
2019年に先行上映のみ行われ、新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大で延期されていた映画『高津川』が、2022年2月より待ちに待った全国公開が始まっている。
『高津川』は、島根出身の錦織良成監督が郷土愛を込めて撮り上げた渾身の作品で、美しい自然と、そこに暮らす人々、そして自然と人が共存する里山の社会を、丁寧に写し込めた。
銀幕に映るのは、まさに「極上のヒーリング・ムービー」だ。
東京、大阪、そして京都と順次全国ロードショーが拡大し、各地で評判を呼んでいる。

一級河川にも拘わらずダムが一つもない高津川は日本一の清流と呼ばれ、豊かな自然を求め都会から移り住む佳奈(友利恵)のような若者もいる。
学の娘・七海(大野いと)も、一人暮らししていた大阪から帰ってきたばかりだ。
妻を亡くしている学の家では母(奈良岡朋子)が家事を取り仕切っていて、息子だけでなく孫たちのことも何かと気に掛けている。
学にはもう一人、高校生の息子・竜也(石川雷蔵)がおり、この地方で旧くから伝承されている石見神楽(いわみかぐら)を習わせている。
次の祭りで奉納する神楽舞で初舞台を踏む竜也なのだが、進路で悩んでいるせいか最近どうにも練習に身が入らない。
学は地元で暮らし続ける幼馴染たち、実家で和菓子を修行中の陽子(戸田菜穂)、寿司屋の暖簾を継いだ健一(岡田浩暉)、清流を生かした農業・養蜂に従事する秀夫(緒形幹太)らと共に、同窓会を企画する。
卒業した小学校も廃校が決まり、高津川にもリゾート開発が持ち上がるなど、様々な問題に直面している地元に何か出来ないかという思いからだ。
まずは、東京で弁護士をしている同級生・誠(田口浩正)に、帰ってこないかと持ち掛けるのだが――。

映画『高津川』は、先日紹介した『あしやのきゅうしょく』と同じく、地方発のオリジナル映画である。
だが、両者には似て非なる特長がある。
『あしやのきゅうしょく』は、芦屋市市制80周年記念作品として制作された。
芦屋市で力を入れている学校給食事業に着目し、白羽弥仁監督が「食育」というテーマを深く掘り下げて作りあげた物語は、ご当地映画の枠に留まらない普遍的なエンターテイメントへと昇華されていた。
対して『高津川』は、日本一の清流・高津川、神話の世界に誘う石見神楽、そして限界集落が抱える問題、ありとあらゆる「地元色」を詰め込んだ、島根県・石見地方でないと成立しない物語である。
石見の自然、文化、社会、その全てに寄り添った、謂わば「究極のご当地映画」だ。
高津川の地に足を着け暮らす人々を、まるでドキュメンタリーのように淡々と、しかし大河ドラマのように丁寧に描き出す贅沢な時間を、是非とも映画館で味わってほしい。
このように似て非なる地方発ムービーの『高津川』と『あしやのきゅうしょく』だが、共通点もある。
先行上映された地元で絶賛され、全国の劇場からも熱望されていることだ。
原作・脚本・監督を務めたのは、『白い船』(02)『RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語』(10)の、錦織良成監督。
錦織監督は、しっかりとした人物描写と、妥協のない映像美を併せもつ映画人で、オリジナル作品を全国ロードショーに広げる確かな手腕を持つ。
地元・島根県出身の錦織良成監督は、石見地方の人々から映画製作への熱い要請を受けたのだとか。
「しまね映画塾」塾長で石見地方を10年以上通った錦織監督が自ら選んだのが、清流・高津川の映画だったという。
そんな石見の人々の夢に、錦織良成監督の熱い想いに応えて、豪華キャストが『高津川』に集結した。

主演は、『エベレスト 神々の山嶺』(16)『3月のライオン』(17)の、甲本雅裕。
『ミラクルバナナ』(06)『うん、何?』(08)『RAILWAYS』『わさお』(11)『渾身 KON-SHIN』(13)『たたら侍』(17)と、数多の錦織監督作品に出演する甲本は、まさに本作の当たり役。
錦織監督は、甲本への当て書きで「学」像を作ったという。
ヒロイン・陽子役、戸田菜穂(『夏の庭 ―ザ・フレンズ―』(94)『必死剣 鳥刺し』(10)など)の好演も光る。
同級生である学とのシーンはどれも名場面だが、父(浜田晃)に和菓子作りの手ほどきを受ける場面の繊細な表情をお見逃しなく。

