ』公式サイト
https://kingdom-the-movie.jp/index.html#mainWrapper
松岡ひとみのシネマレスト
https://cinemarest.com/
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