また、物語のキーメンである誠と父(田口浩正、高橋長英)が、素晴らしい。
父にも子にも形は違えど郷土への想いがあり、物語のテーマに直結する。
ほか、奈良岡朋子、緒形幹太、岡田浩暉といったベテラン勢が、抜群の存在感を放つ。
そして、重厚な物語の中でも輝きを放つ若手にも注目を。
大野いと、佐野和、友利恵、そして新人らしからぬ、石川雷蔵。

大袈裟な演技を見せる役者は、一人もいない。
信じられないような展開を見せる物語でもない。
人々は只々、高津川で日々を生きる。
働き、休み、泣き、笑い、足掻き、そしてお神楽を舞う。
私たちは、まるでドキュメンタリーを見るように、高津川で暮らす人々の群像劇を観る。
映画の中で、演者たちは確かに高津川の里山に息衝いている。
3月18日(金)、名演小劇場(名古屋市東区東桜2丁目23−7)では待ちに待った『高津川』公開初日を迎える。
3月20日(日)には、錦織良成監と主演の甲本雅裕が舞台挨拶に立つので、映画『高津川』だけでなく、息の合ったトークを是非とも楽しんでほしい。
石見に高津川があるように、私たちにも掛け替えのない故郷がある。
忘れてはいけないこと、守らなくてはならないものがある……昔も、今も――。

音楽:瀬川英史
甲本雅裕 戸田菜穂
大野いと 田口浩正 高橋長英 奈良岡朋子
緒形幹太 春木みさよ 藤巻るも 佐野和真
友利恵 石川雷蔵(新人) 岡田浩暉 浜田晃
プロデューサー:安川唯史
撮影:佐光朗JSC 照明:加瀬弘行
録音:武進 美術装飾:吉川康美
編集:日下部元孝 効果:丹雄二
選曲:佐藤啓 衣装:岡田敦之
ヘア&メイク:酒井啓介 特機:佐藤雄大
助監督:宮村敏正 イラスト:坂井治
特別協賛:株式会社ジュンテンドー/日本海テレビジョン放送株式会社
協賛:タクミ商事株式会社/飯塚正/有限会社サンデーズ/さんびるホールディングス株式会社/松栄株式会社浜田支店/松永牧場/益田興産/高橋建設/コガワ計画/キヌヤ 映画「高津川」を応援する会 益田市 津和野町 吉賀町 島根県
製作:映画「高津川」製作委員会
配給:ギグリーボックス
© 2019 映画「高津川」製作委員会

2019年に先行上映のみ行われ、新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大で延期されていた映画『高津川』が、2022年2月より待ちに待った全国公開が始まっている。
『高津川』は、島根出身の錦織良成監督が郷土愛を込めて撮り上げた渾身の作品で、美しい自然と、そこに暮らす人々、そして自然と人が共存する里山の社会を、丁寧に写し込めた。
銀幕に映るのは、まさに「極上のヒーリング・ムービー」だ。
東京、大阪、そして京都と順次全国ロードショーが拡大し、各地で評判を呼んでいる。

『高津川』ストーリー
斎藤学(甲本雅裕)は、島根県の高津川流域で生まれ育ち、牧場を経営している。一級河川にも拘わらずダムが一つもない高津川は日本一の清流と呼ばれ、豊かな自然を求め都会から移り住む佳奈(友利恵)のような若者もいる。
学の娘・七海(大野いと)も、一人暮らししていた大阪から帰ってきたばかりだ。
妻を亡くしている学の家では母(奈良岡朋子)が家事を取り仕切っていて、息子だけでなく孫たちのことも何かと気に掛けている。
学にはもう一人、高校生の息子・竜也(石川雷蔵)がおり、この地方で旧くから伝承されている石見神楽(いわみかぐら)を習わせている。
次の祭りで奉納する神楽舞で初舞台を踏む竜也なのだが、進路で悩んでいるせいか最近どうにも練習に身が入らない。
学は地元で暮らし続ける幼馴染たち、実家で和菓子を修行中の陽子(戸田菜穂)、寿司屋の暖簾を継いだ健一(岡田浩暉)、清流を生かした農業・養蜂に従事する秀夫(緒形幹太)らと共に、同窓会を企画する。
卒業した小学校も廃校が決まり、高津川にもリゾート開発が持ち上がるなど、様々な問題に直面している地元に何か出来ないかという思いからだ。
まずは、東京で弁護士をしている同級生・誠(田口浩正)に、帰ってこないかと持ち掛けるのだが――。

映画『高津川』は、先日紹介した『あしやのきゅうしょく』と同じく、地方発のオリジナル映画である。
だが、両者には似て非なる特長がある。
『あしやのきゅうしょく』は、芦屋市市制80周年記念作品として制作された。
芦屋市で力を入れている学校給食事業に着目し、白羽弥仁監督が「食育」というテーマを深く掘り下げて作りあげた物語は、ご当地映画の枠に留まらない普遍的なエンターテイメントへと昇華されていた。
対して『高津川』は、日本一の清流・高津川、神話の世界に誘う石見神楽、そして限界集落が抱える問題、ありとあらゆる「地元色」を詰め込んだ、島根県・石見地方でないと成立しない物語である。
石見の自然、文化、社会、その全てに寄り添った、謂わば「究極のご当地映画」だ。
高津川の地に足を着け暮らす人々を、まるでドキュメンタリーのように淡々と、しかし大河ドラマのように丁寧に描き出す贅沢な時間を、是非とも映画館で味わってほしい。
このように似て非なる地方発ムービーの『高津川』と『あしやのきゅうしょく』だが、共通点もある。
先行上映された地元で絶賛され、全国の劇場からも熱望されていることだ。
原作・脚本・監督を務めたのは、『白い船』(02)『RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語』(10)の、錦織良成監督。
錦織監督は、しっかりとした人物描写と、妥協のない映像美を併せもつ映画人で、オリジナル作品を全国ロードショーに広げる確かな手腕を持つ。
地元・島根県出身の錦織良成監督は、石見地方の人々から映画製作への熱い要請を受けたのだとか。
「しまね映画塾」塾長で石見地方を10年以上通った錦織監督が自ら選んだのが、清流・高津川の映画だったという。
そんな石見の人々の夢に、錦織良成監督の熱い想いに応えて、豪華キャストが『高津川』に集結した。

主演は、『エベレスト 神々の山嶺』(16)『3月のライオン』(17)の、甲本雅裕。
『ミラクルバナナ』(06)『うん、何?』(08)『RAILWAYS』『わさお』(11)『渾身 KON-SHIN』(13)『たたら侍』(17)と、数多の錦織監督作品に出演する甲本は、まさに本作の当たり役。
錦織監督は、甲本への当て書きで「学」像を作ったという。
ヒロイン・陽子役、戸田菜穂(『夏の庭 ―ザ・フレンズ―』(94)『必死剣 鳥刺し』(10)など)の好演も光る。
同級生である学とのシーンはどれも名場面だが、父(浜田晃)に和菓子作りの手ほどきを受ける場面の繊細な表情をお見逃しなく。

また、物語のキーメンである誠と父(田口浩正、高橋長英)が、素晴らしい。
父にも子にも形は違えど郷土への想いがあり、物語のテーマに直結する。
ほか、奈良岡朋子、緒形幹太、岡田浩暉といったベテラン勢が、抜群の存在感を放つ。
そして、重厚な物語の中でも輝きを放つ若手にも注目を。
大野いと、佐野和、友利恵、そして新人らしからぬ、石川雷蔵。

大袈裟な演技を見せる役者は、一人もいない。
信じられないような展開を見せる物語でもない。
人々は只々、高津川で日々を生きる。
働き、休み、泣き、笑い、足掻き、そしてお神楽を舞う。
私たちは、まるでドキュメンタリーを見るように、高津川で暮らす人々の群像劇を観る。
映画の中で、演者たちは確かに高津川の里山に息衝いている。
3月18日(金)、名演小劇場(名古屋市東区東桜2丁目23−7)では待ちに待った『高津川』公開初日を迎える。
3月20日(日)には、錦織良成監と主演の甲本雅裕が舞台挨拶に立つので、映画『高津川』だけでなく、息の合ったトークを是非とも楽しんでほしい。
石見に高津川があるように、私たちにも掛け替えのない故郷がある。
忘れてはいけないこと、守らなくてはならないものがある……昔も、今も――。

映画『高津川』
原作・脚本・監督:錦織良成音楽:瀬川英史
甲本雅裕 戸田菜穂
大野いと 田口浩正 高橋長英 奈良岡朋子
緒形幹太 春木みさよ 藤巻るも 佐野和真
友利恵 石川雷蔵(新人) 岡田浩暉 浜田晃
プロデューサー:安川唯史
撮影:佐光朗JSC 照明:加瀬弘行
録音:武進 美術装飾:吉川康美
編集:日下部元孝 効果:丹雄二
選曲:佐藤啓 衣装:岡田敦之
ヘア&メイク:酒井啓介 特機:佐藤雄大
助監督:宮村敏正 イラスト:坂井治
特別協賛:株式会社ジュンテンドー/日本海テレビジョン放送株式会社
協賛:タクミ商事株式会社/飯塚正/有限会社サンデーズ/さんびるホールディングス株式会社/松栄株式会社浜田支店/松永牧場/益田興産/高橋建設/コガワ計画/キヌヤ 映画「高津川」を応援する会 益田市 津和野町 吉賀町 島根県
製作:映画「高津川」製作委員会
配給:ギグリーボックス
© 2019 映画「高津川」製作委員会
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